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不倫の神様  作者: 天狗
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17/70

LOG.17|愛の、かたち|Boyfriend




4号機と不倫中に、

旦那が乗り込んできた……。




バンッ!


4号機の旦那が

今度は椅子を蹴っ飛ばした。





4号機の旦那

「オラァ!」












ほんの一瞬、

パニックになったが…


俺は人より

修羅場経験値が高い。



ふつうの男なら固まるところで、


むしろ、

どう逃げてやろうかと、

冷静に組み立て始めていた。



しかしそれ以上に、

4号機の動揺がゼロだった。








4号機

「どうしたの?」

「その怖い顔?」









笑っている。


この余裕を見た瞬間、

俺は悟った。




4号機…


お前を選んで

やっぱり正解だったよ。






バカと不倫すると修羅場で詰む。


だが4号機は違う。



頭がキレる。

動きが早い。

演技ができる。

サイコパスで嘘つき。








お前は、俺に似ている。










4号機の旦那

「どうしたの、じゃねぇんだよ!」

「また浮気しただろ!」

「全部知ってんだぞ!」

「こいつとやってんだろ!」






また。って…


常習犯かい……。





にしても…

旦那の見た目…。


スウェットで、

サンダルで、

坊主にグラサン…か。



チンピラのお手本だな。






じゃあ、短気だな、確実に。


怒らせて罠にかけるか?


なんか良い感じの嘘ないかなぁ…


どーしよっかなぁ…





と考えている間、


4号機が

椅子に座って足をパタパタし始めた。






あ。





緊急回避システム、

発動の合図。







俺が作って、

4号機に叩き込んだ…


何かあった時用の脱出ポッド。






本当は、

こんな安い修羅場で

使ってほしくなかった。




だが……


まぁ、しゃあない。


やるか。








4号機

「違うわよ、バーカ」

「ウチとこいつはなんもないから」







完璧な第一声。


4号機がスイッチ入ったのを見て、

俺も演技に入る。







シン

「す、すみません……」

「アタシ、帰ります……」








4号機の旦那

「待てチビ、コノヤローッ!」






胸ぐらを掴まれた瞬間、

俺は叫んだ。







シン

「ま、待ってください!」

「アタシ、恋愛対象じゃないです!」







旦那が固まる。






4号機の旦那

「アタシ…?」

「お前……?」








シン

「アタシ…」

「彼氏、いるので。」








4号機の旦那

「……は?」

「嘘ついてんじゃ、」





4号機

「ホントよ」

「この人、彼氏の惚気しか言わないの」

「マジでウザかった」








完璧。

アドリブ力が高すぎる。




4号機の旦那

「ふ、ふざけんな!」

「嘘ついてんじゃ、」





シン

「これ、彼氏です」




俺はスマホを向けた。


経営者交流会で撮った、

普通のツーショット。




…こんな時、


もし俺に親友がいて、

ソイツとのツーショットでもあれば、

もっとリアルに誤魔化せるんだろうな。





交流会の写真で…いけるか?






4号機の旦那

「……あ、そうなの……」

「いや別に…見せなくても…」

「なんか、悪かったな……」






いけた。




俺の胸ぐらから

旦那の手が離れる。






バカが。


二度と逆らうな。










4号機は

俺に畳み掛ける。




4号機

「つーかお前さ」

「ウチが付き合いで……」

「整体行ってあげてるのよ?」

「なのにお前…」

「気持ち悪い惚気ばっかで」

「全っ然揉んでくれねえの!」

「気持ち悪いの!」

「わかる!?」






4号機の旦那

「……そんな言わなくても」

「可哀想じゃないか…?」







旦那のほうが

気迫に押されて小声になる。







シン

「…ごめん。」








4号機の旦那

「………っ。」







4号機

「ごめんじゃねーよ変態!」






4号機がブチギレついでに

スマホを床に投げた。


棚の角に当たり、

見事に画面が割れた。



自分で証拠を隠滅した。


これも、脱出ポッドの一部。








4号機

「…ふぅ〜スッキリ!」

「あなたのおかげで本音言えた♡」

「だから浮気じゃないの♡」

「ね?焼肉行こ♡」






旦那は腕を引かれるまま、

尻すぼみになる。






4号機

「早く帰れ!」

「しっしっ!」






帰るタイミングも調整してくれる。


4号機、お前は天才だ。






シン

「……じゃあ、帰ります」





泣きそうな顔の演技のコツは、

すっぱい時の顔。







外に出た瞬間、

4号機の旦那が駆け寄ってきた。






4号機の旦那

「さっきはすまなかった!」

「本当に悪かった!」

「少年、気をつけて帰ってね…!」

「ごめん…!」






深々と

頭を下げるチンピラ。


俺は軽く頭を下げて、

美容室を離れた。








ーーー









見たか。




100%負けからスタートしたのに、


最後には相手に謝らせ、


不倫は、誤解として処理され、


俺は無傷で帰宅した。






まさしく、


”不倫の神様”












外に出た瞬間、

俺は笑いそうになった。




緊急回避システム、大成功!


バカが、二度と逆らうな!









4号機を失ったのは想定外だ…。




でも、


俺にはまだ、

2号機と3号機がいる。



まぁ、問題ない。


まだ、退屈しない。




これからも、

”不倫の神様”に磨きをかけていくぜ。




関わる人、全員、地獄へご招待。


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