↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
指パッチン練習してたら魔法が出るようになりました  作者: Naoya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/22

【16話】「すれ違う気持ち」

 期末試験まで、あと一週間。

 私は教室で英単語帳を眺めながら、深いため息をついていた。


「……全然覚えられない」


 隣でかえでが覗き込む。

「ひかり、大丈夫? また湊《みなと》と勉強会したら?」

「う……」


 図星すぎて言葉が詰まる。

 確かに湊《みなと》と一緒なら集中できる。いや、正確には――彼が隣にいるとドキドキして集中できない。でも、不思議と記憶には残るのだ。


「でもさぁ、頼りすぎるのもよくないかなって」

「なにそれ。ひかりが真面目に考えてるとこ、ちょっと新鮮」

「ひどっ!」


 かえでは笑って去っていったが、心の中にはもやもやが残った。


⸻


 放課後。今日も図書室で湊《みなと》と勉強する約束をしていた。

 机に教科書を広げると、彼が当然のように隣に腰を下ろす。


「じゃあ、昨日の復習な。これ読んでみろ」

「えっ、いきなり音読?」

「声に出した方が覚える」

「うぅ……」


 私はしぶしぶ英文を読み上げた。途中でつっかえると、湊《みなと》がすかさず指で教科書の行をなぞり、ゆっくり教えてくれる。

 その仕草が自然すぎて、心臓がまた早くなる。


(……ダメだ。これじゃ余計頼りきりじゃん)


「ひかり」

「えっ!?」

「びっくりすんなよ。……さっきからぼーっとしてる」

「あ、うん……ごめん」


 気づけば指先に力が入っていた。

 ——パチン。


 音は小さかったけど、机の上のシャープペンが勝手に転がって、床に落ちた。


「っ!」

 私は慌てて拾おうと身を乗り出すが、湊《みなと》の手が先に伸びる。

 二人の指が、ほんの一瞬触れた。


「……また無意識に出たな」

「ご、ごめん」

「だから言っただろ。練習すればコントロールできる」

「でも……!」


 思わず声が大きくなった。

「でも、私、湊《みなと》に頼ってばっかりで……! 自分で何もできなくて、迷惑ばっかかけて……」


 机の上に置いた手が震えていた。

 湊《みなと》は一瞬黙って、それから小さく息を吐いた。


「……迷惑だなんて思ったこと、一度もねえよ」

「……でも」

「お前がどうしても一人でやりたいって言うなら、止めない。けどな……俺は、お前を支えたいんだ」


 その言葉に胸が熱くなる。けど、同時に怖かった。

 ——このまま甘えてばかりでいいの?

 ——私がちゃんと強くならなきゃ、湊にばかり負担をかけるんじゃ……?


「……ごめん。今日は帰る」


 私は教科書をまとめ、逃げるように図書室を出た。

 背中に、湊《みなと》の視線が突き刺さる。追いかけてきてほしい気持ちと、この場から逃げたい気持ちが入り混じって、涙がにじんだ。


⸻


 夜。机の上で英単語帳をめくる。

 ページの文字は頭に入ってこない。

 代わりに浮かぶのは、湊《みなと》の声と、優しい笑顔。


(……本当は、隣にいてほしいのに)


 小さく指を合わせる。

 ——パチン。


 今夜は何も起きなかった。

 胸の奥がひどく空っぽに感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。