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不倫の神様  作者: 天狗
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58/70

LOG.58|わんちゃん|Queen MIKA






ミカと

酔いつぶれたリュウトと


3人…というか


2人と0.5人で楽しく飲み明かした。






朝方に、バーを出た。


代行が運転する車の中で、

俺はずっとスマホを握りしめていた。



『さっきはありがとうございました』

と、ミカに送った。


送ってから

既読がついてないか

何度も確認していた。








リュウト

「シン」




シン

「どうした?」

「吐くのか?」

「車の中はマジで勘弁しろ。」




リュウト

「違うよ…」

「楽しかったなぁ…」

「また3人で呑もうぜ…。」





あきれた。



同級生だけど、

年下みたいに可愛いヤツだ。


でも楽しかったって…。

お前…半分寝てただけだろ…。





シン

「そうだな」

「来週もこっち来いよ」

「遠くまでありがとな。」





俺の地元は

ここから2時間。



リュウトは

2時間かけて、

週末に遊びに来てくれる。




ポンコツだけど、いい奴だ。






リュウト

「来週も…くるぜ」

「呑むぞぉ…。」





シン

「そうだな」

「またテキーラ欲しいか?」





リュウト

「いらねーよバカ…」

「テキーラの話、すんなよ…」

「味を思い出して気持ち悪く、」

「うぷ」




シン

「!」



代行

「と、止まりますか!?」



シン

「すぐに止まってくれ!」





オロロロロロ




シン

「あぁ~!!」







リュウト、

俺の車でリバース。





前言撤回。



俺はコイツが嫌いだ。



心底憎い!


もうお前なんかと呑まん!






そんなこんなで、


リュウトを、

ビジネスホテルへ送り届けて、


なんとか、帰宅。






ミカの既読はつかない。


たぶん今日、返信は来ない。


そう思いながら風呂に入り、

ベッドに倒れ込み

気絶するように眠った。








ーーー







翌朝、スマホが震えた。


ミカからのLINEだった。







ミカ

『昨日はありがとうございました!』

『顔むくむくです笑』

『シンさん…記憶ありますか?』







ゼロ秒既読で返信した。







シン

『ありますあります!』

『ハグの件…すみません…』







ミカ

『いいのいいの〜』

『アタシも酔ってたし笑』

『それより、整骨院てどんな感じ?』

『撮影の前に遊び行きたい!』







シン

『え、見に来るの?』

『全然いいですよ!』







バカが…!


2人きりだぞ…!


大チャンス!








ミカ

『わーい!行きたい行きたい!』

『もちろんお金払うよ?』

『お客さんとして行ってもいい〜?』





シン

『いや無料で大丈夫です!』

『モデルのお礼としてさ…!』






ミカ

『じゃあ…』

『お客さんとして行くのはナシね?』

『普通に遊びに行く♡』





よっしゃあ!


めちゃくちゃ口説いてやる!






ーーー









ミカはLINEのあと、

本当に店に来た。






ミカ

「あぅ~腰気持ちいい~…」





リナ

「めっちゃ固いですね」

「スマホ触りすぎですよ!」






タイミング的に、

担当はスタッフのリナだった。




腰の施術ってことは…

モデルのくびれが見れたのに…


チクショー!





なんで俺はこんな時に

むさ苦しいオッサ、いや!


危ない危ない。


お客様の悪口言うとこだったぜ。



シン

「じゃ電気終わりなんで、」

「次は仕上げの整体入りますね~」

「少々お待ちください」



シャッ!


俺が仕切りのカーテンを開けて、

控え室のほうへ向かうと、

すぐにリナの声が聞こえた。




リナ

「少々お待ちくださ~い」






シャッ!


突然、

リナの仕切りのカーテンが開いた。




後ろから小走りで追ってくるリナ。



シン

「え?どした?」




リナ

「しっ」

「小声で話して…」

「仕上げの整体なんすけど…」

「私と代わってください」




シン

「はぁ?」

「何かあったのか?」





リナ

「違いますよ…」

「あのモデルさん…」

「オーナーと喋りたいんですよ?」

「だから来たんです」

「なんで平然と任せるんですか…」

「可哀想じゃないですか…!」





シン

「ほう…」

「リナお前…」

「給料アップな。」






リナ

「バカ言ってないで、」

「早く交代してください」





リナは

俺が担当していたオッサ、

いや!


お兄さんに話しかけた。






リナ

「ここからは代わりますね~」

「電気失礼しま~す」






俺は急いで

ミカの個室に向かった。





シャッ!


ミカを早く見たくて

仕切りのカーテンを

つい思いっきり開けた。





ミカ

「あ!いた!」

「うつ伏せ待機長いよぉ~」




うひょー!


うつ伏せのミカ様ー!



くびれ、お美しい~!


曲線美~!





シン

「ごめんごめん」

「仕上げの整体しますね」






俺は

鼻の穴をデカくしながら

デレデレで整体した。








そして整体中は

この前の呑み会の話になり、

リュウトのリバースで笑い、


ふと、ミカが聞いてきた。







ミカ

「ねぇ、シンさん」

「どうして整骨院やってるの?」

「整骨院って楽しいの?」

「正直、全然似合ってない!」

「見た目が先生っぽくないもん!」





シン

「はは、そうだよな」

「よく、職人系と間違われるよ」

「うーん…」

「元々は俺ね…」

「医者になりたかったんだよ」

「なんというか…」

「キレイな金を稼いでみたかったんだ。」




ミカ

「へぇ!」

「全然イメージできない!」






シン

「でも無理だったからせめて医療関係…」

「そう思って柔道整復師を取ったんだ」

「まぁ…でも、色々言っても結局は、」

「迷惑をかけてきた俺の人生の、」

「カルマの精算だな」





ミカ

「ふぅ~ん…?」

「じゅぅどぉせいふくし…?」

「かるまのせーさん?」




シン

「ぷ!はは!」

「難しかったかぁ?」




ミカ

「む~…」

「ふんっ。」





ミカは拗ねて、

しばらく黙って整体を受けていた。



すると突然、






ミカ

「ねぇ、シンさんって…」

「なんで彼女いないの?」

「こんなに優しいのに〜」





シン

「おい、なんで…あ」

「マスターが言いやがったな」

「…まぁ」

「なんでだろうな…」

「俺が聞きてーよ」







ミカはうつ伏せのまま、

足をパタパタさせながら言った。







ミカ

「アタシさ〜」

「彼氏いらないんだよね〜」






シン

「え、なんで?」






ミカ

「だって彼氏ってさぁ」

「自由が無くなるじゃん」

「束縛されたり、色々面倒でしょ?」

「形式ばった、あの関係値がイヤなの」

「だから彼氏になろうとする人は嫌い」





シン

「まぁ…確かに……」









ミカ

「アタシは犬がほしいの!」









シン

「……犬?」

「犬って犬?」








ミカ

「犬!わんちゃん!」

「ペットじゃなくて人間のわんちゃん!」

「言うことなんでも聞いてくれる…」

「アタシだけのわんちゃん♡」

「束縛しないし」

「裏切らないし」

「甘えてくれるし…」

「そんな、わんちゃんと暮らしたいの。」









シン

「……そっか。」







また、


懐かしく感じた。





何故だろう、


こんなイカレた考え方、

初めて聞いたはずなのに、



聞けて嬉しいとさえ、

思ってしまう……。






ミカ

「ミカのわんちゃん……」

「どっかにいないかなぁ〜♡」








わんちゃん……か。










ーーー











施術が終わると、

ミカは気持ちよさそうに伸びをした。







ミカ

「めっちゃ腰スッキリした〜!」

「ありがとうシンさん〜!」






ちっ。


つい、

真面目に接客しちまった。


口説き忘れた。






シン

「無理すんなよ」

「安静にしてね。」






ミカ

「うん!」

「またLINEするね?」

「無視しないでよ?」

「すぐ返信してね?」







シン

「あぁ、すぐに返すよ」







ミカ

「……違うでしょ?」






急に不安そうな顔を見せるミカ。








シン

「え?」








ミカ

「“わん” は?♡」








目が無くなるくらい、

満面の笑みで聞いてくる。


ミカの八重歯が可愛い。









シン

「わん」







また、だ。



懐かしく感じた。



ミカの全てが、懐かしい。










ミカ

「ふふ♡ 」

「可愛い♡」

「よし、帰るね~」








そう言って、


ミカは、

出口へ振り返ってドアの方へ向かう。





俺は、

ミカの手をつかんだ。











ミカ

「……ほえ?」






あ、あれ!?


俺は、一体何を……!?




また、身体が勝手に……!







するとミカは、

なにかを思い出したように、

目を丸くして、


そのまま俺の胸にふわっと抱きついた。







ミカ

「コレが欲しかったの?♡」






シン

「……っ!」






はい。



ミカ様の、おっしゃる通りです。












と、いうか…!

やっぱ、ミカって…!

いい香り!


”ミカの香り”

で柔軟剤 販売してほしい!


2億でも買う!





ミカ

「落ち着く~…」




猫のように

スリスリするミカ。



だが、

急にパッと離れた。






シン

「…?」

「どう、」






シャッ!


仕切りのカーテンが開く。



さっきのオッサ、いや!


お兄さんが仕切りのカーテンから

リナと一緒に出てきた。




リナ

「ありがとうございました~」






ほう。


リナの見送りタイミングか。



危機察知能力が高いな、ミカ。






リナ

「あら、モデルさんも終わり?」







ミカ

「終わりです!」

「ありがとうございました!」







ミカが

こそっと耳打ちしてきた。





ミカ

「じゃ、またLINEするね。」

「わんちゃん、すぐ返してね?」








シン

「わかった」








ミカ

「よし、またね〜♡」








ミカが

ドアを開けて出ていく瞬間、

急に寂しく感じた。



なんだか無性に…


ミカが、

どこかへ行ってしまうような、


そんな、気がした……。








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