玩具 ※
ルナは迷いない足取りで進む。
目指すは父の元。
話したいことは…色々あるがまた今度。
しかしその今度が訪れるかは分からない。
だけど今は一刻を争う事態なのだ。
「お父様!」
扉を勢いよく開く。
開かれた先には綺麗な机、天井、寝具、塵一つない床。ここはルナのお父さんである国王の寝室、であったが今は誰もそこにはいなかった。出かけているのか?それとも避難をしたのか?
「タクミ、何とかしてお父様の位置を知れないかしら」
口に出してはっきりとした口調で言ってくる。まあ出来なくも無い、のかなぁ。余程遠くない限り出来るような気がする。たぶん。ということで身体のコントロールを変わってもらって、それっぽい事を幾つか試してみる。
右手を体の左肩の高さまで上げてから右肩まで振る。すると茶色い地図みたいなのが浮かびあがり、制止した。前回の地図と比べると練度が増している気がするが使用回数によってレベルがあがるのかもしれない。
取り敢えず地図上にあるアイコンを調べていく。もしかすると新機能が追加されていたりして。適当にそれっぽい所を弄っていると何やら一覧が表示される。
「これは・・・」
虫眼鏡のマーク・・・。某青い鳥のアイコンで有名なアレにもあったな。あとウェブページ。いわゆる検索アイコン。こんな便利な物が実装されてるなんて・・・エルも驚きだぞ。
ルナから国王の名前を教えてもらい、入力。すぐに地図上が拡大され、赤いマーカーが出現し、位置を教えてくれる。場所は・・・
『ここって町外れの・・・貧民街よ』
驚いた声を出すのも無理はないと思うけど、なんで貧民街なんだろうか。逃げるのに適しているのか??例えばそこで住んでいる人たちに紛れて見つからないようにするため、ぐらいしか俺には思いつかない。しかしだとすれば今誰かに追われているってことになるけど、誰だ?
そう思ったときアイコンに変化が現れた。特に触れてもいないのに青白い、人魂のようなアイコンが赤いマーカーのすぐ近くに表示される。それはユラユラと少しずつ赤いマーカーへと迫っていく。
『何よこいつ』
「幽霊・・・って、か?」
『幽霊はいなくもないけど・・・なんで人間が沢山いる場所に・・・?』
幽霊=ゴーストというモンスターがいるとルナは言う。しかしゴーストなるモンスターは出現地が草原や洞窟といった限られた場所にしか出現をしないらしい。では、この青い人魂は一体。
『取り敢えず行きましょ。話はそれから』
「だな」
肉体を借りたまま目的地へと向かう。それも全速力で走りながら。
今緊急事態というか嫌な予感がそうさせるのだ。
/////
「お、王様、ぁッ」
「っくなんだこいつ!」
「どこの者だ!答えろ!」
じりじりと近づいてくる小さな影におびえながらも勇敢に剣を握りしめる近衛兵。そんな近衛兵も近づく影によって黒い飛沫をあげ崩れ落ちてゆく。城から至急的且つ速やかに脱出したはいいが、道中で襲われてしまった。相手は一人のようだが、動きが人の域を超えている。正直言って勝ち目は絶望的だ。
しかし。ここで逃げようものなら王を守る名誉が泣く事だろう。だから引くわけにはいかない。例え命に代えてもー
「どこの者だぁ?あはははっ」
快活な綺麗な高い声が響く。そして月夜が暗い街を照らす。露わになるのは少女の出で立ちをした異形。人の形をしているのに、彼女から延びる影は不自然にまで動きがおかしい。ゆらゆら蠢いて形を保てずなお変化を続ける。それはまるでさながらいくつもの生き物がのたうち回っているかのー
「どこの者でもいいよぉ・・・ねぇ」
また一人首が落ちる。少女が特に何かをしたようには見えなかったが、前衛がまた一人死ぬ。静かに打つ手も無く。恍惚とした表情を浮かべて少女は血だまりを見る。さながら恋した乙女にも見えるが生臭い香りがすべてを台無しにしていた。
「ふふーん。こんな小物じゃ面白くないなー」
赤い鮮血を派手に飛沫をあげて回る。踏んで跳ねて、ばしゃばしゃと音を立てて。
その光景を兵士たちは震えながら見つめる。次はだれが死ぬのか・・・。自分かもしれない。ここまで努力して上り詰めてきたのに。仲間は掛けた時間とは裏腹にあっけなく死んだ。嫌だ死にたくない。
「お、王様・・・!」
「・・・」
王様は寡黙してただ少女を見つめる。その表情は揺るがずただひたすらに見つめている。こんな時に何をお考えになっているのか。まさかもう生きるのを諦めたのか?しかしそんな顔はしてはいない。凛々しく、雄々しく少女を見つめる姿にそんな言葉は似あわない。何かを虎視眈々と狙っている気がする。
「ねーねー。何かないのー?」
血だまりで遊び飽きたのかこちらへ問いかけてくる。狂気的な笑顔で。
「私暇なんだよねー。さっき殺したのも手ごたえないしー」
「面白いのが近づいて来てるのはわかるんだけど待ってる間がねー」
「解体は十分したし何か芸してよ」
「聞いてるー?」
手頃な石に腰かけ足を揺らしながら問いかけてくる。しかしその問いかけは一方的な物で返事など微塵も期待していない。少女は空を仰いで時折狂ったように笑う。「あははは」「ふふふふ」口端を吊り上げ、目を細め笑っている。訪れるであろう玩具に思いを馳せて。
「・・・ルナ、来てはいけない」
兵士の一人が王様が零した言葉を拾うが、次の瞬間には視界が暗転する。
またひとり首が落ちたのだ。




