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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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087 Aランク暗殺者、即オチ亡命! 懐かしの頑固オヤジと、もふもふ包囲網の恐怖

「お願いプリシラさん! 私、この国に亡命したい! ギルドのバカどもにこんな可愛い子たちを傷つけさせたくないの!」


 ケーキ屋さんでポメちゃんへの愛(と欲望)を爆発させ、半泣きで懇願するロジーナ。そのあまりの必死さと熱意に根負けしたプリシラは、ついに彼女を内密に王城へと連れてくることにした。


 ――ガシャガシャ、ガシャガシャ。


 城の廊下に、無骨な義足の足音が響く。前方から歩いてきたのは、白髪交じりの大柄な男だった。


 男の両脇には、威風堂々とした土佐犬風のコボルト・エル(11)と、強面のイングリッシュブルドッグ風のコボルト・ブルが、近衛の如く鋭い眼光で控えている。


「……あァ? ――ロジーナ! 何でお前がこんなところにいるんだ!?」


「えっ……ロバートさん!? 貴方もここで働いているの!?」


 驚きに目を見張るロジーナ。目の前にいたのは、王国屈指の元Aランク冒険者にして、かつて前線で名を馳せた伝説の戦士ロバートだった。当然、現役のAランク冒険者であるロジーナとは旧知の仲である。


「お、おう。俺は何故かこの国の『将軍』に祭り上げられちまってよ。……それよりお前、何をしにここへ来た。今は国境が封鎖されているはずだぞ」


「ロバートさん! ちょうど良かったわ、貴方からもお願いして頂戴! 私もこの国で働きたいの! そして、この可愛い子たちを朝から晩まで愛で尽くしたいのよ!」


「可愛い子ぉ……?」

 ロバートは怪訝そうに眉をひそめ、ロジーナを完全に訝しげな目で見る。


「だって、ロバートさんだって、そんなブサ可愛い子たちを二人も連れてるじゃない! エルちゃんに、ブルちゃん? あ義足の音に合わせて歩く姿なんて最高に健気で羨ましいわ!」


「ああ、コイツらのことか。エルとブルは俺の直属の護衛だ」


「わんわん(そうだワン。師匠の護衛だワン)」

「わんわん(……師匠、この女、目がめちゃくちゃ恐いワン。獲物を見る目だワン)」


 ブルがエルの影に隠れながら、ロジーナのギラギラした視線に怯える。


「ねぇねぇ、お願い! 良いでしょ、ロバートさん!」


「おいおい、ロジーナ。お前、自分が言ってることの意味が分かっているのか? ギルドのAランクという最高の地位を捨てて、国に仕えるんだぞ」


「分かっているわよ! 私はこの子たちを守るわ! 私が私の手で、絶対に守らなきゃいけないのよ!」


「はぁ……。守るって言ってもなぁ、コイツらもお前より強いくらいだぞ?」


「わんわん(めちゃくちゃ強いワン!)」

「わんわん(そう簡単に負けないワン!)」


 エルとブルがぷんぷんと胸を張るが、ロジーナの耳には届かない。


「お願いよぉ……」

 ロジーナは両手を合わせ、上目遣いでロバートを見つめて必死に縋り付く。


「ふむ……。まぁ、お前の腕なら国王レンに紹介してやっても良いんだが……。ただなぁ、最近『何者かが国境の網を抜けて侵入してきた』って不穏な話があって、城内がちょっとピリついてるんだよな」


 ギクッ!!!


 ロジーナの心臓が激しく跳ねた。冷や汗が背中を伝う。


 ――その時だった。


「わんわん!(見つけたワン!)」

「ワンワン!(コイツだワン! 侵入者はこの女ワン!)」


 廊下の角から、シュバッと二匹のコボルトが飛び出してきた。一匹はゴールデンレトリーバー風の第四騎士団長・ツヴァイ。そしてもう一匹は――森でロジーナに気絶させられた、あのビーグル犬種のコボルトだった。


 その後ろから、息を切らせたエリーが駆けてくる。

「ツヴァイ、速いってば……。あ! ――ロジーナさん!? 嘘、侵入者って、ロジーナさんだったの!?」


「わおおおおおん!!(侵入者だああ! 出会い頭に気絶させられたワン! みんな集まるワン!)」


 ビーグルのコボルトが上を向いて大音量で遠吠えをあげる。


「な、何の騒ぎ!? ああっ、あの時のビーグルちゃん!」

 ロジーナは「終わった」と顔を真っ青にした。


 遠吠えに応じて、廊下の奥から「わんわん!」「ガウガウ!」と、屈強なコボルト騎士たちがワラワラと武器を手に集まってくる。万事休す。


「ちょっと、何の騒ぎよォ! ――あら? ロジーナじゃないの」


 密集するコボルトたちの間を割って、凛とした声と共にヘレナが現れた。


「ヘ、ヘレナぁぁーーッ!! 助けてぇ! 私、この国に害を成す気なんて本当に一ミリもないのよぉぉ!」


 ロジーナは涙目でヘレナに猛ダッシュし、その服の裾にガシッと縋り付いた。元テイマーズギルドのサブマスターだったヘレナも、王都の有名冒険者であるロジーナのことはよく知っていたのだ。


「ロジーナ、一体どうしたのよ……。ちょっと、みんな落ち着いて話を聞きましょうか。――コボルトたち、一旦解散。持ち場に戻って」


「わんわん(ヘレナ様の指示なら、大人しく引くワン)」

「わんわん(パトロールに戻るワン)」

「わんわん(またあとでなワン)」


 ヘレナの冷静な一言で、あれだけ殺気立っていたコボルトたちが、ゾロゾロと賢く、そして大変愛らしく尻尾を振りながら持ち場へと戻っていく。


 その規律正しさに、ロジーナは恐怖しつつも再び目を輝かせた。


「じゃあ、詳しい事情は応接室で聞こうか?」

 ヘレナがロジーナを促す。


「顔見知りだからな、俺も話を聞こう」

 ロバートが義足を鳴らし、エルとブルを連れて歩き出す。


「私も行くわ。ツヴァイ、おいで」

 エリーもツヴァイを伴い、


「私もついて行きますわ。ポメちゃん、怖くなかった?」

 プリシラもポメちゃんを抱きしめながら後に続いた。


 その後、応接室にて。


 ロジーナは、ギルド総本部から「レン暗殺」の特級指名依頼を受けて潜入したこと、しかし森でコボルトに遭遇した瞬間にその愛らしさに脳を破壊され、任務を完全に放棄して亡命を決意したことを、涙ながらに包み隠さず全て正直に白状した。


 ヘレナは呆れつつも彼女の真摯な(?)態度を認め、国王レンに相談。


 結果、レンはロジーナの亡命を快く受け入れることにしたのだった。


 何はともあれ、一国を代表する最高戦力である「Aランク冒険者」が自ら戦力として転がり込んできたのだ。


 今後の戦力増強や防衛、さらにはギルドの裏事情を知る人材の確保という意味でも、レンの国は計り知れない大きなメリットを享受することとなった。


 しかし――この「Aランク冒険者の亡命・寝返り」という前代未聞の事件は、冒険者ギルド総本部とアレス王国の間に、修復不可能な決定的な亀裂を生み出し、両者の対決姿勢をより一層明確にしていくのであった……。


(既に対決姿勢は明確だよ。何を今更もったいぶって言ってるのさ)


 ――ナレーションに突っ込むなよ、フェルダー。

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