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指パッチン練習してたら魔法が出るようになりました  作者: Naoya


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【11話】 「ステージ準備と、揺れる気持ち」

 十月の放課後。教室は文化祭準備でごった返していた。

 私たち2-Bの出し物は、演劇とダンスを組み合わせたステージ発表。

 「せっかくならインパクトある舞台を!」と担任が言い出し、クラスも妙にノリ気で決まったのだ。


「ひかりー! その背景パネル持って!」

「はーい!」


 段ボールで作った巨大な背景パネルを運ぶ。思ったより重くて、ふらつきながら体育館の隅へ。

 ……そこで、ちょっと悪い考えが頭をよぎる。


(少しだけ……魔法、使ってもいいよね?)


 指を合わせて、——パチン。

 ふわりと段ボールが浮き、軽々と持ち上がった。私はそのままスムーズに所定の位置に立てかける。


「おお! すげー、桐生! どうやったんだ?」

「え、えっと……根性?」

「根性で持ち上がるかよ!」


 クラスメイトの笑い声に、胸がちくりと痛んだ。

 本当は魔法だなんて言えない。けど、役に立てたことが少し嬉しくもあった。


⸻


 その後も、照明器具を吊るす時にそっとパチンで持ち上げたり、小道具を引き寄せたり。

 気づけば私は「便利屋」みたいに動いていた。


「ひかりって意外と頼りになるんだな!」

「ステージ裏のMVPだろ!」


 褒められるたびに心が熱くなる。

 けど同時に、不安が喉元につかえていた。

 ——もし、また暴走したら?


⸻


 そして、その不安は現実になる。


「この大パネル、真ん中に立てて……」

 みんなで持ち上げた瞬間、私は反射的にパチン。

 パネルがぐん、と浮き上がり、バランスを崩して倒れかけた。


「うわっ!」

「危ない!」


 慌てて湊《みなと》が押さえ、ギリギリで大惨事は免れた。

 でも背景はぐしゃっと折れ、貼っていた装飾も落ちて散乱した。


「なにやってんだよ……」

「ご、ごめん!」


 クラスの空気が一瞬、重くなる。私の心臓も冷たくなる。


「桐生」

 背後から低い声。

 振り返れば、風紀委員長の真壁蓮。腕を組み、鋭い目で私を見ていた。


「またお前か。偶然じゃ済まないぞ」

「ち、違うの、私……!」

「説明できない現象を軽々しく扱うな。混乱を招くだけだ」


 言葉が出てこない。図星すぎて。

 ただ黙り込んでいると、湊《みなと》が間に割って入った。


「真壁、事故にはなってない。大丈夫だ」

「……高瀬、お前がいるからギリギリで済んでいるだけだ」

 蓮は短く言い残し、去っていった。


⸻


 片付けが一段落した後。

 私は机に突っ伏して、小さく唸った。

「……もうやだ。役に立ちたいのに、迷惑ばっかり」


「おい」

 頭上から声がする。顔を上げれば、湊《みなと》が覗き込んでいた。

 彼は少し笑いながら、私の髪を軽く指でつまんだ。


「便利屋やる必要ねえよ。お前がやりたいと思ったときだけやればいい」

「でも……」

「俺が隣にいるんだから、怖がんな」


 その言葉が胸にじんわりと染み込む。

 怖い。でも、隣に湊《みなと》がいるなら。

 そんな気持ちが、少しだけ私を前向きにした。


⸻


こうして文化祭の準備は続き、私は「役に立ちたい」と「迷惑をかけたくない」の間で揺れながら、一歩を踏み出す決意を少しずつ固めていった。

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