↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/19

7.5 三界記

 天より降り来たりし『創神の星槍(プリモルディウム)』より放たれたる闇炎《ハングニス》、古《いにしえ》の王国とその周辺とを悉く焼き尽くしけり。

 国一つを滅ぼしたるかの大火ののち、三柱の始祖神は各々己に近しき人々を伴ひて、滅びたる故国を離れにけり。


 至高の始祖神レウカリアは、東の大地に赴く。

 物質の始祖神ケルスは、地上を離れて天に昇り、雲居の上にあまたの島々を造りて、その一つに居を定めたり。

 されども、闇炎《ハングニス》の始祖神ヴァルダロスは、しばし焼け野原となりたる故国に留まる。


 ――闇炎も絶え、黒き焼野のみ残れる古き王国の跡に、大火を逃れてなほ命を保てる人々あり。

 彼らは、身は炎に焼かれてすでに死ぬるべけれど、魂のいと強きゆゑに、焦げたる骸を離れず、なほその内に留めり。


 かの闇炎神(ヴァルダロス)、かかる者どものうち、命の残りたる者には、魂魄を荒ぶらせ、その身にもとより備はりたる力を悉くあらはさしむ。

 また、すでに死したる者には、骸を離れんとする魂をふたたび肉に結びて起たしめたり。

 かくして、生ける者より生まれしものは、のちに魔族(ダエモン)と呼ばれ、死してなほ起ちし者は、不死族(ネクロス)と呼ばるるに至りけり。


 されども、そのかみもつひにはその地を去り、ふたたび立たしめたる人々を従へて、遥か南の大地へと下りにけり。


 かくして、三柱の始祖神は、東と天と南とに分かれ、各々その地に神国を建てり。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 東に至れる光神レウカリア、己が身に宿れる原初の神光(レウコス)を、己が身にのみ留めざりき。


 かの御神はまづ、親しき者を召し寄せ、その身に宿れる神力の多くを分かち与へ給ひけり。

 神力を受けたるかの人々は、人の身を脱し、老いも死も遠ざかり、凡人の及ぶべくもあらぬ力を具《そな》へて、つひに神となりぬ。

 これぞ、後の世にレウコス神族と呼ばるる神々の始まりなり。


 また、かの光神《レウカリア》、民のうちにも神力を授けらるる者を、いくばくか置き給ひけり。

 かの人々は神にはあらねど、人の身の限りをはるかに超ゆる力を得て、神々に仕ふる神使(アンゲルス)とぞ呼ばるる。


 国土広まるほどに、その恩寵もあまねく民草に及び、人々は老いず、病まず、つひには死すら稀なる世となりにけり。

 人々は林を伐り、野を墾き、道を通し、村を建て、荒ぶる獣どもを次々と退け、その住まひを遠き地へ広げゆきけり。

 その昔、人は獣を恐れ、谷川や険しき山々に隔てられて、所々に分かれて暮らしけれど、この時より、散り離れたる人の地は初めて相連《あいつら》なり、一つの広き人の世をなしたり。


 かくてレウコスの至高の神国はいよいよ栄え、人々は長き命と豊かなる糧とを得て、神々(レウコス)の庇護の下に安らかに暮らしけり。


 ――また、天に昇れる物質の始祖神ケルス、地上を広く治めんとは思はざりけり。


 ケルスは雲居よりも高き天にあまたの島を造り、その一つに居を定め、己に親しき人々のうち、数少なき者にのみ神力を分かち、これをグウェルの神々となせり。


 されど、かの神々は地上に下りて国を広げず、人の世をも治めず、天上の島々に籠りて暮らし、他の二神族と交はること稀なりき。


 ――南へ下れる闇炎の始祖神(ヴァルダロス)のなしたるところは、二柱のそれとはいたく異なりたる。


 かの畏き神は、己が内に燃ゆる原初の闇炎(ハングニス)を余人に分かつことを厭ひ、その力をただ己が身にのみ留め置きけり。

 ゆゑに、これに従ふ者らは、レウカリアに仕ふる人々のごとく神とはならざりき。


 されど、ただ人のままにも捨て置かざりけり。

 闇炎の始祖神(ヴァルダロス)は神力を分かち与ふることなく、従ふ者らの魂魄をただ荒けくなし、魔族(ダエモン)と不死族(ネクロス)を次々と生ましむ。


 かの闇炎神《ヴァルダロス》は、これらをつぶさに治むることを好まざりき。

 下衆がいづこに住み、何を食らひ、たれと争ふとも、その多くを顧みざりけり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。