ナイトプールの実体
迎えた船旅三日目、あっという間に最終日である。
ガウの具合は一晩でかなり回復したようで、溌剌とした様子でいる。
朝から果物をすり下ろしたものを与えると、ペロリと完食した。
しかしながらまだまだ療養は必要なようで、お腹いっぱいになったあとは眠ってしまった。
気持ちよさそうに眠る横顔を見ながら、早く回復すればいいな、と思ったのだった。
お世話が終わったあと、ジェムもすり下ろした果物を食べたいと訴えてきた。
いつもの焼き餅だろう。
基本的にジェムは私から魔力が供給されるので、飲食は必要ない。
しかしながら言いだしたら聞かないので、特別に作ってあげる。
リンゴを皮ごとすり下ろしたジュースを与えたら、透明な体の中で洗濯機のようにぐるぐる回り、消えていった。今のは消化活動なのだろうか?
何はともあれ、満足した様子だったので、一安心である。
ラウンジで朝食を囲む。
焼きたてのパンに新鮮なサラダ、カリカリに焼かれたベーコンに半熟茹で卵、ニンジンのポタージュ――これ以上ない完璧な朝食をいただいたあと、昨日のナイトプールについての報告をレヴィアタン侯爵から聞くこととなった。
「おおよそわかっていたことだが、健全な催しではなかった」
なんでも甲板に設置されたプールで泳ぎを楽しんでいる者はほぼおらず、皆、デッキに置かれた寝椅子に横になって、夜空を眺めていたらしい。
一見して静かな夜のナイトプール、という感じだったが、サイドテーブルに置かれた飲食物のメニュー表を見て仰天したという。
「飲み物を頼むだけで金貨一枚、というありえない価格だったのだ」
当然ながらこの世界に飲み放題のような概念は存在しない。
一杯の価格が金貨一枚なのだろう。
「すぐ傍にいた男女が、金貨一枚の飲み物を二杯注文していた」
いったいどんなものが出てくるのかと思いきや、ごくごく普通の飲み物だったという。
ただ出てきたのは飲み物だけではなかった。
銀紙に包まれたチョコレートが二粒、ついてきたのである。
それを食べた途端に、二人の様子がおかしくなった。
「興奮したような声を上げ、プールに飛び込んでいったのだ」
不審に思ったレヴィアタン侯爵はすぐさまその飲み物を注文し、チョコレートを調べることにしたという。
ヴィルを呼んで鑑定で調べさせたところ、違法薬物を使っていることが明らかとなった。
ナイトプールはおそらく、違法薬物を楽しむ場となっているのだろう。
レヴィアタン侯爵はウエイターにチョコレートが気に入った旨を話して、どこの商会が仕入れているのか話を聞いた。
「最初こそ口を割らなかったが、金を握らせるとあっさり暴露した」
それは国内でもそこそこ名が知れている商会だったという。
ツィルド伯爵との繋がりは疑惑すらなかったようだが、秘密裏に取引をする仲だったようだ。
調査及び摘発しなければならない案件が、船に乗った三日でどんどん増えていく。
レヴィアタン侯爵は深く長いため息を吐いていた。




