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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・四章 新たな任務

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幻獣について

 サーカスを見ていた客らは、駆けつけた船員の誘導で全員避難したようだ。

 火も雪で消したので、テントの床が少し燃えた程度で済んだ。

 それにしても、繋いでいたロープから引火するなんてありえないだろう。

 いったいどんな管理をしていたのか。

 呆れてしまう。


 私のすぐ傍で蹲っていたガウは、ガタガタと震えていた。

 本当は火が怖かったのかもしれない。かわいそうに……。

 近くで見たら、痩せ細っているように見えた。

 もしかしたら食事も満足に与えられていない可能性がある。


「お、お嬢様、ガウがどうかしましたか?」

「少し、痩せていると思いまして」

「ああ、この子は食が細くてですね。せっかく上等な肉を与えても、あまり食べないのですよ」

「え、肉をあげていたのですか?」

「ええ! ガウを繁殖したブリーダーから、肉が好物だと聞いていたものですから」


 その話を聞いて、言葉を失う。

 幻獣は基本的に草食で、肉は口にしない。

 きっと生きるために、無理に食べていたのだろう。

 幻獣のお世話について知識がないのに、使役していたなんて。


 そもそも、繁殖していたブリーダーというのも引っかかった。

 ヴィルも気になったのだろう。質問を投げかける。


「ブリーダーというのは?」

「あ、いえ、私も詳しくはないのですが、その、知りたいようでしたら、競売オークションに参加したほうがよいかと! ガウくんみたいな子が出品されるようですので」


 競売で幻獣が出品されることに間違いはないようだ。


「その幻獣はどういう経緯で入手したんだ?」

「ガウくんは、その、物々交換ですかねえ」

「具体的に何と交換した?」


 ヴィルがジッと見つめながら問いかける。


「いやー、そのー」


 ヴィルのかけていた眼鏡が一瞬きらりと輝く。

 すると、団長はとろんとした目つきになりながら、話し始めた。


「いや、実はですねえ、うちの団員がとある商人から多額の借金をしておりまして、引き渡す代わりに、ガウくんをくれたのですよ」


 つまり、この団長は仲間である団員を商人に売ったようだ。

 ガウはガリガリに痩せている上に、純血種ではないからと買い手がつかなかったらしい。

 団長はサーカスのマスコットキャラクターにしようと思いつき、グッズの製作にも乗り出したという。


「賢いと聞いていたので、いろいろ教え込んだのですが、酷く臆病な子でねえ……」


 数ヶ月もの間調教したようだが、唯一火の輪くぐりしか習得できなかったようだ。

 人と同等か、それ以上の知能を持つ幻獣を見世物にし、火の輪くぐりをさせるなんて酷い話である。

 これに関しては幻獣でなくても、他の動物も当てはまるのだが。


「わかった。この幻獣は私達が引き取るから、あとは心配しないように」

「は、はい」


 ヴィルは口止め料だと言って、金貨三枚を団長にあげていた。

 この辺もぬかりないようだ。

 猛獣使いがガウを入れる檻を運んできてくれた。

 けれどもガウは入るのを嫌がり、抵抗している。


「その、檻に入れなくても大丈夫です。そのまま部屋に連れて行きます」


 私の発言に、猛獣使いは驚いていた。

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