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不倫の神様  作者: 天狗
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19/69

LOG.19|灯台下暗し|Gossip









2号機に結婚をせがまれたので、


緊急回避システムを発動することにした。







シン

「ごめん。」

「俺…結婚するんだ。」








2号機の顔が止まる。








2号機

「誰と……?」

「意味わかんないんだけど…」









ここで強烈な嘘を置く。


くらえ!

はかいこうせん!






シン

「ま、厳密に言うと結婚というか」

「実家に帰るんだ」

「俺、母さんが好きなんだ。」

「女として。」







沈黙。


呼吸さえ忘れた顔。


こうかは、ばつぐんだ!









シン

「60歳手前で親父が再婚してさ」

「そしたら嫁が30歳で!」

「歳が近い母さんが誕生したんだ」

「惚れちゃってさ、俺」

「だから…」

「実家に帰って口説こうと思う。」






完全沈黙。


動揺の気配だけが空気に残る。





もちろん、最初から嘘だ。


親父は再婚なんてしてない。


もっと言えば、

親父に会ってすらいないので

親父の生存確認すら危うい。









そしてさらに、

そこに優しさの形を被せる。








シン

「なぁ2号機。」

「何か困ったらいつでも頼ってね。」

「失ったんじゃない。」

「元の生活に戻るだけだ。」

「生きてりゃまた誰かに出会うさ。」






2号機の目から

涙が消えて、


完全に

ドン引きの顔になっていた。



大成功。








2号機

「……うん。」

「わかった。」

「ありがとう。シン。」








そうそう。やめとけ。


再婚した親父の嫁を狙うような、

キモすぎる俺と結婚なんて、

したくないよなぁ?





最後まで綺麗な別れ。


さすが、

”不倫の神様”。


誰も傷つけない。






俺が神だ。


バカが、二度と逆らうな。







そして俺は微笑んで返した。






シン

「こっちこそ、ありがとう。」

「3号機にも、伝えるね。」

「俺から説明しておくよ。」

「また、どっかでな。」






そして2号機は帰った。





この瞬間、

2号機と3号機を

同時に失った。






ーーー





この手の緊急回避には、

保険も撒いてある。




住宅街の噂は、

だいたい二つの店に集まる。


マスターのバーと、定食屋だ。


マスターは口が堅い。




だが定食屋のオバチャンは違う。


口が軽く、噂話が大好物だ。


だから俺は、

そこに先に餌を撒いておいた。


週に何度も通って、

「この辺に変な噂を流すヤツがいる」

と刷り込み続けた。







つ、ま、り




もし万が一にも、

ミカレプリカ達が

今回のような緊急回避後に

復讐の意味で噂を撒いても、




少なくとも住宅街の中では、

大きな傷にはならないはずだ。




俺の店は

住宅街のお客様がメインなので


この作業のおかげで

最低限の安心感はある。



たかが自分の神様ごっこで、

お客様に迷惑をかけるわけにいかない。







完璧防壁ではないが、


やらないよりはマシだ。


神様でも、運には頼らない。









全ては順調、準備も完璧。








…のはずだったが、




灯台もと暗し。


根本からトラブルは発生した。





こんな防壁システムに

時間をかなり使っていたことを、


俺は心から後悔した。



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