LOG.13|そんな顔しないで|Not Alone.
ピリリリリリ
俺のスマホが鳴る。
それは…
ミカの事務所の番号だった。
シン
「……もしもし」
事務所
『あ、出ました』
誰かに電話口が変わる。
事務所
『よう、ちっといいかな。』
『お前さぁ、うちのモデル…』
『連れ回してねぇよな?』
ん?
撮影のクルーとは別な人なのか、
怒りで口調が変わってるのか。
随分ガラ悪いな……。
シン
「…連れ回してません。」
めっちゃ、嘘。
でも、
それ以外の言葉が出てこなかった。
事務所
『そうか。言ったな?』
『今、言ったかんな?』
『テメークソガキ、コノヤロー』
シン
『……』
事務所
『 …まぁ、だったら、』
『そういうことにしといてやるよ』
『ただ…お前よぉ、』
『メイは大事な商品だからな?』
『見張ってるからな、ガキ』
通話が切れる。
ミカは、
助手席から
外を眺めて黙ったまま。
車内は、
外の工事の音だけが響いていた。
ガツーン… ガツーン…
ガガガガ…
しばらく工事の音を聞いた後、
ミカがぽつりと言った。
ミカ
「……シン」
シン
「ん?」
ミカ
「帰りたくない」
「ミカ、独りはイヤ。」
どこか、
疲れているような声だった。
ミカ
「お願い。どっか行こ」
シン
「どっか…って?」
ミカが振り向き、
俺の腕をぐしゃっと掴んだ。
ミカ
「…くっつけるところ。」
「早く。お願い。」
ミカ。
頼むから、
そんな顔しないでくれ。
笑ってくれ。
その顔を見た瞬間、
俺はハンドルを切っていた。
行き先は、
もう決まっていた。
フォレスト。
ーーー
フォレストの部屋に入ると、
ミカはベッドにダイブした。
ミカ
「はぁ~…」
「ここ、落ち着くねぇ……」
ごろごろ転がりながら、
俺と目を合わせず、ミカは言った。
ミカ
「ねぇシン。」
「アタシがどっかいっても…」
「嫌いにならない?」
シン
「ならないよ。」
ミカ
「アタシのこと忘れない?」
シン
「忘れない。」
ミカは、
その言葉を飲み込むみたいに
ゆっくりと、目を閉じた。
ーーー
首を絞めて、心も、身体も、
ひとつになった。
結局、
その日は泊まらずに、
22時くらいにホテルを出た。
駐車場で別れるとき、
ミカは窓越しに手を振った。
ミカ
「バイバイ、シン」
さっきまでと、
同じトーンのはずなのに、
なぜか急に遠く聞こえた。
ーーー
家に帰り、
シャワーを浴びて、
ベッドに倒れ込んだとき。
スマホが震えた。
ミカからのLINEだった。
ミカ
『彼氏できたから会えません』
『LINEも電話も全部消します』
え?
彼氏いらないって言ってたじゃん。
彼氏じゃなくて
犬が欲しいって言ってたじゃん。
何がどうなって、
急に「彼氏できた」になるんだよ。
…でも。
数分時間が経って、
落ち着いて思考したら、
なんとなく分かってきた気がした。
多分…
俺以外にも、犬は、いる。
…のかもしれない。
「彼氏できたからもう会えません」
「全部消します」
それはミカが…
首輪を外すときの
決まり文句なのかもしれない。
やっぱり、
不器用なヤツだな。
1人は好きだ。
でも、独りは、嫌だ。
独りは嫌だ。
独りは嫌だ。
独りは嫌だ。
でも、
ミカがいないのは、
もっと嫌。
もっと嫌。
絶対に嫌。
だから俺は、
少しでも楽になる為に、
ミカの代用品を探すことにした。




