【21話】「揺らぐ力」
自分の意思で魔法を使ったあの日から、胸の中には少しだけ自信が芽生えていた。
——選ぶのは私。
そう決めたはずだった。
けれど、その自信は長く続かなかった。
⸻
翌朝、登校して席についた瞬間。
机の上に置いたペンが、ふわりと浮き上がった。
「えっ!?」
慌てて押さえると、隣のかえでが首をかしげる。
「どうしたの?」
「な、なんでもない!」
心臓が跳ねる。
——意思に関係なく、魔法が勝手に反応してる?
嫌な予感がした。
⸻
放課後、湊と一緒に帰る道。
私は不安を打ち明けた。
「この頃、指を鳴らしてなくても、勝手に反応するの。ペンが浮いたり、紙が揺れたり……」
湊は真剣な表情で私を見た。
「無意識に力が溢れてるんだな。……それ、危ないぞ」
「……やっぱり?」
「でも、コントロールできるようになったらきっと強みになる。俺が手伝う」
力強い言葉。安心したいのに、胸の奥では不安がまだ消えなかった。
⸻
その夜。
部屋で英単語を覚えていたときのこと。
指先がじんじんして、気づけばノートが勝手に宙を舞っていた。
「ちょっ、待って!」
パチンと鳴らす前に、ページがめくれ、机の上の消しゴムやペンが次々と跳ねる。
制御できない。
慌てて両手で押さえようとした瞬間——。
視界がぐにゃりと歪んだ。
⸻
再び幻視。
今度は暗い教室の中。窓からは風が吹き込み、カーテンが荒々しく揺れている。
目の前に二人の姿が現れる。
湊は必死に手を伸ばし、「一緒に乗り越えよう」と叫ぶ。
蓮は冷たい瞳で、「一人で立たなければ意味がない」と告げる。
心臓が裂けるように痛い。
二人の言葉が重なり、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「やめて……! 私、どうしたら……!」
叫んだ瞬間、教室の窓ガラスが砕け散る音が響いた。
⸻
はっとして目を開けると、自分の部屋だった。
机の上のノートは散乱し、窓が激しく rattling揺れている。
でも、割れてはいない。
「……幻視の中で暴れたら、現実にも影響が……?」
全身が震えた。
魔法の力が、私の感情そのものに引きずられている。
⸻
翌日。学校で湊に打ち明けようか迷ったけど、結局言えなかった。
頼りたい。でも、また甘えてしまう。
蓮の忠告も、頭の中で繰り返し響く。
(私……どうすればいいの?)
窓の外の空は、今にも泣き出しそうな灰色だった。
胸の奥も同じ色に染まっている気がした。




