【14話】「打ち上げは花火と、少しの勇気」
文化祭が終わり、校庭ではクラスごとの打ち上げが始まった。模擬店で余った焼きそばやたこ焼き、ジュースを並べて、みんなで輪になって食べる。夜風が涼しくて、昼間の熱気が嘘みたいだった。
「いやー、疲れた! でも達成感あるよな!」
「ほんとほんと! ひかりの裏方マジ助かったよ!」
クラスメイトたちの声に、私は少しだけ胸を張った。魔法の暴走もあったけど、結果的に盛り上げられたし……悪いことばかりじゃなかったかもしれない。
「ひかり」
後ろから名前を呼ばれる。振り返ると、湊が紙皿を持って立っていた。
「隣、いいか?」
「う、うん」
並んで腰を下ろすと、距離がやけに近い。私は落ち着かなくて、焼きそばをつつくふりをした。
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夜も更けて、誰かが叫んだ。
「花火やろうぜー!」
手持ち花火や線香花火が配られ、校庭が一気に光で彩られる。私は小さな花火を手に持ち、火を点けた。パチパチと火花が散って、オレンジ色の光が湊の横顔を照らす。
(……綺麗)
一瞬、胸の奥がぎゅっとなる。昨日からずっと、湊の存在が頭から離れない。
「ひかり、なんか言いたそうな顔してるな」
「え、そ、そんなことない!」
「嘘つけ。……でも無理に言わなくてもいい。俺は、待つから」
穏やかな声に、胸がさらに高鳴った。
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やがて線香花火に火を移す。小さな火玉がゆらゆら揺れて、今にも落ちそうで落ちない。
「これ、勝負しようぜ。落ちたら負け」
「いいよ。……でも、私、すぐ落としちゃうんだよね」
集中して見つめていると、ふいに――パチン。
またやってしまった。
線香花火の火玉がふわりと宙に浮き、まるで星みたいにきらめきながら二人の間で漂った。
「……魔法?」
「ご、ごめん! また勝手に……!」
慌てる私に、湊は笑った。
「いや、いい。……むしろ綺麗だな」
火玉はゆっくり消えて、夜風に溶けた。二人の距離は、さっきよりもずっと近い。
「ひかり」
名前を呼ばれた瞬間、鼓動が爆発しそうになる。
「……ありがとう。今日も、お前がいてくれて助かった」
照れくさそうに笑う湊。私は言葉が出なくて、ただこくりと頷いた。
その横顔を見ながら、心の奥で思う。
――この気持ち、もう隠せないかもしれない。
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花火の火がすっかり消えた頃、空には星が瞬いていた。
文化祭の喧騒が去った夜、私と湊の間には、確かに小さな光が灯っていた。




