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別れと配送

 カシューたちは、オアシスを見学する。と、言う建前で、自由行動の許可を得た。カシューは、部屋で軟禁されたとしても、監視付きの自由行動だとしても、逃げ出す予定だったが、すんなりと許可が降りた。

 それは、三人の身元がはっきりしていたというのは、もちろんのこと。この星では、人が行動出来る範囲が限られている点が、かなり大きかった。


 あらゆる銀河系からホープに送られてくる荷物と、ホープから宇宙中へと運ばれる荷物が、一度このオアシスを経由する。時に、その荷物がオアシスで長期間保管されることもある。

 オアシスは、人間では管理しきれない物量と緻密なスケジュールに加え、セクター毎に徹底された温度管理、劣化防止の真空状態など。倉庫内外の全てを、機械に任せた完全なるオートメーションの物流施設だ。

 倉庫内は、人の侵入をほぼ許さず、問題が起きたとしても管理ターミナルから遠隔で対処する。

 よって、この空港近辺にしか人が存在しない。なので、自由行動と言っても、行動可能な範囲が限りなく狭いのだ。


 自由行動を始めて直ぐ。カシューは、空港のエントランスで、ウェイブとの別れを惜しんでいた。カナタと三人で、沢山の椅子が並ぶ通路に立ち、別れを告げている所だ。

 カシューは、ガッチリとウェイブと握手を交わす。

「二人とも、ありがとう。ワタシは、知り合いの所に行ってみる。ホープの知人とも連絡を取って、匿って貰えるよう手を打つよ。」

「おっちゃん……。」

 カナタは、涙ぐむ目を擦ってから手を差し出した。ウェイブは、その手を握りカナタを励ますように告げる。

「カナタ。ワタシたちの冒険は、まだ始まったばかりだ。問題は、これからだぞ。」

 ウェイブは、カナタを抱きしめる様に優しく肩を叩いた。背が足りず、ウェイブは背伸びをしている。

 カナタは、それに呼応するように返事をする。

「ああ、頑張るよ。」

 カシューは、二人が離れるのを待ってから口を開く。

「こちらこそ、助かったわ。復讐が上手く行くと良いわね。」

 カシューが笑顔を向けると、ウェイブもニッコリ笑った。

「ああ、嬢ちゃんも仕事頑張ってな。では。」

 ウェイブは、最後に手を振ると、背中を向けて行ってしまった。

 初めは、とんでもない奴だと思っていたウェイブだが、話せば意外と分かり合えるものだ。短い時間ではあったが、彼の良い所を沢山知れた気がする。隣で肩を落としているカナタは、特にそう思ったようだ。


 ピスから貰った座標(ロケーション)を目指す中。カナタは、ずっとしょんぼりとして元気が無い。そんなカナタに、カシューが聞いた。

「カナタは、一緒に行かなくて良かったの?」

「え?」

「私と行けば、命の危険があるし借金も消えることがない。彼と行けば、安全で借金も、彼がどうにかしてくれるでしょ?ここに残って、大人しく捕まるっていう手もあるけど。」

 カシューは、ガラス張りの廊下を歩きながら提案した。ガラスに映るカシューのくびれた腰には、白いナップサックの様な小さな袋が提げられている。

 赤髪が反射するガラスの向こう側では、大きな箱がレールに乗って次々と運ばれていた。

 ガラスにカナタの真剣な表情が映る。カシューの背中に、その凛々しい顔を向けて言う。

「いや、俺は、カシューについて行くって決めたんだ。今更、変える気はないよ。」

「そう。変えたって、誰も文句言わないけど。」

 カシューは、カナタの決意を軽くあしらった。

 そんなカシューの反応に、カナタは不満を持つ。

「カシュー。厄介払いしようとしてないか?てか、お前の力で借金もどうにか出来るだろ?駄目なのか?」

 カナタは、カシューの答えが分かってはいたものの、駄目元で聞いてみた。聞くだけは、無料(ただ)だ。それに、もしかしたらがあるかもしれない。

「駄目よ、カナタ。私は、一応、犯罪者じゃないの。似た様な事をしてる様に見えるかもしれないけどね。」

 カナタは、口を尖らせるカシューの前に躍り出て、両手を合わせた。

「じゃあ、任務が終わったら、上の人に頼むとか!お願い!そのくらいは、出来るよな!っな!?」

 恥じらいもなく頼み込むカナタに、カシューは呆れながらも一考する。

「勝手についてきといて……。そうね。あなたを星へ返すぐらいは、頼んであげるわ。」

 カナタの求める答えでは無さそうだが、星に返す(イコール)借金チャラと、捉えても良さそうだ。確約は得られなかったが、今はそれで良しとした。


 それから、カナタが周囲に顔を向けて言った。

「それで、道はこっちで合ってるのか?何か変な工場に入って来てるけど。」

 ロボットアームが、一枚一枚ダンボールを取り上げては、箱を組み立てていた。開いたダンボールの箱は、レールに乗って何処かに送られて行く。

「ええ。これ組み立てて貰える?」

 カシューが、積み上げられたダンボールの板を、一枚取り上げてカナタに見せた。

「折り畳み式の……箱か?」

「そうよ。これにダミーを入れて、配送して貰うの。」

 そう言って腰の袋から筒を取り出すと、カナタは目を輝かせた。

「なるほど。考えたな!」

 カシューは、いつの間にか似た様な筒を数本用意していた。カナタが組み立てた箱に、筒と緩衝材を入れて閉じる。

 それから、左手の端末に入力したデジタルコードを、箱の宛名にコピーした。差出人は、スパーノ・クロフにする。これは、カシューの小さな仕返しだ。

 そして、その箱を適当な工場のレーンに投げ置くと、他の箱に紛れて一緒に運ばれて行った。この作業を数回繰り返し、残りの筒が一本になった所で止めた。

「それじゃ、行きましょうか。」

 作業を終えたカシューは、工場内を抜けて外に出た。

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