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指パッチン練習してたら魔法が出るようになりました  作者: Naoya


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10/22

【10話】 「中間試験と“無音のパチン”」

期末の足音が聞こえてくる頃、中間試験の範囲が発表された。

 私は教室でプリントを見つめながら、思わずうめき声を上げる。


「数学と英語の配点高すぎ……」

「お前、試験のたびに同じこと言ってるな」

 後ろから湊《みなと》の声。席を回り込んで、プリントを覗き込んでくる。

「そりゃそうでしょ。去年も数学で赤点ギリギリだったんだから」

「じゃあ、勉強会だな。放課後、図書室で」

「ええ……」

「嫌ならまたテスト中に魔法暴発してもいいけど」

「やめて! それだけは絶対に!」


 あの小テスト事件を思い出して、私はぶんぶんと首を振った。


⸻


 放課後の図書室。

 机の上には教科書とノート、そして湊《みなと》が持ってきた大量の問題集。

「ねえ、これ全部やるの?」

「当然だ」

「鬼畜……」


 勉強を始めてしばらくすると、私はふと思いついた。

 ——音を立てないパチンができれば、試験中にこっそり魔法を使えるんじゃないか?

 いや、もちろん悪用する気はない。

 でも、無意識に鳴ってしまうのを防ぐために、音の有無をコントロールできれば安全だ。


「湊《みなと》、ちょっと実験していい?」

「また魔法?」

「そう。今度は音を立てずにやってみたいの」

「……図書室で?」

「静かだからこそ練習になるじゃん」


 私は親指と中指をそっと合わせ、力を抜く。

 ——すっ……。

 音はしなかった。でも、机の上の消しゴムがわずかに揺れた。


「お、動いたな」

「ね、ね! 成功じゃない?」

「まだ弱いけどな」


 その後も何度も試して、だんだんと動きが安定してきた。

 湊は横で笑いをこらえながら、ノートに「無音パチン=微弱発動」とメモしている。

「なんか研究者みたいだね」

「まあ、研究対象はお前だけどな」

「言い方!」


⸻


 翌日。試験本番。

 私は深呼吸して席につき、問題用紙をめくる。

 一問目、解けた。二問目もまあまあ。

 でも三問目で手が止まる。焦りがじわっと広がる。


(落ち着け、落ち着け……)


 右手の指先に意識を集中させる。

 ——無音パチン。

 机の端に置いてあった鉛筆が、そっと転がって手元に戻ってきた。

 小さくガッツポーズを決め、再び問題に向かう。


⸻


 試験が終わったあと、昇降口で湊《みなと》に報告した。

「ねえ、今日ね、試験中に——」

「おいおい、またやらかしたのか?」

「違う! 音を立てないでできたんだよ」

「……それ、試験中にやったのか?」

「……はい」

「お前……まあいいや、成功おめでと」


 湊《みなと》は呆れたように笑い、それから真顔になった。

「でもさ、音を消せるってことは、悪用もできるってことだ」

「……うん」

「だから、その線引きはちゃんと自分で決めろよ」

「わかってる」


 その言葉は、まるで釘を刺すように私の胸に残った。

 便利さと危うさが、同時にそこにある。

 魔法をコントロールするって、そういうことなんだと初めて実感した。


⸻


 夕暮れの空は、少しだけ冬の匂いがした。

 私は胸の奥で、小さく新しい決意を固めていた。

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