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不倫の神様  作者: 天狗
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57/70

LOG.57|黒い、宝石|Sorry to have kept you waiting.









リュウトが吐いたゲロを

マスターと2人で掃除した。




なんとか、

ミカが来るまでに間に合った。





マスターのスマホが震えて、

通知音が鳴る。


そのたびに、

俺はビクッと肩を跳ねさせた。


楽しみすぎて、

完全に挙動不審だった。




マスター

「お、ミカ来るってさ」

「もうすぐ着くらしいぞ」




シン

「今から!?」

「平日の夜11時だぜ!?」

「おい!ホントに来るってよ!」

「聞いてんのかリュウト!」





リュウト

「よ゛がっだね゛…」




リュウトの体力ゲージは

赤く点滅していた。



だが俺には、

1ミリも関係ない話だ。



普通に、ひっぱたいた。




パシッ!




シン

「生き返れ!」

「モデルが来るぞ!」





マスター

「リュウト…」

「いつも可哀想に…」







マスターのスマホが震える。






マスター

「お!」

「そこで飲んでて、今解散したらしい」

「ナイスタイミングだったな」







血管が爆発しそうだった。






で…



生き返れ、リュウト。



ぶっちゃけ、

2人きりで会話はヤバい。



確実に惚れちまう。








シン

「リュウト!」

「ガチでお前起きろ!」

「ぶん殴、」






リュウトを叩き起こそうとした、


その時、







店の外、


ドアの向こうから、




ハイヒールの

“コツ、コツ、コツ”

という音が近づいてくる。





そして


彼女がバーのドアを開けた瞬間、

店の空気が、変わった。







ーーー






黒ワンピのシルエットが完璧。



少し色黒でラテン系美人。





黒い宝石で…




神様、みたいだった。








なんだか…



ずっと貴方に、


会いたかった気がする。








シン

「あ…」




リュウト

「……」





パニックの俺と、潰れたリュウト。






あまりの賑やかっぷりに

小さくクスッと笑うミカ。






ミカ

「こんばんは」

「お隣、しつれい」






ミカはカウンターで

俺の横に座った。


フワッと、

いい香りがただよった。



何の香りでもない、”ミカの香り”



この香りも、

不思議と懐かしい感じがした。




落ち着く、香り。







ミカ

「マスター、こんばんは」

「アタシ、いつもの」






マスター

「ありがとなミカ、きてくれて」

「こいつ、LINEで説明したやつ」

「シンっていうんだ」

「と…潰れてるのがリュウトだ。」






そう言いながら

カクテルを出すマスター。




コトッ





マスター

「ほい」

「オリンピック。」






ミカ

「ありがと」






シン

「…そんな名前のカクテルあるんだ」






ミカ

「うん。」

「好きなんです。」






ミカが、

グラスを持って、

俺に向き直る。






ミカ

「はじめまして、ミカです」

「モデル名はメイでやってます」





ミカは、

置いてある俺のグラスに

チンッと乾杯した。




ミカ

「お店広告のモデル…」

「私でよかっ、」






ガバッ





俺は、ミカを包み込んだ。




パリン!




ミカの持っていたグラスが落ちて割れた。






ミカ

「ほえっ?」








…ただいま。







ミカ

「……。」





ミカは、俺の後頭部を優しく撫でた。






マスター

「おい!シン!」





…あれ!?



ただいま、じゃねぇよ俺!






やべぇ、身体が勝手に……!





シン

「あ、あれ!?」

「ごめ、マジで、そんな、」

「そんなつもりじゃ…!」

「ごめんマスター、グラス…!」





脳に酸素が回らない。



パニクった俺は、


反射的に、

アイコスをくわえた。





頼むリュウト、起きろ。



俺はカウンターの下で

リュウトをつねった。



起きない…。




カチャカチャ




マスター

「…ったく!」

「気をつけろよシン!」




カチャカチャ




手際よく片付けてくれるマスター。



ホントごめんマスター…。






ミカ

「……ふふ。」

「びっくりしたけど、大丈夫。」

「なんか、胸板分厚いね?」

「強そうで、カッコイイね?」





そんな事言うなよ。



可愛いな、お前。







ミカ

「…で、」

「インスタの撮影ってさ、」

「アタシって何すればいいの?」

「セリフとかいるの?」






シン

「いや…まだ…そこまで…あの」





いつも俺は

こんなんじゃない。



さっきのを反省して、

いつもよりキショくなっている。







ミカ

「ねー!」

「なんでそんな固いんですか~?」

「アタシ、電気受けれるの?」

「ビリビリしてもらえるの?」






こっちが反省していたからか

ワザと明るく振舞ってくれるミカ。


正直、かなり助かった。






シン

「いや…うーん」

「したいならするけどよ」

「実際撮影は…そうだな」

「筋トレメインかな?」

「とにかく伸ばしたいんだ」

「インスタとかSNS!」

「ついでに店の宣伝だ!」






ミカ

「あは! そっか!そっか!」

「やっと会話できた気がする!」

「でもさぁ…撮影とは別でさ、」

「実際に電気受けてみたいんだけど」

「どんな感じなの?」




シン

「え、店!?来るの!?」

「俺、接客すんの!?」

「いやいやいやそんな…!」

「来たら死ぬって俺が…!」






ミカがクスクス笑いながら、

横から覗き込むように顔を寄せてくる。


距離が近い。反則だ。








ミカ

「だって気になるじゃん」

「アタシ腰痛いし~」

「腰にビリビリしてよ~」

「行っていいの〜?」






シン

「腰!?」

「そんなとこに電気…」

「お前それ、それお前…!」

「ま、待て待て待て!」

「心の準備が……!」






マスターが正面から突っ込む。






マスター

「なに照れてんだ?」

「さっき無理やりハグしたくせに?」








シン

「い、いや!」

「だってコイツ、」

「顔、可愛すぎるだろ!」





あ、





本音が、ポロリ。





口が滑った。






ミカは

そのやり取りを見て口元だけで笑う。


目は完全に笑っていない。




獲物を見つけた、ヒョウだった。








ミカ

「じゃあさ、場所教えて?」

「LINE交換しよ〜?」






軽い。


これが魔性。





シン

「マジで!?」

「もちろ、」






マスター

「ミカ!」

「やめとけ!こいつは手が早い!」

「さっきので分かったろ!?」

「ダメったらダメ!」

「LINE交換したなんて知られたら…」

「事務所に何言われるか分かんねーよ!」







ミカ

「え〜じゃあやめる〜」





ちっ。


マスターめ。


見て見ぬふりしやがれ。






マスター

「あくまで…」

「ビジネスとして繋げただけだ!」

「事務所に誤解されないようにしてくれ!」

「簡単な広告のみOK貰ってるからよ」

「整骨院行くなら普通に予約してくれ」

「俺だって板挟みで大変なんだよ…。」





シン

「そ、そうそう!」

「ビジネスだ!」




おしかったぜチクショー。







俺は真正面を向いて

平静を装ったが、

横に座ってるミカには丸見え。








ミカの視線が、

横からすっと刺さる。


そのまま口角がゆっくり上がる。






完全に、お見通しの、ニヤリ。








ミカ

「ねぇ~」

「ほんとに行ってみたいんだけど〜」

「どこから予約すればいいの〜?」

「なんで個人LINEはダメなの~?」






わざとらしく困ったポーズをするミカ。








マスター

「シン、ダメだぞ?」

「モデルだけって言ったろ?」

「変な気を起こすなよ?」







シン

「わかってるよ…」

「約束は守る…」




俺は

わざと無愛想に

アイコスをくわえた。







マスター

「はぁ……」

「ミカ、撮影だけにしてくれ」

「整体は、予約を使ってくれ」

「個人LINEは、しない」

「な? 頼むぞ?」








ミカ

「ふぅん…」









ミカはカウンターに頬杖をつき、

視線をそらしながら、

不機嫌そうに唇を尖らせた。








マスター

「…ったく」

「お前らってやつは…」




肩を下げて息を吐くマスター。






マスター

「…ミカ」

「ポテトか何か つまむか?」







ミカ

「ん? あぁ~…」

「どーしよっかな」

「じゃあ、花言葉のサラダ。」






マスター

「あいよ。」

「それ、季節で変えてんだ。」

「今だと、スイートピーサラダ、だな。」







ミカ

「スイートピー?」

「あは、可愛いね~」






ミカは、会話しながら

マスターには見えない角度で、

俺の足をコツンと当てた。




次に太ももをスッと撫でる。


完全に、死角を理解した動き。






そのまま、

俺の膝の上にスマホを置き、


カウンター下の影で

LINEのQRコードを開いた。







ご丁寧にメニュー表を見るフリして

メニュー表バリアで隠している。


あまりにも、手慣れていた。








え?と嬉しそうな俺を見て、


ミカは小首をコテンと傾け、



「よかったね?」

と言いたげな可愛い顔を向けてきた。







震える指で、

QRを読み取り友達追加した。




リュウト、

もう帰っていいぞ!



後は、俺に任せておけ!






ーーー









ミカ

「じゃあ今度、」

「撮影でお店に行くね〜」

「シンさん、楽しみにしてて?」







マスター

「シン、連絡は店の予約を通せよ!」

「個人でやり取りするなよ!」

「いいな!?」






何かをジュージュー焼きながら

マスターが怒鳴る。








シン

「あいよー!」

「もちろんですとも!」




ふはは!


やっぱり、

”最高の人生”だなぁ!








マスター

「お前…」

「急に機嫌なおったな…?」





シン

「え、いや」

「おいリュウト!」




困った時は

リュウトを起こす。




バシッと叩いて

電源ON。





リュウト

「んぐ……」

「まだ…呑めるぞ」






シン

「そうこなくっちゃ!」

「マスター!」

「テキーラ!」






マスター

「リュウト…」

「いつも可哀想に…」









俺は、


欲しいものは

なんでも手に入れてきた。





ミカ、


今に見てろよ。




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