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不倫の神様  作者: 天狗
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8/70

LOG.8|大人は、我慢する|Good for you.





俺は今から、

ミカに4時間触ることが出来ない…


ラブホでボディタッチ無しは、

普通に地獄だ……。






ミカ

「ここに寝て。」



ベッドの真ん中を

ポフポフと叩くミカ。


言われたとおりに

俺は仰向けになって寝転んだ。





ミカは俺の上に寝そべり、

体全身を預けてくる。


ミカが

掛け布団みたいで可愛い。






ミカ

「体貸して~」

「アタシここでスマホ見るね」






そう言ってミカは

俺の体の上でスマホタイムが始まった。



ゼロ距離で、

”ミカの香り”を浴びている。




しかも、

シャワー終わりの、

出来立てホカホカの”ミカの香り”。




あまりにも気持ちよすぎて、

白目向きそうになった。





いきなり、

首元にふわりと唇を近づけてくる。







シン

「んぎゃ!」






全身が跳ねた。






ミカ

「弱いんだ、首?」

「でも動かないで我慢して。」

「アタシ、我慢強い男が好きだから。」






バスローブの胸元はゆるく、


ミカが動くたびに、心臓が死ぬ。







終わらない地獄の焦らしが3時間続いた。








ミカはスマホを見ながら、


抱きついて、



そのついでに、

首や耳をほんの少し噛む。




それに苦しむ俺を見て、






ミカ

「……ふふ♡」







心底、嬉しそうに微笑む。



痺れるな、ミカ。


全てが、俺のツボだ。









ーーー








残り、30分。




ミカは、


スマホに飽きたのか、

突然スマホをポイッと遠くへ投げた。



そしてミカは

四つん這いになり、俺の上に跨った。



俺の目をゼロ距離で 真っ直ぐ見つめる。




ミカ

「ねぇ、今からアタシが言うこと…」

「全部ウソね。」

「シン、大好きよ。」

「アタシをめちゃくちゃにして…?」




そう言ってミカは

唇が触れるギリギリで、

ピタッと寸止めした。





シン

「…っ!」






もう我慢できない。


そして、

最後の一線が折れた。






ミカのほっぺを掴み、

力任せにキスしまくった。








その瞬間、





ミカの目が変わった。


猫のように可愛かった目が、

一気に感情を消し、

冷たいガラスみたいな目になる。









ミカ

「あーあ。」

「さよなら。」










ミカの、舌打ちが、聞こえた。





思ったより、怒られた。



これはマズい…







シン

「ミ、ミカ」

「ごめん、えっと、」





ミカは立ち上がり、

バスローブを落とし、

全裸になった。







ミカ

「もう会わないから好きにして。」

「ほら。早く。」





シン

「ミ…カ……」







無駄な肉のない、彫刻のような、

完璧な体が目の前にあって、

我慢なんてできるわけがなかった。


俺は何も言わず飛びかかった。






けれどミカは…


人形のようだった。




声を出さない。

喜ばない。

怒らない。

求めない。








ただ遠くを見るような目をしたまま、




天井を眺め、


俺に合わせて、


揺れる、


だけ。









涙が、

目尻に少し浮かんでいた。







その涙は、快楽のそれじゃない。

きっと、失望だった。










ーーー









そして俺は、

ミカに飲み込まれたまま、果てた。




世界が、急に止まった。


無音の時間が流れる。









ミカ

「…どいてくれる?」

「重いんだけど」







シン

「ご…!ごめ…!」







俺は急いで賢者タイムの体を

ガバッと起こした。





俺は肩で息をしていた。


理性は崩壊したままだった。


俺だけが、肩で息をしていた。




シン

「ミカ、あの」

「俺…ごめ、その、」





無視。



真横を向いてるミカ。




ミカは、

まったく違う世界にいた。





ミカは上半身を起こして、

ベッドに座り直し、

バスローブの紐をゆっくり結び直した。




そこからミカは

勢いよくスクッと立ち上がり、


足早に

バッグからメイクポーチを取り出す。





…思えば、


さっきまでミカは、

化粧なんてほとんどしていなかった。


髪も自然に垂らして、


それでも、

完成されてる美しさで…。






ミカは鏡の前に座り、

淡々と、機械のように化粧を始めた。


ファンデ。

ライン。

ハイライト。

リップ。


ひとつ塗るたびに、

ミカの顔が、別の誰かになっていく。


最後に香水を手に取り、






シュッ。シュッ。シュッ。







あたりに広がる強烈な甘い香り。


ホテルの空気が

全部その匂いで塗り潰された。



”ミカの香り”は完全に消えた。




ミカは鏡越しに俺を見る。





暗い。

冷たい。

底がない。




ミカは立ち上がり、

ワンピに着替えながら、



鏡を見たまま目も合わせず、

こう言った。








ミカ

「よかったね。」

「モデル抱けて。」









声が平坦すぎて、逆に刺さる。







ミカはスマホを取り出し、

淡々とホーム画面を開いた。





ミカ

「じゃ、LINE消しとくね。」






シン

「ま、待って、」





ミカ

「送迎はして?」

「早く、ミカを元の場所に戻して。」






アタシ、じゃなかった。


語尾もテンションも違う。





バッグを肩にかけ、

香水の匂いをまとったミカが

ドアの前に立つ。






ミカ

「行こ。」

「ここに、長くいたくない。」

「さっさと来てくれる?」






冷たすぎて、震えた。


廊下を歩くミカの背中は、

まるで、知らない他人だった。


エレベーターに乗り込んでも話さない。





車に乗っても、

視線はずっと外に向いたまま。




俺は、ミカの足を確認した。





足は、パタパタしていない。







ーーー







パーキングに到着。





ガチャ



ミカはすぐに車から降りた。






ミカ

「……じゃ。」





バタン




車のドアが閉まる。



そしてミカは

パーキングの暗闇に消えた。


残された香水だけが座席に漂っていた。


俺はハンドルに額を押しつけて、

そのまましばらく動けなかった。



この香水の香り、本当に嫌いだ。



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