船上サーカス
その後、私とヴィルは船上サーカスに出かけた。
サーカスのテントは甲板に立てられており、少し小規模だが、船上なので仕方がないのだろう。
テントの周囲には露店が並んでいた。
定番のポップコーンにフランクフルト、チュロス、フライドチキン、フライドポテトなどを売る店や、パンフレットにぬいぐるみ、キーホルダーなどの土産を販売する店もあった。
今回の客船は子どもがいないからか、ぬいぐるみが売れている気配はない。
「ルシー、ぬいぐるみが欲しいのか?」
「いいえ、違います」
たしかにかわいいが、私みたいな大きなお友達が持つ物でもないだろう。
「あら?」
「どうした?」
「いえ、あの生き物は何かと思いまして」
ぬいぐるみの中に、見慣れぬ動物をモチーフにした物があったのだ。
この世界の生き物すべてを把握しているわけではないので、不思議なことでもなんでもないのだが……。
「幻獣ではないですよね?」
「虎の上半身に、獅子の下半身、背中に翼か……見たことも、聞いたこともないな」
「ですよね」
幻獣について習ったばかりで、三百種類ほどの幻獣を図鑑で見て学んだのだ。
その中に、ああいう幻獣はいなかった。
ヴィルも知らないというので、幻獣ではないのだろう。
「サーカスの旗にも描かれてあるから、マスコットキャラクターなのかもしれませんね」
「ああ、そういうわけか」
空想上の生き物をシンボルマークにすることはよくある。
これもその一つなのだろう。
「買っておくか」
「そうですね」
私は獅子と虎の間の子のぬいぐるみを買ってもらった。
一等席の乗客のために用意されたのは前列だった。
ぞくぞくと席が埋まっていき、予定時間ぴったりに開始される。
サーカスでは身体能力が優れた団員が空中ブランコを披露したり、ナイフ投げでハラハラしたり、猛獣使いと魔法生物が登場し、火の輪くぐりや玉乗りをしたり、と大いに盛り上がっていた。
終盤、団長からの挨拶があった。
なんでもこのサーカスは、複数の客船に乗船して興行を繰り返す、船上専用サーカスらしい。
これで終わりかと思っていたが――。
「それでは、最後のショーとなります。我らがサーカスのマスコット幻獣、ガウくんの登場です!!」
そんな紹介と共に登場したのは、虎の上半身と獅子の下半身を持ち、背中に翼を持つ生き物。
幻獣と言っていた。
「ガウくん、さあ、みなさんに挨拶してください」
団長がそう言うと、猛獣使いがガウと呼ばれた幻獣を鞭打ちする。
すると、苦しげな鳴き声をあげていた。
「こ、これは……」
ヴィルの顔を見上げると、険しい表情でいた。




