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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・四章 新たな任務

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それぞれの役割

 ヴィルの偽名はジギー・フォン・ロンベルトだという。

 ルシー・ド・ティナールは婚約者らしい。

 二人とも貴族のようだが、どうして豪華客船の旅のチケットが闇オークションへ流れていたのか。謎が深まる。

 これからヴィルのことはジギー、私のことはルシーと呼び合うのだ。


「ルシー、あれがこれから乗る客船みたいだ」


 ヴィルが指差したほうには、巨大な建物かと見まがうくらいの大きな船があった。

  船体には、〝ヘルシャフト号〟と書いてある。


「ヘルシャフト――古い言葉で〝支配〟か」

「なんだか嫌な名前ですね」

「まったくだ」


 船着き場にはトランクケースを抱えた人達が大勢いた。

 一方、私はジェムが入ったバスケットを持つばかりである。


「ルシー、そのバスケットは私が持とうか?」

「いえ、これはですね、実はジェムが入っているんです」


 ジェムは真面目にウサギになっているか、そっと覗いてみたら液体状になっていて、バスケットにぎっしり詰まっている状態だった。


「ちょっとジェム、怠けないでくれる?」

「どうした?」

「ジェムがこの通り」


 ヴィルに見せると、ぎょっとしていた。

 ひとまず布で覆って見えないようにしておく。


「たぶん、私以外の人が運んだら何をするかわからないので、お気持ちだけいただいておきますね」

「そのほうがいいかもしれない」

「それはそうと、私達のトランクケースはどこにあるのでしょう?」


 事前に預けることができるようだが、それだと受取時間がかかってすぐに使えないらしい。直接持ち込むと話していたのに、ヴィルは何も持っていなかった。

 キョロキョロと辺りを見回していたら、背後から声がかかった。


「待たせたな!!」


 振り返った先にいたのは、左右に四つくらいのトランクケースを抱えるレヴィアタン侯爵とレヴィアタン侯爵夫人である。

 いつもの服装ではなく、着古した感じの燕尾服とドレス姿だった。


「ルシーは初めてだったな。従僕のベンと、ルシーの侍女を務めるハンナだ」

「初めてお目にかかる、ベンだ」

「ルシー様、短い航海の間ですが、よろしくお願いしますね」


 なんと、レヴィアタン侯爵夫妻が私とヴィルの使用人役だったなんて。

 役割は逆のほうがよかったのではないか、と思ったものの、チケットの持ち主の情報をそのまま用いて使ったのだろう。


 ちなみに私とレヴィアタン侯爵夫妻は同室らしい。

 それに関しては心強い。


 ボーー、と船から汽笛が聞こえた。


「優先搭乗が始まったようだな」

「ジギー様、ルシー、早く行きましょう!」


 張り切って先陣を切るレヴィアタン侯爵夫妻のあとに、私とヴィルは続いたのだった。

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