表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/157

084 驚異の「人件費ゼロ」もふもふ経済圏と、常識破りの常備騎士団爆誕!

「しかし、まさかお前らが本当にナンバーズに昇進するとはなぁ……。嬉しい半分、大工の現場からは卒業かと思うと、少し寂しいぜ」


 領都の大工ギルドの元ギルドマスターであり、現在はアレス王国建築・土木部門の最高顧問となったバークが、感慨深そうに腕を組んだ。


 伝説の建築家バークの愛弟子であるコボルトは数多い。アイリッシュウルフハウンドのゼクス、グレートデンのズィベンの二大巨頭を筆頭に、ニューファンドランド、ナポリタン・マスティフ、グレート・ピレニーズ、レオンベルガー、バーニーズマウンテンドッグと、屈強な超大型犬種コボルトがズラリと揃っている。


 その中でも今回、突出した熱意おねだりで見事に名前を勝ち取った、セントバーナードのツヴェルフ(12)と、ジャーマンシェパードのドライツェン(13)が、バークの言葉に「わんわん!」と激しく尻尾を振った。


「わんわん!(名前を貰って最高にハッピーだワン!)」


「わんわん!(でも大工の魂は忘れてないワン、いつでもハンマー握るワン!)」


「いいじゃないの、お父さん。若いコボルトたちがどんどん優秀になっていくんだから。私たちは後ろに控えて、次の世代をたくさん育てましょうよ」


 そう言って優しく微笑むのは、元薬師ギルドの総ギルドマスターであり、バークの妻であるアンナだ。


 犬好きが高じて、初期の頃からコボルトたちの驚異的な実力と従順さに目を付けていた、心優しい初老の女性である。彼女の最初の一番弟子は秋田犬コボルトのアインス(1)なのだが、今はアインスの子供にあたる、最高にキュートな秋田犬コボルトの赤ちゃん5匹を膝の上で同時にモフり、完全なる天国ユートピアを堪能していた。


「若いコボルトと言えば……陛下、彼らは本当に増える一方ですので、領内の農場と牧場の規模も休むことなく拡大し続けているのですよ」


 眼鏡を押し上げながら報告するのは、元辺境街の商会から独立し、今やアレス王国の国家財政を一身に背負う大商会の会頭へと躍り出たイアンだ。


「さらに、コボルトたちに本格的にお酒の醸造も仕込み始めさせたのよ。コボルトってば、一度教えれば人間以上に正確に、文句ひとつ言わずに働いてくれちゃうんですもの。人件費ゼロ、原材料も自給自足の格安体制だから、商会はお金が儲かる一方で笑いが止まらないわ。えへへ……」


 そう悪魔的な笑みを浮かべるのは、イアンの元使用人であり、現在は彼の右腕として凄腕の交渉・管理能力を発揮しているカミラ。


 彼女のお気に入りはシベリアンハスキーのフンフ(5)なのだが、フンフは第二騎士団の副官として忙しいため、滅多に会えない。だが、そんな寂しさを吹き飛ばすように、フンフの子供であるシベリアンハスキーの仔犬コボルト5匹を両腕に抱え、顔を埋めてスーハースーハーと「コボルト成分」を限界まで吸引していた。全く問題ない、むしろ大満足である。


「イアン、それにカミラ。二人には本当にいつも頑張ってもらって助かっているよ。言うまでもなく、安定した食料供給と経済の安定こそがこの国の生命線だからね。これからコボルトはさらに増えていく予定だから、更なる大増産体制の構築を頼むよ」


 若干10歳にして一国の王となったレンが、玉座から二人に信頼の眼差しを向けて告げる。


「――ということは、いよいよヒダ王国への本格的な進出、および進軍ですか?」


 元傭兵団長で、現在はレンの側近兼戦闘アドバイザーとなったラバンが、ゴクリと唾を飲み込んで尋ねた。


「コボルトたちの軍勢はもとより、降伏させて再編成した人間の『アレス王国騎士団』のほうも、だいぶ頭数が揃ってきていますからね」


 そう言って不敵に笑うのは、元傭兵団員からその天性の弁舌を買われ、今や一国の外交を一手に担うカルマンだ。


「コボルトの物量だけでは、人間の街を統治する上でどうしても限界(言葉の壁など)があるからね。人間の騎士団のほうの練度はどうだい、マディソン?」


 レンが視線を向けると、元大都市の騎士団長であり、現在はアレス王国の人間の常備騎士団を束ねるマディソンが、背筋を伸ばして応じた。


「――驚くほど、仕上がっていますよ。まさか、旧コジマ公爵領にいた常備騎士はもとより、各都市の衛兵、傭兵、果ては冒険者に至るまで、全員を国お抱えの『専属常備騎士』として雇用するなど、通常の国家では絶対に考えられませんからな」


「ええ。何しろ、食うに困らず、毎日訓練をして周囲を巡回することだけが彼らの『仕事』であり、それで十分な給金が出るのですから。必然的に全体の練度は跳ね上がっています」


 元大都市の衛兵隊長から、同じく騎士団長へと就任したネイサンが続けて頷く。


 そう、この世界における「常備兵」の数は、どの国も極端に少ない。なぜなら、兵士を長期間にわたって高い報酬で雇い続けるだけの資金が、国家の財政を圧迫するからだ。そのため、大軍を揃える際は農民を無理やり徴兵するか、金で動く傭兵を雇うのが常識だった。


 しかし、農民は戦いを知らぬ素人であり、傭兵は忠誠心が皆無で、負けそうになれば即座に逃げ、敵がより高い報酬を提示すれば平気で寝返る。


 そんな中、コボルトたちの「人件費ゼロ経済圏」が生み出す莫大な富によって、全員がプロフェッショナルの「最強の常備軍」を余裕で養っているアレス王国は、大陸の常識から完全に逸脱した、あまりにも危険で強大な軍事国家と化していた。


「まあ、いざとなったら私も大剣を持って戦線に立ちますよ。ねっ、プリシラ?」


「そうねぇ。まぁ、頼もしいコボルトちゃんたちと人間の騎士団があれだけいれば、私たちの出番なんて早々来ないとは思うけどね」


 華やかな会話を交わすのは、元騎士団副団長のオリビアと、元大都市の冒険者だったプリシラだ。


 この二人、今ではレンの近臣として仕えているのだが……ぶっちゃけた話、彼女たちがアレス王国に忠誠を誓った最大の理由は、国家の理念などではない。


 レンの身の回りの世話をしているメイドコボルト――トイプードル風、チワワ風、ポメラニアン風の、超絶可愛い小型もふもふコボルトたちに一目惚れしたからである。


 現在も、お茶を運んできたトイプードル魔導メイドのふわふわな頭を、会議の最中にもかかわらず二人して熱心に撫で回していた。


「よし。全員の準備と、騎士団の練度が整っているなら話は早い」


 レンは立ち上がり、背後の世界地図に視線を走らせた。


「ヒダ王国が『友好条約を結びたい』なんて甘いことを言って、誰を交渉役に派遣してくるか……まずはじっくり見極めさせてもらおうか」


 もふもふの軍勢と、規格外の財政力。


 ヒダ王国がひた隠しにしてきた「過去のツケ」が、今、アレス王国という巨大な波となって押し寄せようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ