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不倫の神様  作者: 天狗
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29/70

LOG.29|どこでも輝く|Fan






港に着いた瞬間、


潮の匂いと、

魚の焼ける香りが混ざった、

独特の海の空気が広がっていた。






ミカ

「到着~!」

「わーい港だー!」






嬉しそうに車から降りるミカ。




初めての場所なのに、


風景のほうが

ミカに合わせて後ろへ下がっていく。


まるで、

この港の主役みたいにそこに馴染んだ。






まぁ…


よく考えたら、

インフルエンサーだもんなぁ。


何万人もフォロワーいるし…。



そりゃそうか。









シン

「にしても…」

「月曜なのに随分混んでるなぁ」




ミカ

「そりゃそうでしょ!」

「だってここ、めちゃ有名、」




女の子

「あの!」



ミカ

「え?」




女の子

「メイちゃんですよね!?」





ミカ

「あ、えっと…」

「うん、そう…」





女の子

「きゃぁ~!」

「恋リア見てます~!」

「インスタ、フォローしてます~!」





ミカ

「え~!」

「応援ありがとうございます!」





ミカが、耳打ちしてきた。





ミカ

「シン、集まる前に…」

「牡蠣の屋台行くわよ」






行くんかい。




ミカは、

慣れた様子で、

ファンと写真を撮って、




牡蠣の屋台へ直行した。






屋台で牡蠣を食った瞬間、

ミカは子供みたいに無邪気になった。





ミカ

「……うまっ!」

「やっぱ最高…!」







俺は、

正直早く帰りたかった。







男の子

「あれ…恋リアの…」



女の子

「ねえ…あの人って……」







ミカが目立ちすぎるのだ。


あまりに芸能人すぎて

周りがジロジロと眺めている。






ミカは俺の袖を

ちょこんと掴みつつ歩く。



港のざわざわが次々と、

ミカの背景になっていった。








ーーー








牡蠣も食べ終わって、

屋台をいくつか回り、


満足した空気になったところで

俺達は車に戻ろうと歩き出した。







シン

「よーし……」

「ぼちぼち帰るかぁ~」






その時だった。







ミカ

「おい!」

「約束は!?」






シン

「え?」





ミカ

「海!」

「海だよ!海!」

「何忘れてんのよ!」





だんっ、と

地面を踏むミカ。







港のざわざわした空気の中で

響き渡るほどの声量だった。





ま、また目立っちゃう……!


マズい……!





シン

「あ!」

「ごめん!そっか!」

「ご、ごめんね!」





子供がデパートで

親の袖を掴むみたいに、

ミカが小さく俺の腕を引く。





ミカ

「絶対忘れてると思った…!」

「帰りたそうだし…。」

「デート、嫌そうだし…。」

「ミカ、ホントに大事なの…海。」

「海見ると元気出るの。」





その言い方があまりに自然で、

わがままというより、

本音が溢れた瞬間に聞こえた。










シン

「……分かった、行こう。」






ミカ

「……うん!」






そうして俺たちは、

港から少し離れた海へ向かった。



ミーハーの群れから逃げるように。








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