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指パッチン練習してたら魔法が出るようになりました  作者: Naoya


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15/22

【15話】「勉強会とすれ違う気持ち」

文化祭が終わってから数日後。

 廊下の掲示板に「期末試験範囲表」が貼られた。私はそれを見た瞬間、膝から崩れ落ちそうになった。


「英語、長文ばっかりじゃん……」

「ひかり、顔がもう諦めてる」

 隣で湊《みなと》が呆れたように笑う。


「大丈夫だ。勉強会やるから」

「えっ、また?」

「また、じゃねえよ。前回のおかげで赤点回避できただろ」

「うっ……」


 反論できない。確かに湊《みなと》のおかげで小テストはどうにか乗り切れた。

 でも「二人きりの勉強会」となると……心臓が騒がしくて集中できないのが問題なのだ。


⸻


 放課後。図書室の一角。

 私と湊《みなと》は向かい合って机に座り、教科書とノートを広げていた。


「ほら、この単語。三回書いて覚えろ」

「えぇ……」

「口でも唱えろ」

「apple、apple、apple……」

「そこまで真剣に言わなくていい」


 湊《みなと》が笑う。

 私は頬をふくらませながらノートに書き込むけど、視線が何度も彼の横顔に吸い寄せられる。


 真剣な表情で教科書を指さす指。眉間に寄った皺。

 ……近い。なんでこんなに近いの。


「ひかり、聞いてる?」

「えっ、あ、あの、もちろん!」

「じゃあ今の文法ルール、説明してみろ」

「……ごめんなさい」


 しゅんと肩を落とす私に、湊《みなと》はため息をつき、それから苦笑した。

「お前さ……勉強より俺の顔見てる時間の方が長いだろ」

「なっ……! そ、そんなことない!」

「耳、真っ赤」

「~~~っ!」


 恥ずかしさで机に突っ伏す。こんなの勉強にならない。


⸻


 しばらくして、休憩を取ることにした。

 机の上に置いたペットボトルの水を開けようとして、指先がすべってしまう。

「わっ」

 とっさにパチン。


 水のペットボトルがふわっと浮き上がり、宙で静止した。


「……ひかり」

「ご、ごめん!」

「いや……すげぇな」


 湊《みなと》は驚き半分、感心半分といった顔でペットボトルを受け取った。

 その目は、怖がるどころかまっすぐで。


「やっぱり、コントロールできるようにならないとダメだな」

「……でも、失敗ばっかりで……」

「大丈夫。俺が隣にいるから」


 その一言に、胸がまた強く鳴った。


⸻


 勉強会の帰り道。

 夕暮れの校門を出ると、冷たい風が吹いて制服の裾が揺れた。

 私は小さく呟いた。


「……湊《みなと》って、なんでそんなに私のこと気にかけるの?」

「幼なじみだから、ってのもある」

「……それだけ?」


 一瞬の沈黙。

 湊《みなと》は前を向いたまま、少しだけ口元をほころばせた。


「……それだけじゃ、ダメか?」


 返事ができなかった。

 胸の奥が熱くて、言葉にしたら全部溢れてしまいそうで。


 代わりに、私は指先をそっと構えた。

 ——パチン。


 小さな光粒が、ふわりと夜空に舞い上がる。

 湊《みなと》はその光を見上げて、穏やかに笑った。


「やっぱり綺麗だな」

「……ありがとう」


 隣を歩く歩幅が、さっきより少しだけ近づいていた。

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