LOG.65|普通とは|Hong Kong
2号機…3号機…
勝手に増えていく、
ミカレプリカ。
つまり、
不倫相手が増えていき、
順調に、”不倫の神様”だった。
そして4人で遊ぶのも、
すっかり慣れてきた、
そんなある日。
男2人、自宅にて…
リュウト
「お!なんだこれ!」
ニートが
スマホ見て何か騒ぎ出した。
シン
「おい、風呂は?」
「クセーから風呂入れ」
リュウト
「サウナ付きバーベキューだってよ!」
シン
「聞いてんのかニート!」
リュウト
「4人でいこうぜ!」
「ブリブリでサウナ入ろうぜ!」
リュウトが
インスタの動画を見せてきた。
\今流行りのサウナ付き/
\バーベキュー場、知ってる~?/
シン
「相変わらず話聞かねーな」
「お前なぁ...」
\セルフロウリュウもあって~/
\こだわりの国産牛が~/
シン
「ん………」
「......ここ、めっちゃいいな」
リュウト
「だろー!?」
「いこうぜ!」
「昼間なら予約取れそうだぞ!」
ニートなのに…
なんでお出かけ嬉しそうなんだよ…
いつでも行けるだろ、お前は…
俺は
リュウトにあきれて
アイコスをくわえた。
シン
「そうだな、いこう」
「で…お前よぉ!」
「サウナは分かったから風呂入れ!」
「足がクセーんだよバカが!」
俺はリュウトのケツを踏んだ。
リュウト
「んぎゃー!」
リュウトは、痔だ。
ざまぁみやがれ。
あと食費くらい払え。
バカが。
ーーー
後日。
貸切サウナを予約して、
朝っぱらから
2号機達と合流した。
言わずもがな、
皆そろって不倫なので
遊べる時間は
9:00~16:00くらいだ。
その間で
サウナで吸いまくって、
バーベキューやって、
吸いまくって…飲んで…
という作戦だ。
2号機
「おまたせ~!」
3号機
「見て~大量~!」
3号機が
数え切れないほど
セヴァンスターを持ってきた。
小さいカバンに
ギチギチに詰まっていた。
リュウト
「うっひょー!」
「ほぼシンが吸えよ!」
「俺達は少なくていいからよ!」
シン
「なんでだよ」
「皆で均等に、」
リュウトが
ポンと俺の肩をたたく。
リュウト
「お前の金じゃん、全部」
「いつも出してくれて ありがとう。」
「俺、居候だし、皆は人妻だし」
「だから たまには欲張れよ!」
2号機
「いや、ホントそうだよね」
「いつも、ありがとう!」
3号機
「いつも、ありがとね!」
「イッちゃってください!」
リュウト
「さ!遊ぼうぜ!」
「大人の遊びだ!」
「いつも我慢してんだろぉ?」
「社長さんよぉ!」
シン
「お前ら…」
「バカばっかりだ…!」
お礼の品が
セヴァンスター欲張りセットは
バカすぎて嬉しかった。
安心さえした。
やっぱコイツら、
ガチのバカだなぁ、と。
シン
「俺のほうこそ…!」
「いつも、ありがとう!」
リュウト
「なんか、恥ずいな~!」
照れ隠しで、
肩を殴ってくるリュウト。
やめろ、
お前のパンチはシャレにならんぞ…。
2号機
「仲良しだねぇ~」
3号機
「初めて聞いたかも。」
「シンが人にお礼言うところ。」
シン
「な、俺だって言うぞ!」
「それにガチで本音だ!」
「結構、元気もらってんだよ!」
「俺、落ち込んでても、」
リュウト
「待って、腹いてぇ!」
「ウンコしてくる!」
空気を切り裂く、
リュウトの意味不明報告。
ピリリリリ
2号機
「あら?」
「はぁい、もしもし?」
ゴミタイミングで鳴る、
2号機のスマホ。
3号機
「…ぷ」
「私は聞いてるわよ?」
「なんか、大人になってきたじゃん?」
「素直にお礼言うなんてさ。」
シン
「大人…ってか、」
「言いたくなっただけだよ。」
「なんか…言わなきゃって思った。」
3号機
「…そう。」
「言えて、よかったね?」
シン
「あぁ……!」
そんなこんなで
最寄りの駅へ到着。
ーーー
気づけば俺は、
ありえない量を
一人で吸いまくった。
ぐわんぐわんと
地面が回る。
シン
「よし!サウナだ!」
「と思ったけど、待て!」
「マンチだ!」
「ミカ!どこだ!」
よたよたと
焼肉のほうへ行くが、
その道の途中にエナドリを発見し、
エナドリをイッキ飲み。
2号機
「ミカって誰よ!」
リュウト
「俺の女!」
シン
「あぁ!?」
「リュウト、テメー!」
「ぶっ殺すぞ!?」
そう怒鳴り散らしながら、
俺は焼肉のほうへ
行こうとしたが、
その奥にケーキを発見。
イッキ食い。
そして焼肉を食べるのを忘れ、
またソファで吸った。
シン
「あ!違う違う!」
「ミカだ!」
「違う、サウナだ!」
そんな
キマリまくってる俺を見て
リュウトは爆笑した。
リュウト
「ミカばっかじゃん!」
「歩き方ロボットだし!」
「ぎゃはは!」
「ペッパーくん!」
「ぎゃは!ペッパーくん!」
2号機
「ミカって誰なのよ!?」
皆、目が真っ赤で、
それぞれでキマっていた。
どうでもいい話で笑い、
時には誰かが突然泣き出し、
そんなこんなで16:00になった。
皆で肩組みながら
電車に乗った。
周りから見たら
ただの酔っ払いだった。
ミカ…元気かなぁ。
ーーー
その次の日、
俺のタスクカレンダーに
美容室の予約が追加されていた。
…が!
一切記憶にない。
記憶はないのに、
未来だけは決められていた。
グループLINEで聞いてみた。
シン
『おい、お前ら』
『この美容室なに?』
『俺の名前で取った?』
リュウト
『知らん』
『てか見て』
『デケェ虫いた』
大きめのカナブン的な虫の、
キモイ写真を、
送り付けてくるリュウト。
シン
『黙れ』
2号機
『ウチが予約した!』
『覚えてないの?』
『髪切りたいって言うから』
『ウチの行きつけ紹介した』
『もー!吸いすぎー!笑』
3号機
『虫、よかったね』
『おっきいね』
シン
『そうか』
『じゃあ切ってくるわ』
『ありがとう』
リュウト
『だろ、3号機ー!?』
『シンには分からないか!』
『このデケェ虫の良さが!』
『デケェ虫!』
『虫デケェ!』
シン
『黙れ』
俺はスマホを閉じた。
紹介してくれた店は
俺の整骨院から距離はあったけど、
せっかくだから行くことにした。
ーーー
その美容室で俺は、
髪を茶髪に染めてもらった。
仕事がパンパンすぎて
日中は時間が作れない。
だから、特別に
夜の21:30から髪をやってもらった。
その子は雇われの美容師なのに、
そんなワガママに付き合ってくれる、
珍しく融通の効く人だった。
身長は160くらい。
顔はカワウソっぽい可愛さ。
金と黒が混ざったショートボブ。
そして、たわわ。
特に深い意味はないが、
アルファベットで言うと F 。
うむ。“たわわ” だ。
ーーー
髪を染めながら、
ふと酒の話になった。
いつものクセで口走った。
シン
「オススメのバーがあるんすよ」
「バーなのに、コロッケがさ…!」
「やたら美味いんだよ!マジで!」
言った瞬間、胸がズキッとした。
あぁ、そうだ。
しばらく行ってない。
マスターの顔、
見るのが気まずい。
美容師
「え、いいじゃん」
「行こーよ今度、一緒に!」
軽い。
軽すぎる。
一応、
理性の残りカスで抵抗してみる。
シン
「いやいや…」
「既婚者じゃないですか」
俺はそんなバカじゃない。
薬指くらい、確認してるぜ?
美容師は、
ケラケラ笑いながら返してきた。
美容師
「なんで?吞むくらいダメ?」
「変なことする気なの?」
「てか旦那、今香港だよ?」
シン
「香港?」
美容師
「うん、海外出張」
「2ヶ月戻ってこないの」
「だから大丈夫」
「心配かけないよ、旦那には」
…俺の中で、
何かが、ざわざわした。
シン
「…旦那の仕事って何系?」
美容師
「え?」
「工場勤務だよ。」
「半導体関係…だったかな?」
「専務だから、出張が多いのよ」
「何?まさか知り合い?」
シン
「え、いやいや。」
「知り合いじゃないよ。」
「とりあえず、よかった。」
…なんか安心した。
旦那が、
表側の人間でよかった。
美容師
「ぷ、何よ、よかったって。」
「とりあえず、吞み行こうね!」
これは仕方ない。
旦那が香港の、たわわ。
断れる男のほうが、レアだと思う。
ーーー
数日後の夜。
俺たちはマスターの店へ。
カランコロン、とドアが鳴る。
マスター
「いらっしゃ、」
「あ!」
シン
「マスター!」
「久しぶり……!」
自分の特等席に座る。
ミカと出会ったのも、ここだった。
カウンター、一番端の席。
マスター
「おう!待ってたぞ!」
「元気そうで良かったよ!」
「いつもの、でいいのか?」
さすがマスター。
撮影どうだった、とも
ミカについても何も聞かない。
まぁ、当たり前だよな。
ミカ以外の女を連れてきて、
ミカの話なんか出来るわけがない。
そして……
この席に座ると、
ミカ元気かなぁ…と
ふと思ってしまう…。
シン
「いつもの麦焼酎で」
美容師
「じゃあ私はハイボールで」
グラスが並び、氷が鳴る。
どうでもいい会話で笑って、
酒が進んで、
店を出た、
そのあとだった。
美容師
「今日さ」
「実家に子ども預けてきちゃった」
「まさかウチのこと…」
「大人しく帰宅させないよね?」
シン
「俺、帰したいなんて言ったか?」
俺は、
普通じゃない今が、
普通すぎて、
もう何も分かってなかった。
ピリリリリリリリリ
シン
「…ちっ」
美容師
「電話?」
画面には、リュウトの文字。
…なんとなく、
これは出てあげたほうがいい気がする。
直感で、そう感じた。
ダルかったが、一応出てやった。
シン
『なんだ?』
『デケェ虫か?』
リュウト
『ちげーよ!』
『腹減った!』
『助けて!金ない!』
『今どこで呑んでる?』
『合流しようぜ!』
ちっ。
電話に出て、損した!
絶対に嫌だ。
邪魔されてたまるか!
シン
『私は今日も仕事だ。』
『君とは違うのだよ暇人。』
『リュウトくん、金欠なんだね』
『はっはっは、よく聞きたまえ』
『オススメの方法があるぞ』
『パチスロ行け』
『ジャグラーで稼げ』
『わかったか?』
『今日は1人で遊べよ?』
リュウト
『その手があったか!』
『やっぱシン頭いいな!』
『ありが、』
電話を切った。
よかった。バカで。
そのまま、
流れるようにホテルへ。
ーーー
部屋に入るなり、
酔いの勢いも混ざって、
空気が一気に変わった。
距離が詰まるのに
さほど時間はかからなかった。
そして、首絞めの時間。
美容師
「……っ、なにこれ……」
「やば……うそ……」
最初は戸惑い半分、好奇心半分。
けれど一線を越えた瞬間、
美容師はあっさりと、
その快感に落ちていった。
そして、
ミカ4号機が誕生した。
そこから4号機とは…
「旦那が香港にいる2ヶ月だけ」
という条件で、
“愛人契約”みたいな関係になった。
定期的に会う約束をして、
ホテルの日程まで決めてしまった。
一応、2号機にも報告した。
シン
「そういえばさ、」
「この前、こういう流れでさ…」
2号機
「セヴァンスターの件も含めて…」
「全部ナイショね?」
「会うなら別日ね」
「普通に恥ずかしいから」
……そりゃそうだ。
その一言で、
完全に住み分けルールが決まった。
ーーー
それから約1ヶ月後。
いつものように、
夜の21:30から
4号機に髪を染めてもらっていた。
4号機
「ねぇ……」
「この店で、してみたい」
…めんどくせぇ~。
また変なこと言い出したなぁ…。
とはいえ、空気に飲まれる形で、
俺たちは美容室の
監視カメラの死角へ移動した。
シャンプー台の影。
カウンターからも見えない位置。
4号機は上着を脱ぐと、
くるりと振り返って笑った。
4号機
「ね?誰も来ないよ?」
「旦那、香港だし…」
2人きり。
本当に静かだった。
…何かまた、ざわざわする。
その時だった。
バンッ!!
ありえない勢いで、扉が開いた。
「コソコソ2人で何してる!?」
4号機の旦那だった。
だらしねぇデブだな…。
てゆうか…
香港って、どこだよ…。
ミカ。
俺は上手くやれるかな?




