↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/19

10.5 終末戦争記①

 ……されど、かの闇炎神《ヴァルダロス》、ただ一つ配下に固く禁じたることありけり。


 それすなはち、大いなる徒党を結びて、多くの者の一つの主のもとに集ふことなり。

 闇炎神(ヴァルダロス)は、強き者らが群れ合ひて大いなる勢ひとなり、つひには己に背くを忌みたればなり。


 されば魔族《ダエモン》は王《レクス》を戴かず、一国をなすことなく、山野、深き森、荒野の各所へ散り、各々己が力のみを頼みて生きけり。

 かく世を送るほどに、弱きは斃れ、強きは残り、その血は子へ孫へと伝はりて、代を重ぬるほどにその身も知恵もいよいよ強くなりゆきけり。

 つひには、昔より人を脅かしたる巨獣をも物の数ともせぬ者さえ現れけり。


 さるほどに、東なるレウコスの神国もまた、いよいよ広まりゆきけり。

 邑《くに》は増し、道は延び、人の住まひは西へ南へと及びて、つひには南方に散り住める魔族の地と相接するに至りけり。


 ――初めのほどは、その争ひ、いと小さきものなりき。

 人の知らずして魔族《ダエモン》の狩場に入りき。かつ魔族の人里を犯して人を害することあれば、神々や神使これを討つ。

 かかること折々ありけれど、いまだ神々が相争ふ大戦に及ぶことはなかりけり。


 それ、魔族《ダエモン》に殺されたる人も、その魂の失せざるかぎり神々(レウコス)がその肉を癒し、魂を呼び返して、ふたたび生者となさしめければなり。

 されば人の死も、いまだ永き別れとはならざりけり。


 また、闇炎神(ヴァルダロス)も、わづかなる魔族《ダエモン》の討たるるを大事とはせざりき。

 魔族《ダエモン》は、まことの神の民にはあらず、各々己が力にて生くる者なれば、斃るるもまたその者の定めなりと思ひけるなり。


 ――されども、魔族《ダエモン》の力は代を重ぬるごとになほ増しゆき。

 して、つひに一人の魔族《ダエモン》、一柱のレウコス神を討ち取りけり。


 斃れたる神の骸は、直ちに諸神《レウコス》のもとへ運ばれたり。

 神々は、つねに人を甦へらせたる法のごとく、その肉を癒し、光を注ぎ、去りたる魂を呼び返さんとしき。


 されど、その神は甦へらざりけり。


 いかに光を注げども、その目は開かず、いかに名を呼べども、その魂はつひに応へざりけり。


 ここに至りて、神々は初めて一つの理を知りぬ。

 『神々の死、覆すことあたはざるなり』


 嗚呼、それまで死は、人と獣と魔族との上にのみ臨むものなりけり。


 神々はかつて、その理の外に立てるがごとくありき。されども、この日、死は初めて神々の座にまで及びぬ。


 一柱の神の永久に失はれたりと知るや、諸神《レウコス》はその仇を討たんと南へ下り、魔族の住まふ地を攻め始めけり。

 魔族《ダエモン》もまた、おのおのが神使と人とを襲ひ、村と森との境に起こりし争ひは、たちまち広き境の地を覆ふ戦となりぬ。


 しかるに戦のさなか、同胞を失ひたる憤りに堪へず、幾ばくかの神々、諸神《レウコス》に告ぐることもなく、南へ馳せ下り、闇炎の始祖神(ヴァルダロス)を討たんとしけり。


 ――されど、その企て成らず、かの神々は闇炎神(ヴァルダロス)の手に斃れぬ。


 ここに至りて、二神族の間に残れる和もつひに尽きぬ。


 至高の始祖神(レウカリア)、同胞の死を黙して捨て置くことあたはず。

 闇炎の始祖神(ヴァルダロス)、己を討たんと来たるレウコスの神々を、もはや遠き地の神国として捨て置かざりけり。


 この日より、二つの神国の間に残れる隔ても失せ、神と神との大戦《ベルム》始まりぬ。


 かくて後の世に、あまたの神と魔とが斃れ、国々焼け、山崩れ、川の流れさへ変はりたりと伝はるる大戦――終末戦争《ラグナロク》、ここに始まりけり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。