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不倫の神様  作者: 天狗
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64/70

LOG.64|自認、神|Birth of GOD






ミカの事務所から電話がきて、

人の商品を連れ回すなと言われた。



そして、

ミカがいなくなった。





LINEは消され、

既読すらつかない。


電話も繋がらない。





ポンポン通知が鳴るのは


リュウトからの

迷惑LINEだけだった。







ミカ…

帰ってくるよな……絶対…。



あの時みたいに…。







でも、

いくら待っても帰ってこない。


焦りと絶望が一周して、

やがて意味不明な思考に辿り着く。








…稼げば、帰ってくるんじゃないか?






街で目立つほど稼げば、



ミカのことだから、

何食わぬ顔で帰ってくるはずだ。






そうだ!そうに違いない!


そこから、狂気の努力が始まった。







ーーー










「ミカが欲しがる男になる」







その一心で

ビジネスを猛勉強した。





そんなアホな思考なのに

本当に店は伸びていった。





今まで手取り30万だったのが、

気づけば 120万 に届いていた。







リナも、

いつの間にか店長に育っていた。





リナ

「違うよ」

「手首で押しちゃダメ。」

「あのね、」







ふふ。


いっちょまえに

ちゃんと指導してんじゃねぇか。







見違えるほど拡大した、

俺の整骨院。





…だが努力は、ミカには届かない。




成功しても、微笑んでくれない。





本当に帰ってくるのか

分からない不安と


「俺は一体なんのために…?」

という感情が


順番に襲ってきて、

そろそろ耐え難いものがあった。






その反動は、

ある日突然、性欲の爆発となった。







ーーー







仕事も伸びた。金も稼げた。


でも…夜になると、

どうしようもなく虚しかった。








シン

「なぁ、リュウト」





リュウト

「なにー?」



ビビビビ



チュドーン






スマホでゲームしながら

リュウトが返事する。




リュウトは

仕事を辞めてニートになって

俺の家に住み着いていた…。





シン

「あのよぉ」

「女呼ばねー?」





リュウト

「いいよー」




ババババ



ドカーン








シン&リュウト

「「じゃ、呼んで?」」






シン

「……」





リュウト

「………」






情けない…。



なんて、

女っ気が無いんだ俺たちは…。





イケメンとはいえ

リュウトとずっと2人は

耐え難いものがあったので


俺は嫌になって出かけた。





チュドーン


ガンガンガン




リュウト

「どこ行くのー?」

「女はー?」






無視した。




話しかけるなクソニート。




バカが。




イケメンのくせに使えねーな。





俺は車の中で

高級メンズエステ、と検索した。






気晴らしのつもりだった。




60分の料金は、


温泉旅館へ

家族旅行できるくらいの値段。




安かろう、悪かろうだからな。


絶対、

高いほうがいいに決まってる…。



スクロールしていたら、

目に入った名前があった。










ミカ










もちろん、本人じゃない。






せめて名前だけでも。






そういう、

情けない気持ちで指名した。








ーーー







部屋に通されて、

会った「ミカ」は


普通に綺麗で、

普通に優しい女性だった。



身長は俺と同じくらいで、

おかっぱみたいな、

ぱっつん前髪のショート。



顔は、

朝ドラ女優のように透明感抜群だった。







施術が始まって少しした頃、

彼女が聞いてきた。






セラピ

「メンズエステってさぁ」

「彼女にはなんて言って来るの?」

「嘘つかなきゃ来れないよね?」






それは軽い雑談のつもりだろうけど、

俺にはちょっと刺さった。






シン

「…彼女いないよ」






セラピ

「え!? 」

「その若さで…!」

「ここ来れる経済力あるのに…?」






すごく素で驚かれた。







シン

「彼女……いらねーんだよね。」

「形式ばった…」

「あの関係値が…」

「イヤなんだよね。」

「だから、犬になりたい」






セラピ

「……犬?」






シン

「なんでも言うこと聞く犬。」

「呼ばれたら行く。欲を叶える。」

「なんでもハイハイ言うこと聞く…」

「そんな犬がいい」






俺はうつ伏せのまま、

少し、足をパタパタさせた。





ミカ…元気かなぁ。










だが、

セラピは一瞬ポカンとしたあと、

なぜか笑わなかった。





セラピ

「…ね、ねぇ、見たことあるかも」







シン

「あん?」





セラピ

「お兄さん、ここ初めて?」

「足パタパタするの、見たかも」

「なんか、懐かしいかも。」

「私たち初対面?」






なるほど。



ミカ、俺は今、言われた側を理解したよ。



確かに、困るな。





いや、でも…



そう言われると…


なんか、

地元の友達のような感覚は、

あるっちゃあるな。








シン

「…俺も、ちょっと思う」

「キャバとかにいた?」





セラピ

「いや…いない」

「どこで会ったんだろ、」

「うーん……」






シン

「フェロモンかもな。」

「身体の相性いいんじゃねぇか?」






ちょっと、冗談ぽく言ってみた。






セラピ

「あは、そうかもよ!」

「ねぇ、とりあえずさ、」

「LINE交換しない?」

「私、旦那とレスなの。」

「遊びに行こうよ。」






おお、


なんかスムーズに、

LINEゲットしたぞ。









ーーー






そして帰宅。




でも…

リュウトには

なんとなく内緒にしていた。





無駄にイケメンだから…。



横取りされたら、嫌だった。







セラピにLINEした。





シン

『明日昼頃これる?』





セラピ

『いける』

『旦那いない』







よし。



あとは、








シン

「ん゛ん゛…」

「なぁ、リュウト」






リュウトの部屋…というか



”俺がリュウト貸してる部屋”

のドアに向かって俺は話しかけた。








リュウト

「あん?」







ピコピコピコピコ



チュドーン




ゲームの銃声が聞こえる。








シン

「俺よぅ、インフルかも」






リュウト

「うぇぇ!?」

「マジかよ!」

「俺の部屋に来んなよな!」






まず、

オメーの部屋じゃねーよ。




あと、

さすが自己中…。



心配とか無いんだな…。




逆に安心さえするわ…。






シン

「だからよぅリュウト」

「ホテル代やるから」

「3泊くらいしてきてくれ」







リュウト

「わかった!」









よし。


よかった。バカで。








ーーー













その翌日。




俺のマンションの前に

彼女が立っていた。





部屋に入った瞬間、

昨日の施術のときより

明らかに距離が近かった。





そこからの流れは早かった。




そして、

首絞めを教えた。




最初は怖がってたのに、

途中からスイッチが入ったみたいに

彼女は体をピクッと震わせて声を漏らした。




セラピ

「……すご…ゲホ」

「首絞め…こんなにイイの…?」

「やっぱり…相性抜群じゃん…!」







想像以上にチョロかった。



そこから完全にハマった。





彼女は、

首絞めに依存していった。





何度も何度も

痙攣しては絶頂していた。








それにしても…



改めて、

少し思ったことがある。




人によって

首の感触が違う…。











ミカの首は、






めちゃくちゃ、気持ちよかった。











ーーー








気づけば夕方まで求め合っていた。


何時間、

2人で くっついていただろう。







こうして、

ミカがいなくなった後に…


“ミカ2号機” が生まれた。




つまり、

ミカのレプリカだ。





これが初めての”不倫”






2号機を沼らせてしまったあと、


そこから先は、

マジでネズミ講みたいだった。




沼った2号機は、


週に2、3回は

俺のアパートにくるようになっていた。


そんなある日、2号機が言った。






2号機

「ねぇ、シン」

「うちの友達、呼んでもいい?」

「その子もレスでさ…」

「新婚なんだけど…」

「同棲から ずっとレスで…」

「溜まってるらしくてさ…」

「ね、いいでしょ?ね?」






シン

「……ほう。」

「ちょうどいいかもな。」

「バカが帰ってくるからよ!」








2号機

「バカ…?」









ーーー










そして後日、



ホテルから

帰ったリュウトと合流し



3人でわちゃわちゃしていた。




そこに、



2号機の友達とやらは

本当に来た。


しかも、また“不倫”。








玄関を開けた瞬間、

「あ、地雷だ」

って2秒でわかった。



年齢は30歳で整形バキバキ。


聞くと、

どうやら元キャバ嬢らしい。




ミカレプリカ2号機の次、

さしずめ3号機だな。




3号機は、

妙に愛嬌があった。


笑うと

子どもみたいに無邪気だった。




新婚ホヤホヤで不倫…って。








3号機

「あら不良が2匹」

「はじめまして~、おじゃま~」

「ノド乾いた〜無理すぎ~」







と言って

勝手に冷蔵庫から

エナドリを取り出す。








シン

「あ、エナドリ…」








足で冷蔵庫の扉を

バンッと閉めて


ダル着を脱いで

キャミ姿になる3号機。



完全に自由人。






3号機

「このマンション綺麗ね」

「広くて最高じゃん」

「あ、充電器貸して。」






ガタっと棚を開ける3号機。







シン

「……あれ?」

「なぁ、なんで知ってんだ?」

「充電器の場所……」





3号機

「あれ……」

「……確かに。」

「でも、なんだろ、私さぁ」

「この間取り、どっかで、」






リュウト

「3号機可愛いー!」





3号機

「ぷっ」

「ありがとっ」




お礼ついでに

ムギュっと胸を寄せる3号機。




空気を読まないリュウトにも

自然に神対応していた。


さすが元キャバ嬢…。






2号機

「ね、ね、」

「私もエナドリ飲んでいい?」







下から覗き込むように

俺に聞いてくる2号機。






シン

「好きにしろ…」









なんか、

めんどうなことになった…。



4人で、

ダラダラ話していたら

そのまま夕方になった。


その日を境に、

俺のアパートは

アラサー人妻のたまり場に変わった。




まぁ、これはこれで…



最高の人生かもしれない…


でも…何か…違和感が…




リュウト

「てか、シン」

「インフル大丈夫か?」






シン

「あん?インフル?」






あー…。



そういや

そんな嘘ついてたな…。






シン

「あー」

「完治した」





リュウト

「完治ってお前…」

「アレそんな早く、」







シン

「黙れ」

「完治したんだ」






リュウト

「…さすがだな!」

「やっぱシンすげーや!」

「インフル絶対治すマン!」






よかった。バカで。







ーーー








2回目に集まったとき、


3号機が

コンビニ袋をぶら下げてやってきた。








3号機

「シンくん、これ知ってる?」

「セブンスターじゃなくて、」

「セヴァンスターってやつ。」






見た目が、

明らかにタバコでは無い。







シン

「合法か?」






3号機

「うん、合法♡」







自慢じゃないが、

俺だって別に…


ド真面目、ド健全、

だけで生きてない。




合法の草は見慣れていた。







一本吸った瞬間、

世界がフワッ…と傾いた。


なかなか、悪くなかった。








3号機

「やばいでしょ〜?♡」

「これに酒と~♡」

「エナドリぶち込むの♡」







シン

「なんか…ぷ!はは!」

「勝手に笑っちゃう!ははは!」







2号機

「えー楽しそう!ウチもやる!」






リュウト

「俺も俺も!」






3号機

「みんなでハッピーハッピーしよ~♡」








ハッピーハッピーして…

首絞めて…

酒飲んで…


この “大人の遊び” が

完全にテンプレ化していた。








ーーー








4人でアパートに集まるたびに、

床にはピザの箱。


テーブルは

エナドリ缶とスト缶で埋まり、

机の端には例のセヴァンスター。





白昼夢みたいな時間が続く。









しかし、忘れちゃいけないのが

全員、人妻なこと。


つまり、夜には帰る。


夜は…結局男だけだった。







シン

「…むさ苦しいな」




リュウト

「そんなこというなよ」





ブッ




リュウト

「あ、わり」

「屁が出た」







シン

「やっぱり…」

「むさ苦しいなぁ…」











ーーー








そして……。




当然、

そんな生活をしていたら…


仕事への意欲なんて

薄れていくに決まってる。





現にこの時点で俺は、


もう仕事する気が

ほぼ無くなっていたので



予約をブロックして

昼間からマンションに帰っていた。





リナからの鬼電も、無視して。






マンションに帰れば高確率で

2号機か3号機かリュウトか…


誰かしら、

勝手に部屋にいた。




堕落していることにすら

気づけないくらい楽園だった。






気づいた時には

地獄は、蔓延していた。




独りじゃないから、いいか。



約束は、破ってない。






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