【20話】「選ぶのは私」
放課後の昇降口。
昨日の出来事がまだ尾を引いていて、靴を履き替える手が震えていた。
上級生たちの「お前がいれば簡単だろ」という声が耳にこびりついて離れない。
(また来るかもしれない……)
心臓が嫌な音を立てて鼓動する。
湊みなとに頼れば守ってくれる。蓮の忠告に従えば、一人で立たなきゃならない。
私は狭間に立たされていた。
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案の定、その二人は現れた。
昇降口の柱に寄りかかり、待ち伏せしていたかのように。
「お、来たな」
「昨日は邪魔が入ったけど……今日はちゃんと答えてもらうぜ」
道を塞がれる。背後に人の気配はない。
胸がぎゅっと締めつけられ、呼吸が浅くなった。
「な、何度も言うけど、私は――」
言い終わる前に、一人が一歩踏み込んできた。
腕が伸びる。反射的に後ずさったその瞬間、指先が勝手に動いた。
——パチン。
空気が弾け、足元の砂埃が渦を巻いた。
二人は驚いたように足を止める。
「な、なんだこれ……!」
「やっぱりお前か……!」
睨みつけられ、全身が強張る。
でも――今度は逃げなかった。
⸻
「これは……私の力。だから、どう使うか決めるのは私!」
声は震えていたけど、はっきりと響いた。
二人は一瞬言葉を失い、顔を見合わせる。
「……チッ、調子に乗りやがって」
吐き捨てて、彼らは背を向けた。去り際に「またな」と言い残すのを聞いて、背筋が冷たくなった。
危険はまだ消えていない。でも、初めて自分の意思で魔法を使った――その事実が胸を熱くしていた。
⸻
昇降口を出たところで、声をかけられた。
「……無茶するなよ」
振り返ると、蓮れんが立っていた。
夕日を背にした彼の表情は読み取りにくいけど、目だけは真っ直ぐに私を射抜いていた。
「見てたんですか……」
「ああ。お前がどうするか、気になっていた」
私は思わず俯いた。
けれど次の瞬間、蓮れんは少しだけ目を細めた。
「……悪くなかった。少なくとも、昨日よりは自分の足で立っていた」
褒め言葉のはずなのに、胸がざわめいた。
彼の言葉は厳しい。でも、そこに確かな承認がある。
⸻
校門を出たところで、別の声が飛んだ。
「ひかり!」
湊みなとが駆け寄ってくる。心配そうに肩を掴まれ、私は思わず笑ってしまった。
「大丈夫。……今度は自分で選んだから」
その言葉に、湊みなとは一瞬目を丸くした。
でもすぐに、安心したように微笑んだ。
「そうか。なら、次も隣にいてやるよ」
隣で歩幅を合わせてくれる湊みなと。
その後ろ姿を見守っている蓮れん。
二人の存在が、私の心を大きく揺さぶる。
でももう、ただ流されるだけじゃない。
(選ぶのは……私だ)
強くそう思った。夕暮れの風が頬を撫で、胸の奥に小さな灯がともった気がした。




