LOG.33|約束、だからね|The MEI
ミカとの、
ラブホ我慢デスゲームを終えて、
数日後。
例の、撮影の日になった。
ミカからLINEがきた。
ミカ
『今日、よろしくね!』
『実は、シンが喜ぶかと思ってさ、』
『プロの撮影班呼んでみた!』
シン
『えっ!?』
『ありがとう!助かる!』
ミカ
『あ、お金はいらないよ!』
『モデル料だけでいいよー!』
うむ。
またしても、
とっても嫌な予感がする。
ミカが
見返り無しに優しくするわけがない。
ミカ
『その代わり、映画いこ』
『付き合って!』
『ホラー映画、見たいの!』
『撮影終わったら行こ♡』
シン
『いや、もう2人で会うのは…』
『ちょっとさ…』
ミカ
『プロの撮影班いるのに?』
『それとも…』
『マスターにホテルの事言う?』
…ほらな。
シン
『わかったよ、行こう』
ミカ
『ふーんだ!』
『それでいいのよ!』
『モデルとデートなのよ!?』
『ちょっとは喜びなさいよ!』
『じゃ、また撮影でー!』
自分の都合で
どんどん逃げ場を埋めていく。
ミカの必勝パターンかもな。
ーーー
時間ぴったりに、
店の前へ白いワンボックスが
滑るように止まった。
スライドドアが開く。
ミカが降りてきた。
その後ろから、
カメラマン、照明、メイク
レフ板を持ったアシスタント、
機材持ち。
プロの現場そのもの。
みたいな集団が、次々と降りてきた。
金属の三脚が広がる音が、
店の空気を一瞬で現場に変えた。
シン
「おぉ……!」
ミカ
「再度、確認ですが」
「撮影の料金は変わりません。」
「ご安心ください。」
ミカが、
ヒールの音を響かせて、
俺の横を素通りする。
仕事モードのミカは、
なんだか、かっこよく見えた。
クルーたちが一斉に会釈してくる。
その瞬間、俺の店は
完全にメイの現場になった。
俺は
ただの備品みたいに横に立っていた。
主役はミカでもなく…メイ だった。
ミカはクルーに囲まれ、
メイクされ、
ライトを当てられた。
その一瞬で、
目の奥の温度がゼロになった。
表情は綺麗。
動きは優雅。
声も柔らかい。
なのに、人間味が全部消えている。
まるで、
違う生き物みたいだった。
クルー
「じゃあ来店シーンからー!」
「メイちゃん、次はこっちねー!」
「メイちゃんそのままー!」
撮影は容赦ないテンポで進む。
ミカが俺へ聞く確認も、
プロそのものだった。
ミカ
「ここ使っていいですか。」
「背景はこちらの壁、借ります。」
「施術シーンは照明どうしますか?」
声は丁寧なのに、温度がまったくない。
まさしく、業務の確認だった。
当たり前だが、
どの世界もプロというのは
メリハリがあるものだ。
ミカは特に、
激しいタイプなのかもしれない。
ーーー
撮影が終わった。
クルー
「もし他にもお仕事あれば、」
「今後ともよろしくお願いいたします!」
と、クルーは俺に、
ぺこりと頭を下げた。
シン
「こちらこそ。」
「今後ともよろしくお願いいたします。」
そして、
クルーが車に荷物をまとめ始める頃。
ミカ
「シン。」
こっそり、
ミカが俺に話しかける。
シン
「ん?」
「どうしたの?」
「皆、車に行ったよ?」
ミカ
「うん、あのさ」
「約束覚えてる?」
「アンタ、約束守んなさいよ?」
「このあと3時に、」
クルー
「メイちゃーん!」
「荷物積みますねー!」
「もう出ますよー!」
車のほうから、
クルーが呼びかける。
ミカ
「ちっ…」
「はーい!♡」
顔だけ、
こちらに向けて俺を見るミカ。
ミカ
「もっと嬉しそうにしなさいよ!」
「モデルとデートなのにさ!」
「じゃ、LINEするね!」
「バカ童貞!」
はぁ……。
ミカ…
また思い通りにいかなくて怒ってる……。
ミカがクルーの車へ向かい、
”ミカの香り”が薄くなったころ……
俺にLINEを送ってきた。
ポン、と通知が鳴いた。
ミカ
『フォレスト来て。』
『そこで待ち合わせね。』
前と同じホテル。
いや……
なんでホテルなんだよ……!
映画は!?




