団子と緑茶
ヘルメットの視界に、頭に二つの団子を結んだ緑色の髪の女性の姿が現れた。操縦席に座り、クリッとした目で画面を覗き込んでいるのが見て取れる。
「ピスタチオ・スーパーグリン。にっひっひー、カシューの同僚よ!」
その大きな声を聞き、カシューは、ビクッと背筋を伸ばして引きつった笑顔をする。聞かれてはいけない事を聞かれてしまった。
「げ!ピス!?いつから聞いてたの!」
「にっひっひ。ついさっきよ。でも、今は、それどころじゃない。パープルミストの軍艦が近くにいて、そっちに近づけそうにないの。ホープの政府も対応に困ってるみたい。カシュー、あなた、今何処にいるの?」
ピスは、大きな軍艦が宇宙を漂っている映像を映し出した。
カシューが操縦室に向かって歩き始めると、カナタとウェイブが隣を走って通り抜けた。彼らは、外の様子が気になるみたいだ。黄色の手袋を壁に押し付け、ヘルメットが窓にぶつからないように注意する。上を見やすいよう姿勢を低くして、外の様子を探り始めた。
「そのパープルミストのシャトルの中よ。だけど、気付かれるのは、時間の問題。そろそろ飛び立たないと。」
「なるほど。じゃあ、私は、着陸しなくていいってことね。それなら、やりようがあるかも。」
彼らの様子を見兼ねたカシューは、ため息混じりに冷たい視線を向ける。
「こら、アホ面さんたち。あんまり顔を出さないの。バレるでしょ。」
「ああ……ごめん。上が気になってさ…。」
カナタが申し訳無さそうに、ヘルメットの頭を掻きながら言うと、カシューは、操縦席に飛び乗って、上にも下にもある沢山のスイッチを弄り始めた。
「それで、ピス。作戦は?」
「にっひっひ。シンプルに、私が囮になるわ!その間にあんたは、デスペアの軌道を回って軍艦の影に行きなさい。そのまま第二衛星サイクルを通過し、第三衛星オアシスに着陸する。もちろん、第二衛星を影にするように、気をつけながらね。」
「それじゃ、ピスがヤバいじゃない。見るからに、本格的な軍艦よ。」
「私は、大丈夫。それよりも、ブツの回収が優先よ。サイクルとオアシスに一台づつ、予備の船を隠してある。座標を送って置くから、着いたらそれで逃げなさいよね。にひっ。」
「分かったわ。気をつけて、ピス。」
「それじゃ、作戦開始〜!にっひっひっ!」
ピスが楽しそうに言うと、ヘルメットの画面から彼女の映像が消えた。
「彼女、大丈夫なのか?あっ、聞こえてるのか。」
「ピスの操縦テクは、ピカイチよ。それより問題は、こっち。」
カシューは、沢山ある計器と睨めっこをしていた。
すると、助手席にウェイブが腰掛けて大きなボタンを押した。
「ワタシがサポートしよう。こう見えて、宇宙船の操縦には、自信があるんだ。」
ウェイブもカシューと同じ様に、色々と点検をし始めた。今までと打って変わって、頼もしいウェイブの姿にカナタは感動する。
「マジかよ。おっちゃん!すげーじゃん!」
大声を出すカナタをカシューが鼻で笑った。
「ここに来た時に騒いでたから、そうじゃないかと思ってたわ。」
「だから文句も言わず、ワタシを連れて来たのか?流石だな。ワタシの商売の助手にならないか?人を見る目がある奴が、欲しかった所なんだ。」
カシューは、スイッチをパチパチ指で弾くと、大きなレバーに手を掛けた。
「今は冗談言ってる場合じゃないのよ。カナタ、席に着いてシートベルト。エンジン点火。」
カシューは、号令を掛けると、レバーを勢い良く引いた。シャトルから大きなモーター音が響き始める。
「げっ!!」
カナタは、身の危険を感じて、慌てて操縦室から出て行く。
「発進!」
シャトルが滑走路を急発進した。エンジンから大量の燃料を噴射して高速で滑走路を進むと、一瞬で宇宙へ飛び立った。




