LOG.24|やり直したい|Trauma
2人で寝落ちしてしまい、
急いでフォレストを出た俺達。
帰りの車内でも、
ミカは
少しだけウトウトしていた。
俺は気を利かせて、
ほとんど話しかけなかった。
そして、
ミカを
コインパーキングまで送り届けた。
シン
「ミカ、着いたよ。」
ミカ
「ん…ふぁぁ。」
「ありがと。」
「ごめん、また寝ちゃった。」
シン
「なぁミカ。」
「あのさ…。」
「我慢したから、次も会えるよね?」
ミカ
「え?」
「無理。」
「会えないよ?」
喉が詰まった。
シン
「え?」
そんな俺を無視して
降りる準備を淡々とするミカ。
ミカ
「よいしょ。」
「あれ?」
「ピアスどこやったっけ、」
シン
「ね、ねぇ!ミカ!」
「なんで!?」
「なんで会えないの!?」
「だって俺、ガマンしたじゃん!」
ミカは笑う。
ミカ
「…あのさぁ。」
「彼氏いるって言ったでしょ。」
「我慢できなかったら会わない」
「…って言っただけで、」
「我慢したら会ってあげる」
「…なんて一言も言ってないよ?」
嬉しそうな、ミカ。
ミカ史上、
一番嬉しそうに見えた。
興奮して、息が荒いミカ。
ミカ
「…はぁっ!」
「可哀想ね、わんちゃん。」
「はぁ……っ!」
「今度こそ、ほんとのサヨナラだよ。」
両手で俺の頬を包むミカ。
ミカは息を荒くして、
顔を真っ赤にしながら、
続きを喋りだした。
ミカ
「ぜーったい忘れないでね?」
「ミカのキスも、ハグも、セックスも。」
「他の女と会うたびに思い出して?」
「はぁっ…!」
「でもミカはすぐ忘れるからね?」
「アンタのこと明日には忘れてる。」
「はぁっ…!」
「でもアンタは思い出して?」
「何回も、何回も、思い出して?」
「ミカを、一生トラウマにして?」
シン
「え、え、え」
ミカ
「”わん”は!?」
「お返事は!?」
シン
「…………」
ミカ…そんなに嬉しいのかな…。
俺が、苦しむのが。
シン
「…わん」
人の心を壊すのが
何よりも快感そうな表情だった。
そして、
ほんの一瞬、唇が触れる。
ミカ
「いい子ね。」
「ありがと、最高に興奮した。」
「じゃ、元気でね!」
絶望してる俺の頭を
くしゃくしゃと雑に撫で、
ひょいっと車から降り、
満足そうに、てててっと帰るミカ。
その姿は、
愛おしくて、残酷、だった。
俺は…
1時間ほどパーキングにいた。
動けなかった。
そして俺は、
白い部屋の中へ飛び込んだ。
この白い部屋は
俺がいつも逃げる場所。
誰もいないし、何もない空間。
俺だけの、世界。
その部屋の中で、
俺は体育座りになって丸まった。
この白い部屋で丸くなるのは、
居心地はいい。
けれど、ここには何も無い。
ミカがいない世界には
彩りが無い。
はぁ。
ミカは今どこで、
何をしているだろう。
今頃、
新しい犬でも探してるのかな。
もしくは…
彼氏と結婚が進んでる…とか?
ミカが今、
幸せ、なのか
不幸、なのか
ミカが何を考えていたのか、
何も分からない。
濃厚な数ヶ月は
こんなにもあっさりと、
一瞬で消えて無くなってしまった。
でも、少し心臓が落ち着いた。
俺は
白い部屋から出た。
それと同時に
駐車場の映像が目に入ってきた。
自分が車の中にいたことを思い出した。
何時間、車にいたんだろう…
白い部屋にいると、
時間感覚が全く分からない。
キュキュキュキュ
ブゥン!
エンジンをかける。
とりあえず、車を走らせる。
すると、
ふとフォレストが目に入った。
フォレストの看板を見ると、
今でも鼓動が一気に早くなる。
ミカの首を絞めた感触が、
鮮明に、よみがえる。
手がミカの喉元を求めて、
握力が こもる。
ミカの、首を、絞めたい。
後遺症だ。
…運転をしながら、
ぼーっと考えてみる。
俺は、あの日…
最初のフォレストで、
4時間我慢していれば、
普通に生きられたのかもしれない。
最初の夜、俺は負けた。
今回こそは耐えた。
それでも、ダメだった。
なら、間違えたのは、
やっぱり最初の4時間だったんだ。
欲は、身を亡ぼす。
もし俺が、
理性を守れる人間だったら…
ハッピーエンド、だったはずだ。
そんな世界線があるなら、
是非ともコンテニューしたい。
…おしかったな。
次は上手くやれるはずだ。
こんな人生で、マトモは、無理。
やり直したい。




