【13話】「文化祭は魔法でドタバタ!」
「はい! ここでダンスのフォーメーション崩れてるよ!」
文化祭当日の朝、体育館のステージ裏は大混乱だった。
クラスの出し物は演劇とダンスを組み合わせたステージ発表。けど、いざ本番となると小道具が足りないだの、衣装が破れただの、誰かが台詞を忘れただの、トラブル続出。
「ちょ、誰かテープ持ってきてー!」
「衣装の肩ひもがー!」
私は裏方の仕事を手伝いながら、汗をぬぐった。だけど、胸の奥は昨日の湊との出来事でいっぱいだった。
「魔法もお前も嫌いになれない」なんて、あんなこと言われて――。思い出すだけで心臓が暴走する。
「ひかり」
「ひゃいっ!?」
間抜けな声を上げた私の前に、湊が現れた。白シャツにベスト姿、舞台用の衣装を着ていて普段よりも格好よく見える。
「落ち着けよ。顔、真っ赤だぞ」
「そ、そういうこと言わないで!」
慌てて背を向ける私。湊は不思議そうに笑っただけだった。
⸻
やがて開演。幕が上がり、舞台の上では仲間たちが必死に演技をしている。私は袖で見守りながら、小道具の準備をしていた。
「次のシーンで、あの剣を渡さなきゃ……」
タイミングを見計らっていた時。
――パチン。
しまった。無意識に指を鳴らしてしまった。
剣の小道具がふわりと宙に浮かび、スルスルと舞台の中央に飛び出していく。
「えっ!?」
「魔法か!?」
観客席からどよめき。舞台の役者たちは慌ててアドリブでごまかそうとするが、完全に予定外だ。
(やばいやばいやばい!)
私は慌てて手を振り、もう一度パチン。今度は剣がふわりと役者の手に収まった。観客は「おお~!」と拍手喝采。奇跡的に「演出」と誤解されたらしい。
「……セーフ?」
安堵したのも束の間、また別の小道具が浮かびかけている。私は必死で魔法を抑え込んだ。
⸻
舞台が終わると同時に、私は裏手で膝をついた。
「危なかった……」
「お疲れ」
肩に手が置かれる。湊だ。
「見てた。……ひかり、力の加減、まだ難しいんだな」
「……うん。ごめん。みんなに迷惑かけてばっかり」
俯く私に、湊は小さく笑った。
「でも、今日は助かった。あのアドリブ演出のおかげで、むしろ盛り上がってたぞ」
「え、ほんとに?」
「ああ。……それに、俺は好きだよ。お前の魔法」
真正面から言われ、心臓がまた跳ねた。視線が合ったまま、世界が止まったみたいに感じる。
「み、湊……」
その時、クラスメイトの声が響いた。
「二人とも! 打ち上げの準備するぞー!」
一気に現実に引き戻され、私は顔を真っ赤にしたまま立ち上がった。湊も少し照れくさそうに視線を逸らす。
でも、心の奥に残る温もりは、消えなかった。




