4. 嫌がらせ
問題が起き始めたのは、それからしばらくしてからだった。
最初は、廊下ですれ違う際に肩をぶつけられる程度だった。
奴らは三、四人ほどの同級生で、普段から大勢で食事を取り、上級生とも頻繁に出入りしている連中だった。
ガラヌスは彼らの名前こそ知っていたが、ほとんど話したことはなかった。
最初に肩をぶつけられた時も、ガラヌスは振り返っただけだった。
「おっと、悪い悪い」
そう言いながら、相手は笑っていた。
別の日には、食堂で座ろうとしたところを後ろから椅子ごと引かれた。
尻餅をついたまま睨みつけると、連中は悪びれる様子もなく笑った。
「冗談だろ」
「何本気になってんだよ」
また別の日、訓練を終えて脱衣所へ戻ると、置いていた制服が水桶の中へ突っ込まれていた。
水を吸った上衣を持ち上げると、裾からぼたぼたと床へ水が落ちた。
近くにいた何人かがこちらを見て笑っていたが、誰がやったのかは言わなかった。
ガラヌスは強く拳を握った。
だが、教官に特別な人脈があるわけでもない。ここで問題を起こし、事情もろくに聞かれないまま自分まで懲罰を受けるようなことは避けたかった。
結局、ガラヌスは予備の制服へ着替えた。
濡れた制服は、また連中に汚されないよう、その日の夜、人目につかない校舎裏へ持っていった。
物置と外壁の間には細い隙間があり、午後になるとそこへ僅かに日が差す。
ガラヌスはその奥に紐を張り、誰にも見つからないよう制服を干した。
当然、一晩では乾かなかった。
翌朝になってもまだ服の先に湿り気が残っていたため、そのまま予備の制服を使い、数日のあいだ人目を避けて干し続けた。
このまま完全に無視していれば、奴らもそのうち飽きるだろう。
少なくとも、ガラヌスはそう思っていた。
実際、嫌がらせを受けた生徒は大抵、怒ったり、嫌がったり、何かしら反応を返していた。
そして、そうした様子を面白がって、さらに嫌がらせを繰り返す者が多かった。
ならば、何をされても相手にさえしなければ、そのうちこの"遊び"もなくなるだろう、とガラヌスは考えていた。
しかし、ガラヌスが無視を続けたことは、連中にとってはかえって都合がよかったらしい。
いつしかガラヌスは、「何をしてもやり返してこない奴」として、新しい玩具のように扱われるようになった。
肩をぶつけられる回数は急速に増えた。
それでも無視していると、
「あいつ、本当に目ついてないんじゃねえの」
「逆に何したら反応するんだ?」
「いや、あれは強がってるだけだろ」
などと、まるで本人には聞こえていないかのように、すぐ近くで唾を飛ばしながら嘲笑った。
食事中には山羊乳の入ったコップを横倒しにされ、寝台の上には泥のついた靴を置かれるようにもなった。
ガラヌスはそのたびに毛布を乾いた布で拭い、汚れた靴を水場で洗って乾かした。
そうした日々が、しばらく続いた。
そのうち、ガラヌスは、入学前には確かに持っていたはずの自分への自信や自負が、少しずつ萎んでいくのを感じた。
それと同時に、これから先のことを考えるたび、以前にはなかった不安が膨らんでいく感覚も、ガラヌス自身も自覚するようになった。
――“あの日”が来たのは、そんな時のことだった。




