第22話「揺らぐ教室」
朝の教室は、いつものようにざわざわと賑やかだった。
友達が笑い合い、ノートを広げて小テストの予習をしている。
私も机に座って英語のプリントを眺めていたけれど、胸の奥はずっとざわついていた。
(……昨日の夜みたいに、また勝手に魔法が暴れたらどうしよう)
そう考えると、指先がじんじんして落ち着かない。
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「ひかり、顔色悪いよ?」
かえでが心配そうに覗き込んできた。
「え、ううん、大丈夫。ちょっと寝不足なだけ」
「無理すんなって。文化祭の疲れ、まだ残ってんじゃない?」
彼女の言葉に笑顔で答えたけど、内心は笑えなかった。
チャイムが鳴り、数学の授業が始まる。
先生が黒板に公式を書きながら説明を始めた、その瞬間だった。
——パチン。
鳴らした覚えはない。なのに、机の上の消しゴムがふわりと浮き上がった。
「……っ!」
慌てて押さえるが、今度は隣のかえでのシャープペンが宙に転がり、前の席のノートが勝手にページをめくる。
「え、なに!?」
「風? 窓閉まってるのに……」
教室中がざわついた。
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(やばい、やばい、やばい!)
心臓が爆発しそうに跳ねる。指先から力が漏れているのが分かった。
止めなきゃと思えば思うほど、力が暴れる。
「桐生」
低い声が聞こえた。振り返ると、蓮が鋭い目でこちらを見ていた。
その視線に胸が凍りつく。
——気づかれてる。
「落ち着け!」
今度は湊の声。前の席から振り返り、必死に目で合図を送ってくる。
(私……どうすれば……!)
頭の中で二人の声がぶつかり合う。
——冷静に立て。
——支えはここにある。
心臓の鼓動がどんどん早くなる。
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その瞬間、机が一斉にガタリと揺れた。
クラスメイトの悲鳴。先生が「落ち着け!」と声を張り上げる。
「ご、ごめんなさい!」
思わず立ち上がり、両手を前に出す。
必死に息を吸い込み、吐き出す。頭の中で繰り返す。
(私は……もう逃げない。これは私の力。だから、私が止める!)
両手を握りしめ、強く心に念じた。
次の瞬間、宙に浮いていた文房具たちがぱたりと落ちた。
静寂。
みんなの視線が私に集まる。
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「……風のせいじゃない?」
「窓、少し開いてたんじゃ……」
何人かがざわめきながら誤魔化してくれる。
先生も「授業に集中しろ」と切り上げた。
どうにか“大事件”にはならなかったけど、冷や汗で背中がびっしょりだった。
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休み時間。廊下に出ると、湊が追いかけてきた。
「ひかり、大丈夫か?」
「……うん。でも、もう隠し通せないかも」
震える声で言うと、湊は真剣な表情で私を見つめた。
「隠すだけが答えじゃない。けど……俺はお前の隣にいる。それだけは忘れるな」
胸が熱くなった。
同時に、蓮の冷たい視線も頭から離れなかった。
(もう……ごまかして生きるのは限界かもしれない)
そう思ったとき、校舎の外で不気味な視線を感じた。
昨日の上級生たちだ。窓越しに私を見上げて、にやりと笑っていた。
背筋がぞっとする。
力の揺らぎに加えて、“影”がまた迫ってきている。




