幻獣について
サーカスを見ていた客らは、駆けつけた船員の誘導で全員避難したようだ。
火も雪で消したので、テントの床が少し燃えた程度で済んだ。
それにしても、繋いでいたロープから引火するなんてありえないだろう。
いったいどんな管理をしていたのか。
呆れてしまう。
私のすぐ傍で蹲っていたガウは、ガタガタと震えていた。
本当は火が怖かったのかもしれない。かわいそうに……。
近くで見たら、痩せ細っているように見えた。
もしかしたら食事も満足に与えられていない可能性がある。
「お、お嬢様、ガウがどうかしましたか?」
「少し、痩せていると思いまして」
「ああ、この子は食が細くてですね。せっかく上等な肉を与えても、あまり食べないのですよ」
「え、肉をあげていたのですか?」
「ええ! ガウを繁殖したブリーダーから、肉が好物だと聞いていたものですから」
その話を聞いて、言葉を失う。
幻獣は基本的に草食で、肉は口にしない。
きっと生きるために、無理に食べていたのだろう。
幻獣のお世話について知識がないのに、使役していたなんて。
そもそも、繁殖していたブリーダーというのも引っかかった。
ヴィルも気になったのだろう。質問を投げかける。
「ブリーダーというのは?」
「あ、いえ、私も詳しくはないのですが、その、知りたいようでしたら、競売に参加したほうがよいかと! ガウくんみたいな子が出品されるようですので」
競売で幻獣が出品されることに間違いはないようだ。
「その幻獣はどういう経緯で入手したんだ?」
「ガウくんは、その、物々交換ですかねえ」
「具体的に何と交換した?」
ヴィルがジッと見つめながら問いかける。
「いやー、そのー」
ヴィルのかけていた眼鏡が一瞬きらりと輝く。
すると、団長はとろんとした目つきになりながら、話し始めた。
「いや、実はですねえ、うちの団員がとある商人から多額の借金をしておりまして、引き渡す代わりに、ガウくんをくれたのですよ」
つまり、この団長は仲間である団員を商人に売ったようだ。
ガウはガリガリに痩せている上に、純血種ではないからと買い手がつかなかったらしい。
団長はサーカスのマスコットキャラクターにしようと思いつき、グッズの製作にも乗り出したという。
「賢いと聞いていたので、いろいろ教え込んだのですが、酷く臆病な子でねえ……」
数ヶ月もの間調教したようだが、唯一火の輪くぐりしか習得できなかったようだ。
人と同等か、それ以上の知能を持つ幻獣を見世物にし、火の輪くぐりをさせるなんて酷い話である。
これに関しては幻獣でなくても、他の動物も当てはまるのだが。
「わかった。この幻獣は私達が引き取るから、あとは心配しないように」
「は、はい」
ヴィルは口止め料だと言って、金貨三枚を団長にあげていた。
この辺もぬかりないようだ。
猛獣使いがガウを入れる檻を運んできてくれた。
けれどもガウは入るのを嫌がり、抵抗している。
「その、檻に入れなくても大丈夫です。そのまま部屋に連れて行きます」
私の発言に、猛獣使いは驚いていた。




