LOG.35|首輪に、鎖を|Movie Show
映画館についた俺達は
その時の話題だった、
ホラー映画を見てきた。
ラストシーンが
ちょっと怖かった。
ミカ
「ねぇ…」
「どう思った?」
「ラストのシーン…。」
シン
「あぁ…」
「凄かったよね…」
「普通にビビった…」
俺は
ポップコーンのゴミを
ゴミ箱に捨ててると、
ぐいっと袖を引っ張られた。
見ると、
ミカが下を向いて、
口を尖らせてた。
シン
「おや…?」
「メイさん、泣いてる?」
「ラスト、怖かった?」
ちょっと、
冗談っぽく言ってみた。
ミカ
「うん」
ミカは、
目をゴシゴシした。
マジかよ。
不意打ちを喰らった。
こんなにあっさり、
ミカが
弱さを出すと思ってなかった。
流石に……
可愛すぎるだろ……
そしてミカは
ついに本格的に
泣き出してしまった。
シン
「え!?」
「えっと、えっと」
「こっちきて!」
俺は、
とりあえず
急ぎでゲーセンへ避難した。
一番近くにあったし、
明るい場所のほうがいいと思って。
でも、
焦りのまま、
猛獣との正しい距離感を、
すっかり忘れていた。
ミカの腰に手を回してしまい、
緊急避難として
プリクラの中へ誘導した。
これが、いけなかった。
プリクラに入るなり、
俺はミカの顔を覗き込んだ。
シン
「お、落ち着いた?」
「大丈夫?ごめんね?」
ミカは顔を、
ぷいっとそらす。
シン
「ねぇ、ミカ、大丈夫?」
「急にどうし、」
ミカは突然、
俺の方へ振り返り、
俺の耳をつかみ、
強引にキスした。
シン
「っ!」
今回は、
捕食のような雑なキスではなかった。
恋人のような、上品な粘膜接触。
俺は、全身の力が抜けた。
プリクラの、
案内音声ガイドだけが、
空間に響く。
\コインを入れてね/
舌が、絡む。
\2人で平成にタイムスリップ/
ゆっくり、
唇が離れて、
俺の腕の中で小さくなるミカ。
ミカ
「もうイヤだ、外。」
「怖くなった。」
\ぎゅ~してツーショット撮ろう/
ミカ
「シンと、くっつきたい。」
ミカ史上、
最も甘い声だった。
\コインを入れてね/
全身の血液が流れる音が聞こえる。
\ぎゅ~してツーショット、/
ガシッ!
ミカ
「ほえっ」
そのまま、
俺はミカを引っ張って、
ゲーセンを出た。
駅の中、
ミカを引っ張って走る。
さながら、
ハリウッド映画のようだった。
バーガーショップ、牛丼屋、和菓子屋。
駅構内の店の横を、ミカと駆け抜ける。
様々な店の前を通過する度に
多くの目線を感じる。
俺は思った。
俺…
今、最高かも…!
映画の、主役じゃん…!
ミカ
「ちょ、ねぇ、早いよぉ!」
「ゆっくり走ってよ!」
シン
「無理だ!」
「ミカ、ごめんな!」
「俺は今、超楽しい!」
「俺に着いて来い!」
ミカ
「も~!」
「全然ロマンチックじゃなぁい!」
通り過ぎる店も人物も
全てがミカの背景になっていく。
そして、
やっと車へ到着した。
バタン
ミカ
「ふぅ……疲れたぁ。」
「はぁ、はぁ……」
「ホント……バカ…はぁ」
ごめんミカ、張り切って走りすぎた。
ミカがこっちを向く。
ミカ
「ふぅ…」
「ねぇ…」
「ちゃんと向かってね。」
「ホテルに。」
「…逃げないでね。」
「なんとか言いなさいよ…ふぅ」
俺は
何も答えなかった。
ミカ
「ねぇ、聞い、」
その代わり、
体を助手席に乗り出し、
今度は俺からキスをした。
シン
「わん」
最高の人生、だ。




