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269  作者: Nora_
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07

「はい――あ、ゆまさん」

「一緒に課題でもしない?」

「分かった」


 勉強をやるならりととやるのが一番集中できる。

 既に夏休みになっていて本当なら休みたいところだが、だからといってこればかりは後回しにしていいことではない。

 もっとも、後回しにしすぎて両親とかに泣きつくことになった~とかは一度もないとしてもだ。


「いま、りよともこは遊びにいっているのよ」

「あ、起きたときにはもういなかったけどそうだったんだ」

「あんたに言いそうなものなのに最近のもこはおかしいわ」


 この前言われたことをそのまま返したい件だった。

 あと、あの子もいるみたいだから最後まで上手くやれればいいと思っている。

 でもなあ、りよがいると黙ってしまいそうだなあ。


「僕達も一時間ぐらいやったらどこかにいく?」

「そうね……買い物とかいいわよね」

「はは、ゆまさんのそれは食料品を集めるためのお買い物だよね」

「そうよ、他に特に欲しい物とかはないからね」

「もしスーパーにいくなら今日こそ持たせてもらうからね」


 任せない任せない、なんたって今回は全て自分達のためだからだ。

 それに、まずは目の前のこれをなんとかしないと。

 後の自分が楽になる、そう考えておけば集中できる。

 難しいところばかりというわけではなくて助かった、いちいち聞くことになっていたら効率が悪すぎる。

 そこまで集中力があるわけではないから一日の内の一時間か二時間を使ってなんとかしなければならないことも影響していた。


「こういう時間、好きだなあ」


 私はやらなければならないからやっているだけで好きとまでは言えない。

 でも、彼みたいに勉強自体が好きになれたらいまの数倍は集中できるのかもしれない。

 もっとも、私は一人でダラダラする時間が欲しいし、勉強ばかりしているよりも誰かといたいタイプでもあるから一生そうなることはないが。


「あんた勉強するのが大好きだもんね」

「二人とか三人だと集中力が落ちてしまいそうなのにそんなこともないんだ、寧ろ目の前でゆまさんみたいに頑張ってくれていたらやる気が出るぐらいだよ」


 まあ、彼にもなにかしらのメリットがなければいけないからいいか。

 追加で四十五分ぐらい頑張ったところでやめた。

 初めてというわけではないものの、これで三回目ぐらいだから色々なところを見ていると「あんまり見られると恥ずかしいかな」と言われてやめる。


「あんたの部屋も奇麗ね」

「一応、毎日掃除しているからね」

「それに、いい匂いがするし」

「それならよかった、男臭いとか言われたら嫌だからね」


 もこ曰く「みんな同じシャンプー、そして同じボディーソープ」らしいのでそれも影響しているのかもしれない。

 だからあとは目つきをなんとかすれば興味を持ってくれる人が増えるかも? というところで。


「よく入れてくれたわね?」

「はは、もうここに入ってから一時間以上経過しているのに面白いことを言うね」

「そろそろいい加減、あの女の人達を誘いなさいよ」


 相手が動いてくれる前提でいるのは間違っている。


「うーん、お家に来てもらうほどではないかなあ」

「なによそれ……ならせめて男の子の友達でも誘えばいいじゃない」

「部活動に所属しているからねえ」


 こ、これ以上はやめておくか、休みにストレスを溜めるべきではない。

 別にどこでも構わないので寝転んでダラダラしていると困ったような顔をしている彼が。


「あんた、本当に集中できてんの?」

「ゆまさんが無防備すぎて集中できないよ……」

「別にスカートとかじゃないんだから関係ないでしょ」


 あら、こっちを見たまま黙ってしまった。

 このことでからかいたいわけでもないからお互いに黙ったまま数分が経過、そうしたらトントンと階段を上がってくる音が聞こえてきて入口近くにいたのをいいことに開けてみた結果、


「お部屋で二人でこそこそと、怪しい」


 もはや安心できてしまうぐらいの無表情娘、もこがそこにいた。


「もこ、あの子はどうだった?」

「みこは終始暗い表情だった」

「りよが少し怖い状態だから仕方がないのかもね」


 普通に友達として上手くやってもらいたいところだ。

 嫌いではなくて邪魔だと言われただけだから私よりは可能性があるだろう。


「それがりよは凄く柔らかい態度だった」


 じゃあ……なにか他に気になることがあるということ――ではなくて、それは好きなもこといられているからではないだろうか?

 しっかり把握するためには参加することが一番でも、せっかく遊びにいくというところで嫌な対象がいたら盛り下げてしまう。

 それで疲れることになるのは参加メンバーの内の他の子だ、どうしたものか……。


「今度りとを連れていってみるか」

「ん、お兄ちゃんならなんとかできそう」

「あ、あんまり過度な期待はしないでね」


 まずはそこからだ。

 なんとかならなかったらこそこそ尾行でもするしかなかった。




「はい――」


 え……尾行する前に変なことが起きた。


「い、いま大丈夫でしたか……?」

「ああ、うん、暇人だから」

「それなら中で……」


 もこっ、りとっ……は頼ったらまた駄目になるよなあ。

 りよはいま他の友達を優先していていない、母もいないから一人で頑張るしかない。


「はい」

「ありがとうございます」


 いや待て、結んでいるの可愛いな。

 夏で暑いからだろうが、なんか得した気分になった。

 私の方からうざ絡みしているわけではないのも大きい。

 ここは私の家だ、堂々としておけばいい。


「あの、この前はす――」

「そうだ、これ食べられる?」


 偶然ではなくてこれはわざとだ、私は別に謝罪をしてもらいたいわけではない。

 謝罪ができなくてスッキリしないということでも「大嫌い」と言ったぐらいだからそこは我慢してもらいたい。

 聖人というわけではないからこんなものだ。


「はい」

「りよが買ってきたんだけど量がありすぎてね、食べて食べて」


 んーなんか物足りない。

 後輩ちゃんは私に厳しいぐらいでいいのに。

 別にもこに対してだけ頑張れとか言うつもりはないが、こんなことに時間を使うのはもったいない。

 だって初めての夏休みだ、普通はもっとキラキラしていなければ駄目なのだ。


「えっと、後輩ちゃんは一緒にいたい相手とかいないの?」

「……みこでいいですよ」


 なんだなんだ、もことかりよになにか言われたのか……?

 離れたことで冷静になれたということでもそれだとあまりにも遅すぎる。


「じゃあみこ、誰かいないの?」

「先輩……ですかね」


 ぶ……いいのか本当に。

 このまま乗っかって甘えてしまったら最低……とか言われないか?

 あっ、これはまた試されているのだっ、そうとしか考えられない!


「みこって夏にはプールとか海までいくタイプ?」

「そうですね、お友達とはよくいっていました」

「じゃあ、もことりとでも誘っていく?」

「あの人だけ仲間外れにするというのは……」


 あー……「なんで誘ってくれなかったんですか!」と言われそうではある。

 どうしたものかと悩んでいると「先輩とお出かけしたいと思います」と。

 それならとメッセージを送ってみることにした。

 これで『大丈夫です』などと返ってくればそわそわすることもなくな、


「私も参加するのでお家で待っていてください!」


 った。

 結果はこれだ、連絡してよかった。


「みこはナイスね」

「私がされたくないというだけです」


 これが一番嬉しいかもしれない。

 自分とではなくて周りが仲良く楽しそうにやれていたら幸せな気持ちになれるから。


「ただいまです!」

「おかえり」


 ああ、汗だくだ……。


「さあっ、プールと海っ、どっちにしますか!?」

「みこ、どっちが――」

「みこぉぉおおお!?」

「ああ、それでいいって言われてね」

「だったら私も――は、もう既に名前で呼んでもらっていました、てへ」


 こ、こっちもどうした……はいいからさっさといくか。

 遊ばせておけば細かく突かれることはなくなる、それに、このことでハイテンションになられても教えられることはもう教えてしまった。


「もこー」


 追加でガラガラと窓が開けられて「下からなんて珍しい」と言われたが、私は横着して二階から話しかけるなんてしないから首を振った。


「いまからプールか海にいきましょ、りとも誘ってきて」

「いく、待ってて」


 もこは放課後はすぐに帰ったりするのに誘えばこうしてすぐに受け入れてくれるところが可愛くて好きだ。

 だから後輩組二人がもこといたくなってしまっても自然すぎて嫌だという気持ちが出てこない。


「お待たせ」

「うん、いきましょ?」


 四人が楽しそうに話しているところを見ながら歩く予定だったのに私の隣にはもこがいた。


「みこになにか言ったの?」

「みこぉぉおおお?」

「りよの声、聞こえていたのね……」


 真似をするならもう少しぐらい声量を上げてほしいところだ……。

 あと、会話が筒抜けになっていそうで気を付けなければならなさそうでもある。


「ん、僕達のお家は防音性能は低いかもしれない。ちなみに、みこにはなにも言ってない、だから今日ゆまのお家にいったのはみこの意思」

「なんか落ち着かないのよね、私にはツンツンしているぐらいでよくない?」

「仲良くできた方がいいと思う」

「いやまあ、それはそうだけど……」


 ダメージを受けるぐらいのくせになにを言っているのかとツッコまれてしまうか。


「でも、みこやりよばかりと仲良くするのは駄目、一日の内の数時間は僕を優先するべき」

「はは、だったらもっと来てくれないとねえ」


 これぐらいは……いいわよね? 独占にはあたらないはず。

 遠慮するな遠慮するなと言っているくせに自分が一番していたらアホらしい。


「いいの?」

「前にもこんなやり取りしなかった? 私を暇人にしないためにも頼むわよ」

「夏休み前は遠慮していた、お菓子とかアイスでなんとかしていた」

「え、なんで?」


 そこで黙るんかーい。

 二人きりになったらちゃんと吐かせておかないとな。

 それこそ、もこがそんなことをするなんておかしくて仕方がないから。


「プールも好き」

「もこさんを私が運んであげます」

「多分、注意されてしまうんじゃないかな」

「あ、確かに……それなら普通に歩きます」

「うん、ルールを守ってみんなで楽しもう」


 お兄ちゃんと言うよりもお父さんのように見える。

 それに、そうでもないといまのこの状態はりとのハーレムだ。

 可愛い後輩組二人と、無表情でもいつも合わせてくれる可愛い妹。

 じゃあ、私は……? 観客かなんかでいいか。


「ゆま、どう?」

「あら、いいじゃない」


 去年と違う水着だ、三人で遊びにいったときに買ったのだろうか?

 というか、去年はまだ出会ったばかりだったのによくプールなんかにいったな私達。


「ゆまさん私もっ」


 うわ……白色の水着とかよく選んだなあ。

 だが、似合っているから似合っていると言うしかない。

 正直、胸まででかくなくて本当によかった、そこまででかかったら普段は気にしない私でもくっ、となっていたかも。


「みこはどう?」

「みこも似合っているわ」

「……ありがとうございます」


 え、いや、え……?

 もこみたいな小さな体にそれはいかんでしょ……。

 え、いやマジでなんで? 制服を着ているときは全然目立っていなかったのにと大混乱。


「みんな揃ったね、準備運動をして入ろうか」

「ん」「「はい」」


 りともりとだ、何故ここまで普通でいられるのか。

 側までいってじっと見てみても「なにかついているかな?」とあくまで普通だった。

 若い女の子では反応しなくなってしまったとか……?

 あと、地味に筋肉質で……目のやり場に困るぐらい。


「入る」

「私もいきますっ、みこさんもいきましょう!」

「ひ、引っ張らないでっ」


 な、なんだこの子達は……。

 追いつけない普通以下の私は距離を作って歩いておくことにした。

 流石に入らないという選択はできなかった、お金だって払っているからケチ臭い内側の私が「楽しんでおけ!」と叫んでいるからだ。


「追いついた」

「はや……後半、眠たくならないようにゆっくり楽しみなさい」

「こうすれば自然と二人だけ」

「だからってりよとみこを置いてくるのはねえ……りとは男の子だからいいけど」

「この方がゆま的にもいいと思った」


 正解……なのがなんとも言えないところだ。

 でも、このペースならすぐに追いつかれてみんなで集まることになる。

 人が結構いて泳げないからこうなるのは仕方がないが。


「さっきみこのことガン見してた」

「ああ、もこは気にならなかったの?」

「想像以上に大きかった……あの点だけは仲間ではなかった……」

「でしょ?」


 きたか。

 あんまり近くで激しく動かないでもらいたいところだ。


「さ、先にいかないでくださいよ」

「ごめん。ゆま、りよと歩くから」


 え、ちょ、裏切り者!


「先輩」

「な、なに?」

「それ、いつ買った水着なんですか?」

「中学生のときに買った物よ」


 つまり、サイズ変更が必要になるような成長はできなかったということだ。

 まあでも、こうして元気に生きられているのならいいか。

 後輩の胸がでかかったからってなんだ、気にする必要はない。


「わっ」


 や、柔らかぁ……。


「す、すみませんっ」

「人が多いから仕方がないわよ、大丈夫?」

「はい、それは大丈夫です」


 とは言いつつ腕をガシッと掴んできたのでそのまま歩くことに。

 りとが全くやって来ないことが気になるが、逆走するわけにもいかないからあくまで流れに従った。


「あんたなにやってんのよ?」

「ははは……」


 一周したところでりとを発見。


「休んでいないでいくわよ」

「あーいまはちょっと……」

「はあ? まだなにも遊んでいないじゃない」

「ごめん、いまは動けないんだ」


 こんなに抵抗するりとは初めてだ。

 気になるのは気になるから上がって近くにいることにした。


「あ、みこは自由に遊んでいいわよ」

「それなら私もここにいます」

「そう? じゃあ、りとが言うことを聞くまで粘りましょ」


 顔を見てみたらさっと違うところを見られて意地を張りたくなった自分、だが、少し冷静になってくるとなんか分かってきたような気がした。

 つまり、影響を受けていたということなのだ。

 あくまで先程の態度は冷静なフリをしていたというだけ、だからこのままここにいるとそれこそ大変なことになると。

 しかも、みこがここにいることが一番最悪だった。


「飲み物でも買ってきてあげるわ。みこ、付き合って」

「はい」

「あ、ありがとう」


 まあ、男の子だから仕方がない。

 寧ろここで私以外だけに「可愛いね」とか「似合っているね」とか言いまくっているよりは遥かにマシだった。

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