船内へ
豪華客船の出入り口から、長い舷梯が下ろされる。
そこから制服姿の船員が下りてきて、チケットを確認し、乗船するようだ。
優先搭乗できる客は少ないようで、行列などできていない。
レヴィアタン侯爵が私達の分すべてのチケットを、代表して船員に渡してくれた。
私達はルームーン国の貴族という設定なので、偽造した旅券も一緒に見せるようだ。
もちろん、国王陛下公認の旅券である。
それでも不安なものは不安だった。本当に乗船できるのか、ドキドキしながら待つ。
「はい、確認できました」
どうやら問題ないようで、ホッと胸を撫で下ろす。
「こちら、エントランスフロアに転移する魔法陣でございます」
優先搭乗客のための、特別な魔法らしい。
至れり尽くせりというわけである。
「よい船旅を!」
レヴィアタン侯爵夫妻が転移したあと、私とヴィルも続く。
一瞬でエントランスフロアまで転移できた。そこは床、壁、天井などすべてが大理石でできた、ぴかぴかと美しい空間だった。
そこでずらりと並んだ船内スタッフに迎えられる。
二名の船内スタッフがやってきて、レヴィアタン侯爵からトランクケースを受け取る。
続けてコンシェルジュのような船内スタッフが、客室係だと言って部屋まで案内してくれるようだ。
「ジギー様とルシー様は、船内でもっとも豪華絢爛な一等室にご案内します」
船内の移動も一等室を利用する人々は、転移魔法を使うことができるらしい。
ピカピカの大理石の床に浮かんだ魔法陣に乗って、一等室のエリアまで移動した。
下り立ったのは、ふかふかの絨毯が敷かれたラウンジ。
開放的な窓があり、どこまでも続くような海を眺めることができるようだ。
「こちらではお好きな時間に、ご家族やご友人などと景色を見ながら食事や軽食がお楽しみいただけます」
テーブルに手をかざすと魔法陣が浮かび上がり、メニューが現れる。欲しい品をタップすると、料理や飲み物が転移されてくる仕組みだという。
なんて異世界のタッチパネルや~、なんて心の中で思ってしまった。
ちなみに部屋でも、このシステムは利用できるようだ。
「船内の施設について知りたいときは、テーブルの裏を二回コンコンと叩くと、マップが展開されます」
客室係がやってみせると、大きな地図が浮かび上がった。
「船内には劇場や食堂、酒場、喫茶店、図書室、商店の他、水泳場にスケートリンク、遊技場など、さまざまな施設がございます」
行きたい場所をタップすると、転移陣が展開される仕組みのようだ。
なんて便利なのか!! と心の奥底から感激してしまう。
「夜にはメインホールでダンスパーティーや競売なども行われますので、ぜひともお楽しみくださいね」
競売について、さっそく耳にする。
話を聞いていたヴィルの表情が鋭くなるも、それは一瞬のことだった。
「他、何かお聞きしたい点などありますでしょうか?」
「いいや、ない。疲れているから、部屋での案内もけっこうだ」
「かしこまりました」
一等室はエリアが区切られていて、ここは私達しか入れないようになっているという。
「では、出発までしばしお待ちいただけたらなと思います」
「ありがとう」
客室係は一礼し、転移魔法を使って姿を消す。
私達だけとなったので、ホッと息を吐いたのだった。




