LOG.32|分岐点|Winner
ラブホでミカと休憩して、
4時間触ってはいけないという、
デスゲームが開催された…。
ミカ
「ここに寝て。」
ベッドの真ん中を
ポフポフと叩くミカ。
言われたとおりに
俺は仰向けになって寝転んだ。
ミカは俺の上に寝そべり、
全身を預けた。
ミカ
「ミカのお布団になって?」
そう言ってミカは
俺の体の上で
スマホタイムが始まった。
スマホを見ながら、
俺の首元にふわりと
唇を近づけるミカ。
シン
「……。」
俺に、
くすぐったい攻撃は効かない。
ミカ
「……む~。」
「ここ、弱くないの?」
シン
「あぁ。」
「なんかね、耐性がある」
「なんでか分からないけど…。」
ミカ
「ふぅん…」
ミカは拗ねて、
しばらくお布団のまま、
YouTubeを見ていた。
いつの間にか、
ついに、
残り、1時間。
ミカは飽きたようで、
スマホを枕元に置いて放置した。
スマホの代わりに、
首や耳をほんの少し噛む。
ミカ
「……がぶっ♡」
…ちゃんと、がぶっ。って、
自分で言って嚙んでくるの可愛いな。
いや、落ち着け。
好意を持つな。
特に、今は危険な感情だ。
ーーー
残り、30分。
ミカは
四つん這いになり、
俺の上に跨った。
俺の目を、
ゼロ距離で真っ直ぐ見つめる。
ミカ
「ねぇ、シン。」
「今からミカが言うこと…」
「全部ウソね。」
「シン、大好きよ。」
「ミカをめっちゃくちゃにして…?」
そう言ってミカは
唇が触れるギリギリで
ピタッと寸止めして、ニヤニヤした。
俺は、
冷静にゆっくりミカに伝えた。
シン
「メイさん。」
「約束守ってね。」
ミカ
「…は?」
「アンタ余裕そうね。」
「ムカつく。」
その瞬間、
ミカの目が変わった。
猫のように可愛かった目が、
一気に感情を消し、
冷たいガラスみたいな目になる。
ミカは、
両手で俺の耳を掴んで
そのまま俺の唇を噛みまくった。
ディープキスでは無くて…
単なる、捕食。
シン
「……!」
「ぷはっ……!」
「ま!」
「まって!」
たまらず、
ミカの肩を掴んで
距離をとる。
シン
「反則!」
「反則ですよ!」
「レッドカード!」
ミカ
「アンタ性欲無いの?」
「目の前に、こんな美人がいるのに?」
「ありえないんだけど…」
ミカは
ゴソゴソと
俺の体を確認する。
ミカ
「嘘でしょ?」
「全然…元気無い…。」
シン
「さすがに理性あるよ。」
「マスターに申し訳ないだろ?」
「せっかく、紹介してくれたのに。」
普通の男は…
無駄な肉のない、
彫刻のような、
完璧な体が目の前にあって、
我慢なんてできるわけがない。
でも俺は、違う。
たかが性欲ごときで、
大切な仕事の関係者に、
ヒビを入れることは絶対に無い。
そして、タイムアップ。
俺は逃げ切った。
ミカ
「……ねぇ」
シン
「ん?」
ミカ
「ミカのこと…」
「変な目で見てないの…?」
「ヤリたい…みたいな」
また…
返答に困ることを聞く子だなぁ…
シン
「魅力的だとは思ってるよ」
「でも出会い方が仕事だったし」
「それに、」
ミカが食いかかる。
ミカ
「くぅ~!」
「童貞~!」
「早口キモ~!」
「頭固すぎ~!」
シン
「だ、だって!」
ミカ
「だっても何もないのよ!」
「目の前に!」
「こんな!」
「美人がいるのよ!」
「アンタ、イカレてんの!?」
シン
「確かに美人だけどさ、」
「でも、」
ミカ
「あー!もういい!」
「胸板、貸して!」
小さくなって
ギュッと俺にくっつく。
ミカ
「撫でて!」
「頭!撫でて!」
俺は思わず吹き出した。
シン
「ぷはは!」
「そんなヤケクソで…!」
「甘える人はじめて見た…!」
俺は、
笑いながら頭を撫でた。
この日、
俺は生き残った。
でも、勝ったという感覚は無かった。
ミカの顔が、
あまりにも悔しそうだったからだ。
多分俺は……
ミカのプライドを、
まともに傷つけてしまったのかもしれない。
必ず、仕返ししてやる。
ミカの顔から、
そう聞こえてくるようだった。
この悔しさが…
ミカを厄介な方向へ、
パワーアップさせなきゃいいけど……。




