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不倫の神様  作者: 天狗
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49/70

LOG.49|最後の電話|RYUTO






皆で遊んだ後日、


俺は2号機に

美容室を紹介してもらった。


元々通ってた床屋に飽きたから、

美容室に変更してみたい気分だったんだ。







ーーー







その美容室で、

髪を金髪に染めてもらっていた。




2号機の担当は、

めっちゃ可愛かった。




雇われの美容師なのに、

「紹介で来てくれたから」

と言って色んな値引きをしてくれた。


珍しく融通の効く人だった。






やけに元気なヤツ。



それが最初の印象。



身長は160くらい。


顔はちょっとカワウソっぽくて、

きゅるんとした目がやたらと印象に残る。


金と黒が混ざったショートボブ。


そして、たわわ。




…特に深い意味はないが、

アルファベットで言うと F だ。


うむ。“たわわ” だ。








ーーー








髪を染めながら、


仕事の話、

恋愛の話、

家族の話。



どうでもいいことを

他愛もなく喋っていたある日、

ふと酒の話になった。



俺は反射で、

いつものクセで口走った。






シン

「オススメのバーがあるんすよ!」

「バーなのに、コロッケがさ!」

「やたら美味いんだよ、マジで!」







まぁ、

オススメだけして終わるつもりだった。


普通は、そうなる。



だが…美容師は、普通じゃなかった。








美容師

「え、いいじゃん。」

「行こーよ今度、一緒に。」






軽い。

軽すぎる。


一応、

理性の残りカスで抵抗してみる。






シン

「いやいや!」

「既婚者じゃないですか!」






なめんな。


薬指くらい、

しっかり確認してんぞ。










美容師は、

ケラケラ笑いながら返してきた。








美容師

「なんで?飲むくらいダメ?」

「変なことする気なの?」

「てか旦那、今香港だよ?」








シン

「香港?」








美容師

「うん。海外出張」

「2ヶ月戻ってこないの」

「だから大丈夫。心配かけないよ。」








その一言で、俺の中で、

カチッと何かが噛み合った。








シン

「……行きますか!」








これは仕方ない。


旦那が香港の、たわわ。


断れる男のほうが、レアだと思う。









ーーー









数日後の夜。


俺たちはマスターの店にいた。


カランコロン、とドアを開ける。






シン

「マスター、久しぶり」







マスター

「おう!不良少年!」

「1ヶ月何してたんだ?」

「退屈してたぞ。」




シン

「別に、色々だよ。」




マスター

「…リュウトは別か?」





シン

「ヤツは出かけたと思う」

「あのニートは自由人だからな。」






リュウトは、

本格的に無職になり、

俺の家に入り浸っていた。






シン

「…なんで今、リュウト?」





マスター

「あ、いや」







4号機へ、目線を送るマスター。



一瞬で目線が戻る。







マスター

「特に深い意味はねぇよ…」






4号機

「……。」




シン

「……?」







マスター

「にしてもよ!」

「お前ら楽しそうだよなぁ」

「若いっていいなぁ」








シン

「ははは!」

「だろ~!?」

「”最高の人生”だろ?」

「ハイボールくれ!」








美容師

「じゃあ私もハイボールで」








グラスが並び、氷が鳴る。




と、ふと目に入った。







チンピラ

「………」





チンピラが2匹。




なんだ…?



見覚えねーヤツだな…?





この前、

ぶっ飛ばした連中とは違う。







少し離れた席から


ガラの悪い連中が

こちらを睨んでくる。






見てんじゃねーよボケナス、と


やっちまおうと思ったが…




リュウトがいない。





俺は、リュウトといれば負けない。





…だから、

今日のところは見逃してやる。







マスター

「…シン」

「アイツらはやめとけ。」

「最近、よく呑みに来てんだ…」

「この前もリュウトと揉めたんだ」





シン

「ふーん…」







あぁ、

それでさっきのマスターの態度ね。





てかリュウト、さすがだな。



俺といなくても、

ちゃんと喧嘩すんのな。





俺はアイコスをくわえた。








マスター

「頼むぞ…」

「我慢してくれ…」

「止めるのも大変なんだ…」






シン

「………」






全然、目をそらさねぇな。



チクショー。



今日は女連れだし…


こっちは、俺1人…


あっちは男2人…



戦力的に…

さすがに無理だな…



イライラする…







美容師

「どうしたの?」

「怖い顔しないで?」

「喧嘩なんてしないでよ?」





シン

「あ、あぁ、わりぃ…」

「大丈夫だよ」







その後、

気にせず2人で、

語りながら呑みまくった。






店を出た、そのあとだった。







美容師

「今日さ、」

「実家に子ども預けてきちゃった。」

「まさか…帰宅させないよね?」

「ウチ、遊ぶ気満々だからね?」








シン

「俺、帰したいなんて言ったか?」













ピリリリリリ














その時、

リュウトから着信があった。






おせーよ!



さっき電話くりゃ…


あのカス共、

ボコボコにしてたのによ!






シン

「ちっ…」






これからはお楽しみだ。





ニートに邪魔されてたまるか。








ブツッ








普通に無視した。









ーーー








そのまま、流れるようにホテルへ。






部屋に入るなり、

酔いの勢いも混ざって、

空気が一気に変わった。





距離が縮まるのに、

そう時間はかからなかった。






そして、セヴァンスターを、

美容師にも教えてしまった。









美容師

「なにこれ……!」

「めっちゃイイ……!」









最初は戸惑い半分、好奇心半分。


けれど一線を越えた瞬間、

美容師はあっさりと、

その快感に落ちていった。





ってことで、

美容師のおねぇさんは、


正式に、4号機となった。







4号機

「……もっと、しよ!」

「吸ってから…!」








そこから先は早かった。



「旦那が香港にいる2ヶ月だけ」

という条件で、




4号機とは、


2ヶ月愛人契約 、みたいな関係になった。



定期的に会う約束をして、

ホテルの日程まで決めてしまった。


一応、2号機にも報告した。








シン

「そういえばさ...」

「この前、こういう流れでさ……」







2号機

「会うなら別日ね」

「なんか…イヤだから。」








……そりゃそうだ。






その一言で、

完全に住み分けルールが決まった。








シフト分担は完璧だった。


ごっちゃにならないように

Excelでシフト表を作って管理した。









ーーー








それから数日後。


夜に美容室に呼ばれた。


この日は何故か、ホテルじゃなかった。







4号機

「ねぇ……」

「この店で、してみたい」






また面倒なことを言い出した。






とはいえ、

俺も乗り気ではあった。




空気に飲まれる形で、


俺たちは

美容室の監視カメラの死角へ移動した。


シャンプー台の影。




4号機は上着を脱ぐと、

くるりと振り返って笑った。








4号機

「ね?誰も来ないよ」










ピリリリリリ









リュウトから着信。









シン

「ちっ」







俺はイラついて、

また着信を切ろうとした。






と、思ったけど…


そういえば…

リュウト帰ってこねーな?



急に心配になり、出てみた。







シン

『おう、どうし、』








リュウト

『おい!!!!』








シン

『なんだよ!』

『声デケーよボケナス』

『今、俺はなぁ、』









リュウト

『いいから聞け!』

『お前、すぐに街から出ろ!』








シン

『はぁ!?』

『吸いすぎかぁ?』

『なに勘ぐってんだよ?』







リュウト

『デス君の女に手だしたろ!』









デス君、とは

地元の怖い先輩でヤクザだ。







デス君と呼ばれてるのは

殺人の前科持ちで、

口癖が「死ね」だからだ。









シン

『出してねーよ』

『あんなイカレ野郎に関わるかよ』







リュウト

『いや、シンお前…』

『この前呑んでたらしいじゃんか!』

『マスターの店で!』







シン

『……!』





あの変なチンピラ…



そーゆーことか。






リュウト

『デス君…地元から出たろ?』

『それが…ここら辺らしいんだよ』

『結婚して引っ越したらしい』

『巨乳の美容師と…!』

『で、俺、』







ブツッ






電話を切った。



もう、電話どころじゃなかった。







まさか、と思い


4号機を見ると

既に脱いでいた。



ニコッと笑う4号機。








シン

「…お前、」









その時だった。









バンッ!








ありえない勢いで、扉が開いた。







デス君

「オラァ!何してんだよ!」






4号機の旦那は、デス君だった。







反射で、

心臓が耳の裏まで跳ね上がる。









やられたぜ。











ほらな…


神様なんて…いねーんだよ。






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