LOG.25|再生|Change the world
俺は、
仕事に命を燃やしてる男だった。
整体の予約は常にパンパン。
口コミは勝手に増える。
金も増える。
その頃は
確かに伸び盛りだった。
仕事の終わりは
だいたい夜23時すぎ。
接客が終わっても、
パソコン業務が山のようにあるんだ…。
そこから、吞みに行く。
実はお酒の席というのは
仕事に繋がるタイミングも多い。
だから俺は、
ワザとたくさん呑みに出ていた。
この日も仕事終わりに、
いつもの店へ向かった。
ーーー
お気に入りのバーがある。
今日もそこへ来た。
カウンターのいつもの席につく。
カウンターの、一番端の席。
マスターが
「今日もお疲れ〜」と
麦焼酎を出した。
俺は、酒は好きだが…
がぶがぶ下品に飲むのは、
あまり好きじゃなかった。
だから、
このバーは俺の性格に合ってた。
今日は…
マスターに相談があって、
店に来た。
シン
「なぁ、マスター。」
「最近インスタ伸ばしたいんだよな〜」
「なんか、モデルの知り合いとかいない?」
マスター
「モデル? 」
「珍しいこと言うなぁ」
シン
「ガチだって。店も伸びてきたし。」
「撮りたいんだよ、インスタで映える動画。」
「で、何万再生もブン回してさ!」
「集客、もっと頑張りたいんだ!」
マスターが少し悩む。
マスター
「モデルなぁ…」
「あ、いるよ!」
「いるいる!」
シン
「おっ」
マスター
「ミカっていう子!」
「俺の親戚なんだけどな!」
「ほれ!じゃじゃん!」
その瞬間だった。
マスターがスマホを取り出し、
画面をこちらに向けた。
そこに写っていたのは、
事務所の宣材写真のミカだった。
おお……!
これは画面映えするぞ…!
再生回数が伸びそうだ…!
そう思った。
それに…
不思議と、
初めて見た気がしなかった。
見慣れたような、感覚。
……初対面だけどな?
マスター
「現役のモデルだぞ!」
「恋愛リアリティショーにも出てたんだよ」
名前も、肩書きも、
俺にとってはどうでもよかった。
そんなことよりも、
早く撮影がしたかった。
俺は内心、燃えていた。
俺は、
ミカのことを、
動画素材として認識していたからだ。
完全に動画制作の
クリエイティブモードだった。
マスター
「ただし条件がある」
マスターが
グイっと前へ身を乗り出す。
マスター
「変に期待して、口説くな。」
「距離を詰めちゃダメだ。」
「ミカの事務所は鬼みたいに厳しい。」
「頼むぞ、シン。」
シン
「あぁ、わかった。」
マスター
「まぁ、でもアレか!」
「お前、仕事の虫だし、」
「ほぼ童貞だしな!」
「心配ご無用か!」
シン
「童貞じゃねぇってば…!」
がはは、と笑いながら
マスターは
ミカにLINEをした。
マスター
「今LINEしてみるからよ!」
シン
「ありがとうマスター」
口説く……か。
まぁ、
俺には無縁な話だな。
俺はまだ、
女をよく知らないし……。
そんな面倒に、
わざわざ踏み込む必要も無い。
女性関係のトラブルは、
成功から最も遠い感情だ…。




