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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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092 王都到着! 門番は強面コボルト、そしてお出迎えの「モフモフの王様」に王女陥落

 ミノス王国の第一王女リリスを乗せた馬車は、遮るもののない平坦な街道を、アレス王国の王都に向けてひた走る。


「あ! あっちにもモフモフ! こっちにもモフモフ! あふぅ……みんな、なんて可愛いの……っ!」


 王都に近付くにつれて、すれ違うコボルトの数は爆発的に多くなっていった。


 街道の巡回を筆頭に、他の馬車の護衛、街へ荷物を運ぶコボルト、広大な農地を一生懸命に耕すコボルト、牧場で器用に家畜を追いかけるコボルト……どこを見ても、右を向いても左を向いてもコボルトだらけである。


 当然、一緒に働いている「人間」も大勢視界に入っているはずなのだが、今のリリスの網膜にはコボルトの姿しか認識されていないようだった。


「この国は、本当にモフモフのパラダイス(天国)ね……!」


 窓枠を掴むリリスの両手は、興奮のあまり知らず知らずのうちにワキワキと怪しく動いている。


「確かに、あの奇妙な魔物が溢れかえっておりますな。しかも、人間と何ら変わらずに社会に溶け込み、生活しているように見えます」

 馬車の中で、リリスと爺やの観察混じりの会話は続く。


「ねぇ爺や、あの麗しいモフモフたちは、なんていう名前の魔物かしら? ミノス王国でも、ヒダ王国でも、あんな素晴らしい生き物は見たことがないわ」


「……耳にした噂から推測するに、恐らくなのですが『コボルト』、あるいはその上位亜種ではないかと」


「はあ!? いくら私でもコボルトくらい知っていますわよ。あんなのと一緒にするなんて、この子たちに失礼よ! ギルドの討伐依頼に出てくる、あのゴワゴワ、ベトベトの汚くて臭い狂犬どもとは、比べることすらおこがましいわ!」


「ですがリリス様。他国に存在しない新種の魔物が、この国にだけこれほど大量に湧き出るというのは考えにくい。そして、アレス王国の主であるレン国王が持つ固有スキルは『コボルトテイマー』……今まで歴史上、誰も持ったことのない未知のスキルです。コボルトという種族に特化した、何か恐ろしい秘密があるのかも知れません」


「成程……。確かに一理あるわね。コボルトテイマーかぁ……。ふふ、侮れないわ、レン国王」


 そうこうしているうちに、国使一行の馬車はついにアレス王国の重厚な王都の正門へと到着した。


 そこで槍を携えて立っていた門番は、筋骨隆々とした強面のボルドーマスティフ風コボルトと、ブラジリアンガードドッグ風コボルトの2匹。そして、彼らと肩を並べる人間の衛兵が1人。


「……あら、今度のは少し強面(コワモテ)のコボルトね。でもそこがまた渋くて素敵……」


「ミノス王国のリリス王女御一行様ですね。お待ちしておりました。歓迎いたします、こちらへどうぞ」


 人間の衛兵が礼儀正しく案内し、大きな鉄格子の門が開け放たれる。


 門の中へ一歩足を踏み入れると、そこには国使を歓迎するための出迎えの人間と、コボルトたちの整列部隊がピシッと並んで待機していた。


「ようこそ、アレス王国王都へおいでくださいました」


 お出迎えの代表として、凛とした、しかし温かみのある声で挨拶をしたのは、アンナ。そしてその隣に並ぶ、堂々たる体躯の秋田犬風コボルト・アインス(1)だった。


 アレス王国の幹部陣は、元冒険者、元傭兵、元解体士、コボルトといった面々ばかり。王族を正式に迎えるような「宮廷作法」に詳しい者が誰一人いなかったため、最も気品と教養があり、人望も厚い元薬師ギルド総ギルマスのアンナに白羽の矢が立ったのだ。


「――はふぅ……ッ! モ、モフモフゥゥウウウ!!」

 馬車が止まり、扉が開いた瞬間だった。


 挨拶もそこそこに、リリスはドレスを翻してアインスめがけて弾丸のように飛びついた。


「ワフ!?(な、何なんだワン、この人!?)」

 突然の奇襲に驚いたアインスは、常識的な対応として、大きな両前脚を優しくリリスの肩に当てて引き離そうとするが……。


「はふぅぅ……ッ! あなた、モフモフの『王様』ね!? 今まで街道で見た子たちの中で、一番密度が高くて、一番フワフワで可愛くて立派よ! これよ、これが私が求めていた至高の手触り……! くぅぅ、堪らないわぁ!」


 完全にホールドロックを決めて離さないリリス。大国ミノス王国の第一王女としての威厳はどこへやら、アインスの白い毛並みに幸せそうに頬擦りを繰り返し、両手のワキワキが光速の域に達している。


「ワフゥゥ〜(マスター……アンナさん……この不審な女を何とかして欲しいワン……)」


 流石のレジェンドコボルト・アインスも、蛇の王女の底なしの愛(執念)に圧倒され、困り果ててアンナに助けを求める。


「リリス様ーーーっ!! はしたない! 離れなさい!!」


 背後から怒髪天を突いた爺やが、死に物狂いでリリスの腰を引っ張り、力技でアインスから引き剥がした。


「まあぁ。うちのアイちゃんが世界一のモフモフだっていう意見には、私も大賛成だけど……流石に初対面でそれは困っちゃうわねぇ」


 アンナはクススと上品に笑いながら、困ったように頬に手を当てた。


「はぁ、はぁ……っ。申し訳ございません、我が国の王女がとんだご無礼を……!」

 息を切らした爺やが、深々と頭を下げてアンナに謝罪する。


「さて、それでは王城へご案内いたしますので、再び馬車に乗って移動しましょうか」


 アンナとアインスの先導を受け、再び馬車は王城へ向けて動き出す。


 爺やは「この先の城内での会談はどうなってしまうのか」と、これからの事を考えて激しい頭痛に襲われていた。


「はふぅ……、あそこにも、こっちの路地にも、極上のモフモフがいっぱい……。アレス王国、なんて恐ろしい国かしら……!」


 一方のリリスは、馬車の窓ガラスに再び顔を貼り付け、街行くコボルトたちの一挙手一投足に、怪しく、そして純粋に目を輝かせ続けるのであった。

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