元気になって
ガウはヴィルが結界魔法を解いても、私達に飛びかかることはしなかった。
それどころか、助けを求めるように見つめてきたのである。
きっとこの子は優しい性格なのだろう。
そもそもまともに食事をしていないので、思うように動けないのかもしれない。
口呼吸をしているのも気になる。呼吸もかなり速いような気がした。
猫は口呼吸し始めたら危ない、なんて話を聞いた覚えたあったのだ。
もしかしたら回復魔法で少し元気になる可能性がある。
私は使えないので、ヴィル頼みになるが。
「ジギー、その、この子に回復魔法をかけることはできますか?」
「ああ。やってみよう」
ヴィルがしゃがみ込んだ瞬間、ガウは後退していく。
「だめか」
まだ神経質になっているのかもしれない。
「私の魔法薬……は強すぎるでしょうか?」
「水に薄めてみてはどうだろうか?」
「そうですね」
猛獣使いに桶に張った水を用意してもらうように頼んだ。
するとすぐに持ってきたのだが、水が濁っているのに気付いた。
「あの、この水は?」
「使役獣用の水だ」
地上から運んできたもののようだが、こんなに濁った水を飲んだら病気になってしまいそうだ。
「あの、この水をガウに飲ませることができません」
そう言うと、猛獣使いは意味がわからない、と言わんばかりの表情を浮かべる。
はっきり「汚いです」と言うと、人間が飲むものではないのだから問題ないと返してきた。
なんて酷い扱いをしているのか。怒りがこみ上げてくる。
「もういいです」
水で薄めなくても、少しだけ与えればいい話だろう。
ただ、独特な風味があるので、飲んでくれるかわからないが。
私はガウの前にしゃがみ込み、魔法薬の蓋を開いて匂いをかがせてみた。
「ガウ、この魔法薬を飲んだら元気になれるんです。飲めますか?」
そう問いかけると、ガウは魔法薬の匂いをすんすんかいだ。
口輪の隙間からペロッと魔法薬の瓶を舐めたので、大丈夫そうだ。
手のひらにほんの少しだけ魔法薬を注いでガウに差しだすと、ぺろぺろ舐め始めた。
『――!』
効果が発揮されたのか、ガウの瞳がキラリと輝く。
その様子をみたヴィルが「問題ないようだな」と言った。
「人間よりも体が大きいので、飲めるのならば全部与えても大丈夫だろう」
「わかりました」
手のひらにたっぷり魔法薬を出すと、ごくごく飲む。
効果はすぐに現れた。
ぼさぼさの毛並みは美しくなり、口呼吸もしなくなった。
すっかり元気になった様子に、ひとまず安堵する。
ガウはスッと立ち上がり、ぐーーーっと伸びをしていた。
「私の部屋まで歩けますか?」
そう問いかけると、ガウは『きゅうん!』とかわいらしい声で鳴いた。




