表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/157

091 蛇の王女、国境で脳を焼かれる! 驚異のクリーン魔法と、モフモフを巡る爺やとの攻防

「――アレは何かしら?」

 ミノス王国の第一王女リリス率いる国使御一行は、アレス王国の厳重な国境検問を正式に通過し、王都へと続く街道を馬車で移動していた。


 豪奢な馬車の窓から、興味深そうに外の景色を眺めていたリリスが、不意にその美貌を綻ばせて声を上げる。


 彼女の視線の先にいたのは、街道を等間隔で平然と巡回しているアレス王国のコボルト騎士たち、5匹の精鋭パーティだった。


 バセットハウンド風。

 ブリタニースパニエル風。

 ジャックラッセルテリア風。

 アイリッシュセッター風。

 そしてブルテリア風のコボルトたちだ。


「何でしょう……? 形状から見ると、犬型の魔物のようですが……」

 同乗していた近侍の者が小窓から覗き込む。


「なんだか、ちっちゃくて、フワフワモフモフしていて……もの凄く可愛い魔物ね」


 リリスの目が、見る見るうちに怪しい光を帯びていく。蛇獣人としての鋭い本能が、その極上の毛並みを一瞬で見抜いたのだ。


「――あ! 前方からゴブリンの群れがッ!」

 突如、御者が緊迫した声を張り上げた。見れば、街道の脇の茂みから、コボルトたちを目がけて襲いかかる数十匹のゴブリンの姿があった。数にして倍以上。


「きゃあ! あの可愛い魔物たちが危ないわ! あなたたち、早く助けてあげて!」


 リリスの悲鳴のような叫びを聞き、馬車と並走していたミノス王国の精鋭護衛騎士たちが即座に馬を駆け出させた。――が、彼らが剣を抜くよりも遥かに速く、戦場は動いた。


 シュパッ!!


 コボルトたちは一切の動揺なく、腰の魔導マチェットを抜刀。


 流れるような身のこなしでゴブリンの懐へ潜り込むと、一太刀のもとに首を刎ね、心臓を正確に貫いていく。連携に寸分の無駄もなく、数十匹いたゴブリンの群れは、文字通り「一瞬」で沈黙した。


 そして戦闘終了の合図とともに流れるようにマチェットを納刀すると、今度は懐から解体用ナイフを取り出し、手慣れた手つきでゴブリンの耳を切り落とし、素材の解体を始めたのである。


「……瞬殺かよ」

「つ、強い……。なんだあの身のこなしは」

「しかも、もう解体を始めているぞ……」

「手慣れすぎている……」


 助けに入ろうとしたミノス王国の騎士たちが、馬を止めて唖然と立ち尽くす。魔物としての野生の強さではない。完全に「高度な訓練を受けた戦士」のそれだった。


「まあ! でも、返り血を浴びて、せっかくの綺麗なモフモフが汚れて……――え?」

 リリスが悲しそうに眉をひそめた、その直後だった。


 コボルトたちは解体を終えると、お互いに向けてパチンと指を鳴らした。


 シュアァァ……と淡い光が彼らを包み込んだかと思うと、こびりついていた不浄な返り血や泥汚れが一瞬で消滅し、元のフワフワ&モフモフな極上毛並みへと元通りになったのだ。


「……生活魔法の『クリーン』ですな。それもかなりの高精度だ」

 護衛の騎士長が呆然と呟く。


「まあ! 何ということでしょう! 魔物の身でありながら、あんなに綺麗好きで行儀の良い子たちがいるなんて! 信じられないわ……!」

 リリスの興奮は最高潮に達していた。


 馬車がコボルトたちの真横に近付くと、彼らはサッとナイフをしまい、街道の脇に信じられないほどの規律正しさで一列に整列した。


「ワン!(敬礼!)」

 バセットハウンド風のコボルトの凛々しい号令とともに、5匹が一斉に右手をこめかみに当てる。


 その小さな身体は微動だにせず、真っ直ぐな瞳で国使の馬車を見つめて見送る。その姿に敬意を表し、ミノス王国の護衛騎士たちも馬上から略式の敬礼を返した。


「……まごうことなき『騎士』だな」


「ええ。しかも、そこらの国の一流騎士団に匹敵する練度ですよ」


「魔物がここまでの規律を保つなど、実物を見てもまだ信じられん……」


 王女の護衛たちは、アレス王国の「底知れなさ」に戦慄を覚えていたが、当の王女様は全く別のベクトルで限界を迎えていた。


「ちょっと御者、馬車を止めなさい! 素晴らしい防衛への『お礼』をするわ!」

 リリスが身を乗り出して馬車を止めようとする。


「リリス様、お止めなさい。我らは先を急ぐ公式の使節団なのです。止まらずに進みなさい!」


 すかさず、ミノス王国から同行しているお目付役の爺やがリリスの服を引っ張って制止し、御者に鞭を当てさせる。


「急いでいるからこそ尚更、一国の王女としてお礼はするべきですわ! お礼に、あのフワフワな身体を思いっきりモフモフと――」


 リリスはドレスの裾を翻して馬車から飛び降りようとするが、爺やの必死のタックルによって阻止される。


「リリス様!! 『モフモフ』はお礼とは言いません!!」


「では、せめて私の腕の中に抱っこして、あごの下を撫で撫でしてあげる優しさを――」


「リリス様!! それもお礼にはなりません!!」


「じゃあ、じゃあ……! ぎゅっと、一度だけ胸にぎゅっと抱きしめるだけでもおおお!!」


「リ・リ・ス・さ・ま!!」


「は、はふぅぅ……。ああ、モフモフがぁ、尊いモフモフが離れて行くわぁ……」


 無情にも馬車は加速し、コボルトたちは遠ざかっていく。リリスは馬車の後ろ窓にガラスが割れんばかりに顔を貼り付け、未練がましく彼らを見つめ続けていた。


「……ハァ。リリス様、落ち着きなさい。彼らがアレス王国の正規の騎士であるならば、これから向かう王都の城にも、きっと同じ種族の騎士たちが大勢いるはずです」

 爺やが疲弊した様子で溜め息をつきながら宥める。


「そ、そうね……! ああ、楽しみですわ。王都には一体、どんな極上のモフモフたちが私を待っているのかしら……!」


 コジマ公爵を打倒した謎の軍事国家への警戒心は、国境を越えてわずか数分で、可愛いコボルトたちの圧倒的魅力の前に木っ端微塵に吹き飛んでいた。


 妖艶な蛇の王女は、まだ見ぬ王都の「もふもふパラダイス」に胸を躍らせながら、アレス王国の深部へと進んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ