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不倫の神様  作者: 天狗
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38/70

LOG.38|街を駆け抜ける|I need you!






ミカが一緒に呑んでた男を、

俺は殴ってしまった。



そして、


今、ミカと向き合ってる。





マスター

「あのなぁ…」

「何があったら知らねーけど…」





バラバラになった

ウイスキーの棚を掃除しながら、

喋るマスターを横目に、



俺達は

ただ黙って対峙していた。








マスター

「シン、おめぇよぉ…。」

「普通なら逮捕だぞ…。」

「知らない仲じゃねぇから、」

「警察には言わないけどよ…。」

「酒の弁償はつけとくからな…。」

「結構高いウイスキーもあんだぞ…。」

「後できっちり返せよ…。」







ごめんマスター。


今俺は、

ミカに何を伝えたいのか、

整理してて頭が忙しいんだ。




ミカも、

無表情で目を逸らさない。







マスター

「聞いてんのか!」

「とにかく弁償しろよな!」

「でよ!もう一度言うぞ!」

「何があったかは知らねーよ!」

「とにかく俺の店でやるな!」

「2人も帰れ!」







マスターが

俺の肩を掴んで

出口へ誘導した。




俺は

何も言わず

そのまま店を出ようとした。





出る直前に、

ミカがぽつりと呟いた。











ミカ

「どれくらい、嫉妬した?」






なんだ、その顔は。




嬉しそうだな、ミカ。













ミカ

「今、悔しい?」

「悲しい?」

「教えて、ミカに。」








俺は

出口のドアノブから、

手を離して停止した。




マスター

「お、おい、ミカ、」






横目でミカを見ると、

息を荒くして興奮していた。






ミカ

「残念だったね。」

「モデル、抱けなくて。」





残念?



セリフと顔が、

全く一致してないぞミカ。


牡蠣食ってる時と、

同じ顔してんじゃねぇか。







マスター

「おい、ミカ!」

「何言ってんだ!」






ミカ

「アタシ…」

「さっきの2人とヤったよ」

「どう?」







マスター

「ミカ!」

「いい加減に、」






ふざけんな。








バタン!


俺は飛び出していった。





逃げたんだ。




ここに、いたくなかった。






マスター

「…ったくホントに」

「いつまでガキなんだ…!」

「早く大人になれよ…!」

「ミカ、お前もだぞ。」






ミカ

「ごめんねマスター」

「アタシ手伝うね」







マスター

「当たり前だ!」

「お前、親戚じゃなかったら…」

「もっとブチギレてるぞ…。」





ミカ

「うん」

「ありがと。」

「ごめんね。」






マスター

「さっきの、ホントか?」





ミカ

「ん?」






マスター

「あの2人……」

「ヤったとかなんとか…」





ミカ

「あはは!」

「そんなわけないじゃん!」

「相手にするわけないでしょ!」

「シンをからかったのよ」





マスター

「そうか。」

「安心したよ。」




カチャカチャと、

割れたウイスキーを掃除していく2人。





カチャカチャ




カチャカチャ





マスター

「ミカは、シンが好きか?」





ミカ

「え?」




カチャカチャ





マスター

「なんとなく……」

「色んな男に口説かれてる姿、」

「たくさん見てきたが……」

「なんかミカ、楽しそうじゃないか?」





ミカ

「うーん……」






カチャカチャ






マスター

「なんかミカは生き生きしてるぞ?」

「シンといる時だけ、そう見える」



ミカ

「はぁ?きゃはは!」

「なによソレ!」




マスター

「いや、ホントに。」

「シンといると、そう見える。」

「良くも悪くも…」






ミカ

「…ふぅん」

「そんなことないと思う」




カチャカチャ




ミカ

「まず、顔が好きじゃない」

「あと、性格が悪い」

「あと、身長が低い」





カチャカチャ





マスター

「おい!」

「全部じゃねぇか!」





ミカ

「きゃはは!」






カチャカチャ






マスター

「…まぁいずれにせよ、」

「仕事で紹介しただけだからな。」

「変に進展しないに越したことはない」






カチャカチャ






マスター

「まぁタイプじゃないなら安心だな」

「2人きりでデートとか行くなよ?」





カチャカチャ




カチャ、






ミカ

「う、うん」

「約束は、守るよ」






カ、チャ、





マスター

「……。」






…カチャ



カチャカチャ










ーーー











俺は走った。



何処に向かって、

今走っているのか、

自分でも分からない。






でも、走りたくなったんだ。


それ以上でも、それ以下でもない。






ダッシュしていたら

いつの間にか

自分の店についていた。




自宅じゃなくて

自然と自分の店舗へ

帰っていた。





本能、かもしれない。














その日俺は、

店のテナントに泊まった。









俺は、

ミカのことが好きなのかもしれない。


でも今は、違和感がある。



好き…とは言いきれない。




憎い、という表現が近い。



あの、クソビッチ。


男なら誰でもいいのかよ。





……この気持ちはなんだろう。



優しい声の、ミカに会いたい。



優しいミカが、好きだ。













優しい声の、ミカ……















その日は、

天井を見つめて過ごした。


眠れぬまま、朝日が登った。




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