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不倫の神様  作者: 天狗
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26/70

LOG.26|仕事だよな?|LINE







マスターから紹介してもらえる、

モデルさんを店で待っていた。





マスターのスマホが震えて通知音が鳴る。







マスター

「お、ミカ来るってさ。」

「もうすぐ着くらしいぞ。」








シン

「今から!?」

「平日の夜11時なのに!?」








マスター

「そこで吞んでたらしい。」

「今解散したってよ。」

「ナイスタイミングだったな!」

「こんな時間にミカがいるのも、」

「ここで俺が店やってるからだな!」

「がはは!」




シン

「はは!たしかに!」

「だって、この時間にあんな美人、」

「外歩ってたら危ないもんな!」



マスター

「がはは!」

「俺のガタイが良いから、」

「ミカにも変な虫がつかねーんだ!」

「ゴツイ親戚とか、普通に怖いもんな!」

「美人の用心棒は大変だな!」




……美人。



そう、美人だった。



美人…


美人…


緊張はするが…


仕事の話をするだけだ…


落ち着け、俺……






店の外、

ドアの向こうから


ハイヒールの

“コツ、コツ、コツ”

という音が近づいてくる。






そして




彼女が

バーのドアを開けた瞬間、


店の空気が、変わった。








彼女は、


まるで、黒い宝石だった。













シン

「はじめまして…!」






俺は、

席を立ち上がり、

小さく頭を下げた。








ミカ

「はじめまして。」

「メイです。」






合わせて、

小さく頭を下げるミカ。





ミカは、俺の横に座った。





え、なんかいい香りする!




なんというか…


実家のような安心感…!










ミカ

「マスター、こんばんは。」

「私、いつもの。」








マスター

「ありがとなミカ、来てくれて!」

「こいつ、LINEで説明したやつ。」

「シンっていうんだ。」








そう言いながら

カクテルを出すマスター。






マスター

「ほい」

「カンパリソーダ。」




コトッ






ミカ

「ありがと」






ミカがグラスを持って、

俺の方に向き直る。





ミカ

「お店広告のモデル…」

「私でよかったんですか?」






小さくチンッと乾杯をする。








シン

「もちろんですよ!」

「ありがとうございます!」







ミカ

「…あのう、」





シン

「はい?」






ミカが、

ポカンとした顔をした。





ミカ

「私と、会ったことあります?」

「なんか、どっかで見たような…」








俺も、そう思ってる。







シン

「あ、やっぱ、」





コトッ







マスター

「シン、キノコのソテーおまち。」




マスターが、

美味しそうなソテーを置いた。






シン

「あ、はいはい!」










ミカ

「…で、撮影は、」

「私、何すればいいの?」

「てか、なんで敬語なんですか?」








シン

「い、いや……」

「仕事なので……」

「敬語、嫌ですか?」








うう……。


隣に座ってるだけなのに……


呼吸の仕方さえ忘れそうだ……。









ミカ

「嫌です!」

「なんか、距離感じる!」

「もっと柔らかくいきましょ?」








シン

「わかりました」

「じゃねぇや、わかった。」

「じゃ、タメ口で!」








ミカ

「そうしよ~」

「てかお店さぁ、」

「撮影前に行ってみてもいい?」

「お客として!」








シン

「ああ、是非!」

「ここから予約できるよ!」






俺は、

公式LINEからの

予約画面を見せた。









ミカ

「わーい、ラッキー!」

「アタシ、肩こりヤバいんだ!」







シン

「俺にまかせて!」

「あ、マスター」

「お客として会うのはセーフ?」








マスターが

カウンターから首を伸ばす。








マスター

「あぁ、それなら問題無いだろ。」

「お前、童貞だしな。」








シン

「おい!」

「マジで違うって!」

「やめてくれよ、恥ずかしい」








ミカは

そのやり取りを見て口元だけで笑う。


目は完全に笑っていない。








ミカ

「じゃあさ、場所教えて?」

「LINE交換しよ〜?」





LINEのQRを見せるミカ。






マスター

「お、それ、個人LINEか?」

「うーん……」

「ミカ……」

「何かあったらすぐ言ってな。」

「童貞でも一応オスだからよ。」






ミカ

「大丈夫です!」

「シン、優しそうだもん。」






チラッと目線を

俺に送るミカ。


照れるから、やめてくれ…。



俺はミカのスマホから、

友達追加のQRを読み込んだ。









マスター

「シン、約束守れよ?」

「お前にそんな根性ないだろうが…」

「絶対口説くなよ?」

「仕事関係のLINEだけにしろよ?」







シン

「大丈夫だ。」

「さすがに身の程はわきまえる。」

「動画の構成は相談聞いてね!」

「モデル目線の意見欲しい!」








俺は仕事の話をして平静を装ったが、


実は、

LINE交換ができて

ぶっちゃけ一瞬、舞い上がってた。








ミカの視線が、

横からすっと刺さる。


そのまま口角がゆっくり上がる。










完全に、お見通しの、ニヤリ。










ミカ

「いつでも、相談乗るね!」




急にグイっと

俺の耳元に寄るミカ。





ミカ

「ねぇ、シン……」

「LINEする時間……」

「何時でもいいからね……」







小声でささやくミカ。




シン

「え」





ミカ

「ミカ、寂しがりだからね……」

「絶対、LINEしてよね……」





な、なんてこと言うんだ…!



俺は凍ってしまった。


マヒャド喰らったみたいに。










マスター

「シン、ほれ。」

「絶品コロッケおまち。」




コトッ





マスターが

カウンターにコロッケを置いた。



ミカが、パッと離れる。





シン

「んあぁ!はいはい!」

「あざす!」





間一髪、

ギリギリで

マスターは見てなかった。



いや、見ないふりかもしれない。








ミカは

カウンターに頬杖をつき、


ニヤニヤしながら俺を見ていた。





この子…


き、危険だ!


死ぬかと思った……!






これは、仕事……!





これは、仕事……!




言い聞かせろ!






マスター

「ミカは、何も食べないのか?」

「ポテトか何か、つまむか?」








ミカ

「ん?どーしよっかな?」

「お腹は空いてるなぁ」











するとミカが

俺とグラスを交換した。







カラン



カラン





グラスの氷が、鳴く。








シン

「えっ」

「間接キ、」




ミカ

「しっ」





ミカが指を立てて、


静かに、とジェスチャー。




ご丁寧に

メニュー表を見るフリして、


メニュー表バリアで隠している。





ミカ

「じゃあアタシは……」

「花言葉のリーフサラダかな。」






マスター

「あいよ。」

「それ、実は季節で変えてんだ。」

「今だと、サネカズラのサラダだ。」




ミカ

「なにそれ?」

「名前可愛いね~」






ミカ…


あまりにも、

隠密作業に慣れすぎている…。





ミカ

「ん……」





ミカは、

マスターに見えないように



さっきまで、

俺が飲んでたグラスにキスをした。




グラスにキスしながら、

俺のほうに目線を送った。





その挑発的な顔に、

俺はすっかり撃ち抜かれた。




美人のこんな表情、

見たことなかったからだ。




そして、

マスターに見えないように

2人は間接キスのまま飲み切った。












ーーー








ミカ

「じゃあ今度……」

「お客としてお店に行くね〜」

「シンさん、楽しみにしてて?」







カウンターの下、

見えない角度で手を握ってくるミカ。







シン

「は、はい……!」







マスター

「あれ?」

「シンお前...」

「今日は呑むペース早いな?」









サラダのドレッシングを、

グルグルかき混ぜながら、


マスターが

空のグラスに気がつく。








シン

「あ、うん……。」











俺は、この日、

沼に片足を突っ込んだ。



大丈夫。


まだ片足だ…。



これは、仕事……だ。


言い聞かせろ。


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