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269  作者: Nora_
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05

「ふふふ」

「ど、どうしたの?」


 結構早い時間に目が覚めて一階にいってみたらこれだった。

 りよにされても怖いのに母、とよさんにされるともっと怖い。


「りよと上手くやれているみたいだからそろそろ私かなって」

「お父さんとはどうなの?」

「え、それを聞いちゃうの?」


 そりゃまあ、離婚とかされても困るし。

 いつか私も引っ越す側になってしまうかもしれないからきっかけができないようにしたいのだ。


「今度、お休みの日になったらお出かけする約束をしているよ」

「あ、答えてくれるんだ」

「隠すようなことではないからね」


 再婚となるとなんか恋する人達と変わらない気がする。


「会っているとき、よくゆまちゃんの話をしてくれていたんだ。家事をよくしてくれている~とか元気で生きてくれればそれでいい~とか」

「お母さんと仲を深めなければいけないときにそれってどうなの?」


 前の人との間にできた子どもということで気にする人は気にするだろうに。

 どこかズレてしまっているのかもしれない、でも、母には効いたのかも……?。

 いやほら、中にはがっついていないところを高く評価する人がいるからだ。


「でも、お父さん経由でもゆまちゃんのことを知ることでりよと上手くやれるのかどうかがある程度分かるからね、ありがたかったよ」

「それだとただの親馬鹿だったら困っていたじゃない……」


 というか、いつも無表情タイプで表に出していくことはないのに意外だ。


「んー話すのにも苦労する子ではなければなんとかなるから。それに、ゆまちゃんがそういう子なら仲良くなれたときにより達成感を得られると思わない?」

「私は家族とぐらいは苦労せずにいたいわ」

「はは、それが一番だけどさ」


 椅子に座りながらでもキッチンで頑張ろうとしている母とは話せるのがいい。

 最近はこれが当たり前になった、前までなら朝ご飯ができるまで待つなんてしてこなかったからなんか不思議な気分になる。


「最初はあの人のときもこうだったのよ」

「産んでくれたお母さんのことか」

「うん。だけどいつからか会話をすることも減って」


 それが当たり前になって、こちらから求めることもなくなった。

 とはいえ、父とペラペラ話しまくっていたというわけでもないが。


「一時期、りよも話してくれないときがあってね。ご飯とかは作っておけばちゃんと食べてくれるんだけど、なんとも寂しい時間が続いたよ」

「それならいまのりよは装っているだけということ?」

「ん-どうだろう――あ、だけど最近は学校での話とかお友達との話とかをまたしてくれるようになって嬉しいかな」


 普段、見ていられないからこそそういう話は聞きたいよなあ。

 私はしてこなかったが、父も本当は気にしていたのだろうか?

 でも、今更変えるのもあれだから私の方はずっとこのままだと思う。


「おふぁよう……」

「おはよう」「おはようりよ」

「あれ……? ゆまさんがいるなんて最初の頃に戻ったみたい」

「まだ一ヵ月も経過していないけどね」


 今日も雨で出かけたい気分にはならない。

 できることは部屋の掃除ぐらいか、テストが近くなければ勉強とかも柄ではないし。

 途中、父も下りてきてここだけは賑やかな場所になった。

 会話がゼロだったわけではないとしても食事中は静かだったからこの変化はいいことかな、と。


「ふぅ」


 いや、それでも部屋は落ち着くものだ。

 こういうときは敢えてベッドにではなくて床に寝転ぶに限る。

 掃除の方は普段からしているため、大して汚れていないから気にしなくていい。

 うんまあ、コンコン音が聞こえてきていてもスルーすることが――できなかった。


「思い切り見えていたのに無視をして寝転んだままというのは駄目」

「でも、こうして結局開けているじゃない。雨が入ってきてしまうから下から来て」

「分かった」


 すぐに眠たくなってしまうぐらいの子だからもう少しぐらいゆっくり寝ておけばいいのに。


「来た」

「見れば分かるわよー」


 今日はボサボサになってしまっていた。

 なので、飲み物とかを持ってくるついでに櫛も持ってきた。


「はい、そこに座って」

「ん」


 髪を梳いている最中、もし晴れていたら出かけないかと誘われていたのだろうかと考えていた。

 休日に他の友達と積極的に遊ぶ、そういうところが想像しづらいから、うん。


「いつもは自分でやっているんでしょ?」

「そう、流石にお兄ちゃんに手伝ってもらうわけにはいかないから」

「ということは毎朝、頑張っているのね」

「何故か早い時間に目が覚めるから余裕」


 そ、それはほとんどの日を二十一時頃には寝てしまうからだろう。

 テンションが下がらなくて寝られない日は二十二時ぐらいに「寝られない」などと連絡をしたりしてくるときもあるが。


「昨日、ゆまに興味があると言う子が現れた」


 え? 私は怖がられているぐらいなのにどんな子だ、もこみたいな子か?


「でも、断っておいた」

「な、なんでよ」

「だってゆまが上手く対応できるとは思えないから」


 失礼なとは考えつつも、確かに上手にできるとは自信を持って言うことができなかった。

 存在しているだけで相手を怖がらせてしまうぐらいなのも影響している。

 変に関わってしまったばかりに、時間が経過してから去られるとダメージが上がるからそれならゼロのままの方がいいのかもしれない?

 しかし、そうやって私も怖がって挑戦をしなくなったら……ねえ?

 現状維持すれば隈部兄妹やりよとはいられるが、それ以外の人達とは一切関わらないままで終わってしまうことになる。


「あと、ゆまにお友達が増えたら困る、兄妹で寂しくなってしまう」

「どうせ大半は隈部兄妹といるでしょ」

「これからは分からない」


 そんなことを言ったらもこ達が変わっていく可能性の方が高いわけで。

 だが、自分が寂しくならないようにと制限をかけたくはない、そもそも、かけられるようなことでもないが。

 なので、そんな心配をする必要は全くなかった。




「隈部さんから離れろー!」

「あぶな……少しは落ち着きなさいよ」


 この前からもこみたいに髪が長くて、幼い感じがする女の子に絡まれていた。

 一年生の女の子だから逆にすごい。


「で、もこに後輩の友達がいるなんて初めて知ったんですけど」

「ぷふ、そういうことすら教えてもらえないぐらいの存在なんですよ」


 りよの友達なのか? それとも、もことりよが話しているところをただ見たぐらいの存在なのだろうか。


「私が言うことを聞いた際のメリットは?」

「動いてもらっているので一日十円、でどうです?」

「えぇ、貰う気はないけどそこは百円とかにしておかないと聞いてもらえないでしょ」

「それなら僕が喜びます」

「私にメリットがないということじゃない」


 こういうところはもこに似――ている……。

 〇〇さんみたいになりたいと願い、実際に真似していればその人みたいになれる、わけがないか。


「つまり、離れたくないということですか?」

「そりゃあね」

「それならあなたに粘着します」


 私としてはその長い長い髪を自由に弄ってみたいところだった。

 それと、私としても後輩の友達ができるのは大歓迎なのでこれはありがたい。


「私は三矢ゆま、あんたは?」

「布――な、名乗ったりはしませんよ。なんたって、あなたは敵ですからね」


 あーやばい、この子可愛い。

 私の刺激してはいけない部分にビシビシ攻撃が加えられて抑えるのに苦労しそうだ。

 それこそ、この前母が言っていた大変な分、仲良くなれたら達成感がすごい、みたいな感じ。


「な、なにニヤニヤしているんですか、気持ちが悪いです」

「ま、よろしくね」

「だから、よろしくしませんって」


 仲良くなれたらツインテールにしてやる。

 もこは伸ばしているくせに髪型には興味を持ってくれないから駄目だ。

 そうなると、私としては自由に触ることができないからこの子で、くくく。


「あれ、まだいんの?」

「当たり前じゃないですか、離れたら隈部さんと仲良くされてしまいますからね」


 まだ時間はあるか。

 ガシッと腕を掴んでお気に入りのところまで連れていくことにした。

 にしても、腕ほっそぉ……。


「気持ちのいい青空ねえ」


 もう梅雨も終わる。

 でも、七月になれば毎日毎日、汗が止まらない日ばかりだ。


「ん? あんたなにプルプルしてんの?」


 あ、勝手に腕を掴んだからか。

 謝るぐらいならするなと言われてしまう可能性が高いものの、「ごめん」と謝っておいた。


「く、隈部さんに言いますっ」

「どうぞ?」

「くっ、これで失礼します!」


 そこは「隈部先輩」と先輩呼びにしてほしいが。

 なんかその方が後輩という感じがする。

 それでいてツンツンしているわけだからより完璧なわけだ。

 あ、家族が相手のときと外の人が相手のときでは違うから矛盾しているとかツッコまないでほしい。


「あ、もこ――ぐへ」


 来てくれたと思ったらそのまま頭突きしてくるもこさん。

 少し距離を取ったから顔を見ることができた、が、ほとんどいつもと同じだ。


「言う通りにできないゆまはもう縛り付けておいた方がいいかもしれない」

「家まで運んでくれるならいいわよ? あ、トイレにも連れていってくれたらか」

「りよに協力してもらう」

「はは、冗談よ」


 もこといるときはあの子も来ないだろうから一人でいる時間が必要だ。

 深追いはしてこない子だと分かっているので「たまには一人でいたいときもあるのよ」とぶつけた。


「誰かと会っているとかだったら怒る、こらと言う」

「はは、可愛いだけじゃない」

「僕が怒ったらそれはもうすごいことになる」

「や、SNSで呟いている人か」

「ふざけないでほしい」


 つ、冷たい。

 怖いからさっさと席に座って授業のための準備をした。

 何故か今日は無表情もマイナス方向にしかとらえられなくて駄目だった。




「ば、ばーか」


 言い慣れていない感じが可愛い。

 あ、これは言わせているわけではなくて無視を続けていたら勝手にこうなっただけだった。

 ただ、正直もこからの無表情攻撃から逃れたと思ったら割とすぐにこれだったから喜びきれない。

 そもそも、やはり悪く言われて喜ぶ人なんてM属性の人ぐらいだ。


「べー」


 うん、あの可愛い舌を掴んで「は、はにゃしてください!」と言わせたいなあ。

 あとは擦り切れてしまうぐらいには頭を撫でたい。

 もこのせいでだいぶやばい人間になってしまった。

 何故か彼女相手には遠慮する必要はないと考えてしまっていることもだ。


「もう暑いし、アイスでも食べない?」

「あっ、わざと無視していましたね!?」

「いいからいいから」


 コンビニだと二、三十円ぐらい高いからスーパーにいって買った。

 好みとか分からないから有名で分けられるカフェオレ味のアイスだ。

 簡単に半分にできるから折って渡すと「お礼は言いませんからね」と言いながらも受け取ってくれた。


「うまー」


 いや、マジでいいなこれ。

 ソフトクリームよりも冷たさを味わえるところがいい。


「情けない顔ですね」

「んーあんたのその顔はアイスみたいには冷たく感じないのよね」

「それはそうです、何故なら呆れた顔をしているだけで侮蔑しているわけではないですからね」


 はは、そうかい。

 いやでも、こんなときがくるとは思わなかった。

 なんだかんだで無視できない可愛げのある後輩といられるようになるなんてね。

 しかも、もこやりとのおかげではなくて相手の方から来てくれた。


「ありがとね」

「はあ? あ、夏の暑さで壊れてしまったんですか?」

「うん、それでいいわ」


 なんと言えばいいのか――あ、もこは私にとって都合がよすぎる存在だ。

 たまたま遭遇しただけでなにか助けられたとかでもない、それなのに一緒にいてくれて、一緒に遊んでくれる。

 敵対的であればいいというわけではないが、最初はマイナスかゼロスタートぐらいがいいのだ。

 それこそ、あの小さいところに合ったようなおどおど、ビクビクからのいまの状態なら理想的だ。


「言っておきますけどね、こうしてアイスを買い与えたりしても隈部さんといることは許しませんからね」

「あんたが相手してくれたら言うことを聞いてあげるわ」

「なんで私がそんなことを……」


 割と小さなことでダメージを受けるような人間だからだ。


「流石に一人では無理よ」

「妹さんがいるじゃないですか」

「あ、やっぱりりよの友達だったの?」

「話したことはありますがお友達ではありません、ついでに言っておくと隈部さんも……」


 ファンかなんかか?

 ただ、本人に任せていたら興味があるのに全く一緒にいられなかった、なんてことになりそうだ。


「興味があるからと近づけばいいわけではないんです――あのっ、腕を掴むのはやめてくださいっ」

「いいからいいから」


 家が隣同士であることがこんなときにも役立つなんてねえ。

 私は二階からなんて横着はしないから正面から呼び出すことに。


「はい――嘘つきゆま」

「ごめんごめん、この子がもこと友達になりたいらしくてね」

「上がって」


 ああ、こっちに来たのは何気に久しぶりだ。

 もこの部屋は――まあ、あっちからでも見えるように普通に奇麗だった。

 私の部屋と違うのは勉強机の上にお菓子の袋があること、しかも三袋というお菓子ガチ勢力なところだ。


「あ、そういえばりよといたときに話したことがある」

「どうしても後輩ということで勇気が出なかったみたいなのよ」

「でも、一人の時間が必要だったはずなのに女の子と過ごしていたのは問題」

「男の子とよりはいいでしょ?」


 まあ、過ごすとしてもりととだが。


「どっちも変わらない、わざと言ってる?」

「別にそんなことはないわよ」

「まあ、ゆまへは後にして。お友達になりたいって本当?」

「は、はい――でもっ、隈部さんの邪魔もしたくないんです!」

「邪魔なんてことはない、お友達になってくれるのなら嬉しい」


 隈部兄妹は興味を持っている存在からすれば最強の存在だった。

 多分、彼女達が普通にしているだけで勘違いしてしまう人が増えていく。

 人によって違うとはいえ、普通にしているだけで怖がられるのとでは違いがありすぎる……。


「隈部さん! 私はあなたに三矢さんといてほしくないです!」


 それ、言うのか。

 隠しておけばいいのに、不器用なのだろうか。


「僕はゆまといたいからごめん」

「み、三矢さんよりも僕を気に入ってもらえるように頑張りますから!」


 はは、これもう告白しているようなものでしょ。

 もこがそういう意味で求めるようになったらいいな。

 で、空回りしてしまいそうなこの子ももこの優しさの前に上手くできるようになるかもしれない。

 そういうのを見守るのが先輩の役目な気がする。


「なんですかその顔、隈部さんが一緒にいたいと言ってくれたからって調子に乗るのはよした方がいいですよ」

「いや、どんな顔をしていたのかは分からないけど、私は後輩ちゃんの可愛いところを見てそんな顔になったんだと思うわ」

「やめてください」


 やめろと言われればやめるさ。

 ただ、巻き込まれたくないのなら友達になったのをいいことにもこのところにだけいくべきだった。

 そうすれば私からもこを取り上げることができて安心できるだろうからねと、本当に嫌そうな顔をしているこの子を見ながらそう思った。

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