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指パッチン練習してたら魔法が出るようになりました  作者: Naoya


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9/22

【9話】 「放課後、二人だけの練習」

チャイムが鳴って、今日の授業が終わった。

 帰ろうとしたところで、後ろから軽く肩を叩かれる。


「ひかり、ちょっと来い」

 振り返ると湊《みなと》。片手でカバンを持ちながら、目だけで「ついてこい」と合図してくる。


「なに?」

「練習。例の」

「……魔法?」

「そう」

「ここで言わないで!」


 慌てて周囲を見渡すが、教室にはもう誰もいない。

 ほっと胸をなでおろした瞬間、湊《みなと》がニヤリと笑った。

「じゃ、屋上行くぞ」

「え、鍵開いてるの?」

「生徒会の知り合いに借りた」

「そういうのは風紀委員に怒られるやつじゃ……」

「じゃあ黙ってろ」


 ……そういう強引なところ、昔から変わらない。


⸻


 屋上に出ると、風が気持ちよかった。

 夕方の空はオレンジから紫に変わりかけていて、遠くのグラウンドでは部活の声が響いている。


「で、どうやってやる?」

「普通にパチンってやればいいんじゃない?」

「いや、条件を探るんだろ」

「条件?」

「感情とか、力加減とか、タイミングとか」


 湊《みなと》は、持ってきたノートを広げてペンを構える。

「なにその本格的なメモ体勢」

「こういうのは記録が大事なんだよ。じゃ、まずは普通にやってみろ」


 私は深呼吸して、指を構えた。

 ——パチン。

 風がふわっと吹き、湊《みなと》の髪をかすめた。


「お、今の軽いな」

「うん、自分でもわかる」

「じゃあ次は……俺のこと考えながらやってみろ」

「はあ!? なんで!」

「感情の変化を見るんだろ」

「……あんたのそういうとこ、ほんと嫌い」

 文句を言いながらも、なぜか顔が熱くなる。

 ——パチン!

 今度は、足元の落ち葉がくるくる舞い上がった。


「ほら、強くなった」

「……気のせいでしょ」

「いや、絶対関係ある」

 湊《みなと》は嬉しそうにノートに書き込んでいる。なんか悔しい。


⸻


 その後も、「楽しいことを考える」「嫌なことを考える」「走った直後」など条件を変えて何度も試した。

 結果、感情が大きく動くほど魔法の出力が上がることがわかってきた。


「つまり、お前は感情に正直なんだな」

「どういう意味よ」

「いい意味だよ」


 不意にそんなことを言うから、また指先が熱くなる。

 ——パチン。

 今度は私の足元から紙飛行機がふわっと飛び出し、ゆっくり空中を漂った。


「これ……作ってきたの?」

「試したかったんだよ、こういうの」

 湊《みなと》は笑いながら紙飛行機をキャッチした。

 その笑顔が、夕焼けに溶けてやけにきれいに見えた。


⸻


 練習を終えて屋上を出る前、湊《みなと》がふと真顔になった。

「ひかり、この力……悪いことに使われたら危ない」

「……うん、わかってる」

「だから、俺も一緒に覚えていく。お前が困らないように」


 その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

 昔から湊は、こうやって自然に守るようなことを言う。

 でも今日は、その言葉がいつもより重く響いた。


「……ありがと」

「おう。じゃ、今日はこれで解散な」


 屋上の扉が閉まり、日常の音が戻ってくる。

 でも、胸の鼓動だけはしばらく収まらなかった。

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