狂気 ※
コツコツと一人の足音が町の綺麗に舗装された道に響く。
立ち並ぶ建物も麗美な作りをしている。
さすが大きな都市とも言えるが、中心に近い、つまり王都に近いだけのことはある。
そんな中を縫って歩くように一つの陰がある。
身長はそれほど高くなく、暗がりであまり良く見えないが体格と髪で少女の物だと思わせる。
とゆうのも服装冒険者によくみられるラフな格好。
決して貴族が着るような服ではない。
実に今いる場所と不釣り合い。
幼さが残る様な体躯をしてはいるが、
だけれど雰囲気はそれほど幼くは無い。
そんな少女が夜遅くの町を手を規則的に振りながら歩いている。
見知らぬ人が見ればどこかの家出少女か町はずれに住んでいる貧困層の子どもだと思うかも違いない。
まあ別に思われようが関係ないのだが。
『どこいくんだよー』
「別にどこでもいいでしょー」
『まあなー』
ふぁあ、と気の抜けた欠伸を聞きながら、ゆっくりと、しかし悠然と持って目的地へ向かっていく。
それほど急がずにも良いため余裕の足取りだ。
「てゆうか、わかるっしょーこの方向だぞー」
大きく手を広げ、影が十字架刑の囚人を思わせる。
何を思ったのか「あは」と嬉しそうな声が一つ。
そして一回ターンして俯き深呼吸。
身体がふるふると震え、
『いや止めとけってマジで』
せっかく隠密に侵入した苦労が水の泡になる瞬間を、彼は想像し嘆息する。
止めても無駄だと思いながらもこれまでの努力を惜しんで一言。
しかし、胸元から聞こえる制止する声を無視して、感極まったかの様に肺の中にある空気を余すことなく一気に吐き出す。
「こんなッ面白い展開!ぐふ、ふふふふッ」
『あー、もうだめだ終わりだ終わり』
「たまたま通り掛かったッこの面白味の無い平和な町で!」
「二人も!んんッ!!剛なる者がいるなんてぇ!!!」
「たまらない!はぁッ!!体が疼くよぉ…早くあいたぁッぃぃいいい!!」
ケダモノのような咆哮と、あはははははッと狂ったような声が静かな住宅街に響き渡る。
静かに吐いたため息は激情の声にかき消された。




