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不倫の神様  作者: 天狗
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16/69

LOG.16|修羅場の神様|Hong Kong






4号機との出会いは、

事故じゃない。


流れの産物だった。




きっかけは

2号機が通っていた美容室。




2号機から紹介してもらって、


一度行ったら気に入って、

そこから通うようになった。






ーーー






その美容室で俺はいつも、

髪を茶髪に染めてもらっていた。


仕事がパンパンすぎて

日中は時間が作れない。



だから、特別に

夜の21時からで髪を染めてもらっていた。




4号機は雇われの美容師なのに、

そんなワガママに付き合ってくれる、

珍しく融通の効く女だった。







身長は160くらい。

顔はカワウソっぽい可愛さ。

金と黒が混ざったショートボブ。



そして、たわわ。


特に深い意味はないが、

アルファベットで言うと F だ。


うむ。



まさしく、たわわ、である。


普通に土下座したい。






ーーー







髪を染めながら、


どうでもいいことを

他愛もなく喋っていたある日、

ふと酒の話になった。



俺は反射で、

いつものクセで口走った。






シン

「オススメのバーがあるんすよ」

「バーなのに、コロッケがさ…!」

「やたら美味いんだよ!マジで!」






言った瞬間、胸がズキッとした。




あぁ、そうだ。


しばらく行ってない。


マスターの顔、

見るのが気まずい。






まぁ、

オススメだけして終わるつもりだった。


普通は、そうなる。



だが…

4号機は、普通じゃなかった。






4号機

「え、いいじゃん。」

「行こーよ今度、一緒に!」






軽い。

軽すぎる。


一応、

理性の残りカスで抵抗してみる。







シン

「いやいや…」

「既婚者じゃないですか」






4号機は、

ケラケラ笑いながら返してきた。






4号機

「なんで?呑むくらいダメ?」

「変なことする気なの?」

「てか旦那、今香港だよ?」








シン

「香港?」








4号機

「うん。海外出張」

「2ヶ月戻ってこないの」

「だから大丈夫。」

「心配かけないよ、旦那には。」







その一言で、俺の中で、

カチッと何かが噛み合った。






シン

「……行きますか」






これは仕方ない。


旦那が香港の、たわわ。


断れる男のほうが、レアだと思う。










ーーー









数日後の夜。


俺たちはマスターの店へ。


カランコロン、とドアを開ける。






マスター

「いらっしゃ、」

「あ!」






シン

「マスター!」

「久しぶり…!」






久しぶりに、

自分の特等席に座る。



カウンターの、一番端の席。


ミカと出会ったのも、ここだった。






マスター

「おう!待ってたぞ!」

「元気そうで良かったよ!」

「いつもの、でいいのか?」






さすがマスター。


撮影どうだった、とも

ミカについても何も聞かない。


まぁ、当たり前だよな。


ミカ以外の女を連れてきて、

ミカの話なんか出来るわけがない。





そして……

この席に座ると、


ミカ元気かなぁ…と

ふと思ってしまう…。







シン

「いつもの麦焼酎で。」










4号機

「じゃあ私はハイボールで」








グラスが並び、氷が鳴る。



どうでもいい会話で笑って、

酒が進んで、

店を出た、

そのあとだった。








4号機

「今日さ」

「実家に子ども預けてきちゃった」

「まさかウチのこと…」

「大人しく帰宅させないよね?」






シン

「俺、帰したいなんて言ったか?」







この頃の俺はもう、

ミカ様に鍛えられすぎていた。


そこらの女の軽い誘惑じゃ、

動じなくなっていた。





そのまま、

流れるようにホテルへ。


今回は “たわわ” なので、

一番高い部屋を選んだ。







ーーー








部屋に入るなり、

酔いの勢いも混ざって、

空気が一気に変わった。





距離が詰まるのに

さほど時間はかからなかった。





そして、

例の首絞めを、

4号機にも与えた。






4号機

「……っ、なにこれ……」

「やば……ゲホ…」








最初は戸惑い半分、好奇心半分。




けれど一線を越えた瞬間、

4号機はあっさりと、

その快感に落ちていった。








ミカ様。


あなたの弟子は、


また一人、

地獄へ落としました。







そこから4号機とは…



「旦那が香港にいる2ヶ月だけ」

という条件で、


愛人契約、みたいな関係になった。






定期的に会う約束をして、

ホテルの日程まで決めてしまった。




一応、2号機にも報告した。






シン

「そういえばさ、」

「この前、こういう流れでさ…」






2号機

「セヴァンスターの件も含めて…」

「全部ナイショね?」

「会うなら別日ね」

「普通に恥ずかしいから」








…そりゃそうだ。










その一言で、

完全に住み分けルールが決まった。






シフト分担は完璧だった。


ごっちゃにならないように

Excelでシフト表を作って管理した。






ーーー







それから約1ヶ月後。


いつものように、

夜の21時から

4号機に髪を染めてもらっていた。






4号機

「ねぇ……」

「この店で、してみたい」






また…

面倒なことを言い出したな。




とはいえ、

空気に飲まれる形で、


俺たちは美容室の

監視カメラの死角へ移動した。



シャンプー台の影。

カウンターからも見えない位置。





4号機は上着を脱ぐと、

くるりと振り返って笑った。








4号機

「ね?誰も来ないよ?」

「ほら、早く…」








その瞬間だけは、


確かに、

この世界には俺たちしかいない。


そんなように思えた。







が、






その時だった。







バンッ!







ありえない勢いで、扉が開いた。






「オラァ!何してんだよ!」






突然店に入ってきたチンピラ。


反射で、

心臓が耳の裏まで跳ね上がる。





4号機

「あ、あなた…!」




旦那かよ。




香港って、どこだよ。







愛人契約の終わりが、

突然やってきた。









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