第7話
魔王城の外壁から見下ろすと、確かにいた。
百人どころではない。
「二百はいるな」
暗黒大陸の黒い霧の手前に、大量のプレイヤーが集まっている。
先頭には白銀の鎧を着た男。その横には杖を持った女。さらに後ろに弓、盾、魔法使い。
「イベントでも始まったのか?」
掲示板を開く。
【暗黒大陸の霧が薄くなってない?】
【謎のモンスター軍団が初心者狩りしてる件】
【スケルトンに戦術負けしたんだがw】
【ボスっぽい城見えた】
【レイド募集 推奨Lv25以上】
「……俺のせいだった」
デス達にプレイヤーを襲わせていたせいで、暗黒大陸付近が完全にイベントエリア扱いされている。
「サタン様、迎撃いたしますか」
デスが鎌を構えた。
「いや、まず話す」
「敵と?」
「俺だって一応プレイヤーだからな」
城門まで転移し、一人で外へ出る。
こちらを見た瞬間、二百人の武器が一斉に構えられた。
「待て待て。攻撃するな」
「しゃべった!?」
「ボスAIじゃないのか?」
「名前赤いぞ!」
先頭の白銀鎧が剣を抜く。
「魔王サタン。暗黒大陸のフィールドボスだな?」
「半分正解。俺プレイヤー」
「は?」
「PNサタン。種族が魔王になった」
数秒、静寂。
そして。
「嘘つけえええええ!」
二百人から総ツッコミを食らった。
仕方がないので、プレイヤー専用のフレンド申請画面を一瞬だけ開いて見せた。
「マジじゃん……」
白銀鎧の男が剣を下ろす。
「俺はアレス。ギルド《白銀の剣》のマスターだ」
「名前からして勇者っぽいな」
「よく言われる」
横の女が口を挟む。
「私はミレイ。で、なんであなたの配下が初心者を狩ってるの?」
「経験値がうまいから」
「最低じゃない!」
「ゲームだぞ」
「そうだけど!」
俺はデスに念話を飛ばした。
『今日から初心者狩り禁止。Lv差10以上の相手には手を出すな』
『承知しました。我が王』
すると目の前に通知が出た。
《統治行動を確認》
《称号【魔王領の法制定者】を取得しました》
《領地機能が解放されました》
「おい、今度は国作れるようになったぞ」
「何を言ってるんだお前は」
アレスが頭を抱えた。
その日、俺たちはレイドを中止してもらう代わりに、暗黒大陸の入り口周辺をプレイヤーに開放することになった。
ただし魔王軍への無差別攻撃は禁止。
逆にこちらもプレイヤーへの無差別攻撃は禁止。
いつの間にか俺は、ゲーム開始一週間もたたずに国境協定を結んでいた。
ぼっちとは。




