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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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064 領主館、完全陥落! 愚鈍な野心の終着駅と、最恐10歳王子の「次なる一手」

「ちょっと、みんな速すぎだってば!」

 騎竜ドラッヘの背の上で、レンは思わず苦笑いしながら叫んだ。


 標的である領主の館を目指して爆走するレンの前を、ノインをはじめとするグレーハウンドやサルーキ、ダルメシアンといった足自慢のコボルト騎士たちが、まるでドッグレースさながらの猛スピードで次々と追い抜いていく。


 主人のために一番乗りを果たしたいもふもふたちの熱意は、すでにドラッヘの脚力すら凌駕していた。


 やがて、街の中央にそびえ立つ、堅牢な石造りの領主の館が見えてきた。


 当然ながら街の異変を察知した館の正門は固く閉ざされており、防衛用の重厚な鉄格子の門の裏では、数十人の精鋭門番たちが青い顔で槍を構えて警戒している。


「フィア! 門を跡形もなく吹き飛ばせ! ツヴァイ! 門番たちを無力化しろ!」


 レンはドラッヘの手綱を握り直しながら、後方から爆走して追いついてきたフラットコーテッドレトリバー風のフィアと、ゴールデンレトリーバー風のツヴァイに鋭く指示を出した。


「ワォン!(了解だワン!)」

「ワンワン!(任せてワン!)」


 二匹は進撃の勢いのまま見事なドリフトで急停止すると、フィアは愛用の魔導杖を、ツヴァイは強弓を同時に構えた。


 フィアの杖の先から放たれた極大の【炎弾ファイアボール】が着弾し、凄まじい轟音と共に頑丈な鉄門を木端微塵に吹き飛ばす。


 それとほぼ同時、爆炎の煙を縫うようにしてツヴァイが放った数条の矢が空を裂き、動揺した門番たちの額を寸分の狂いもなく正確に貫いていった。


 「突撃ィ!」

 粉砕され、火の手が上がる門の中へと、レン率いるコボルト軍団は一切の速度を落とすことなく、怒涛の濁流となって突き進む。


 役目を終えたフィアとツヴァイも、すぐさまマチェットを引き抜きながらレンたちの後を追った。


   ◇◇


「な、何事だ!? 今の地響きと凄まじい爆音は……!」


 正面門が吹き飛んだ轟音は、館の最上階にある領主の執務室まで容易に届いていた。豪華な椅子から跳ね起きた領主が、狼狽しながら傍らの執事に尋ねる。


「何事でしょう……。不穏な音ですが、すぐに私が見て参りま――」


 常に冷静沈着、落ち着いた声で領主に応えようとした執事の言葉が、唐突に途切れた。


ドガァァァーーン!!!


「お、やっぱりここにいたか。執務室が最上階で分かりやすくて助かったよ」


 厚みのある最高級の木製扉を木っ端微塵に破壊し、ドラッヘに乗ったレンが堂々と室内に侵入してきたのだ。


「レ、レン……様!? 一体何事ですか! いくら王子とはいえ、騎竜で我が館へ不法侵入するなど、無礼にもほどが――」


 領主は必死に心臓の鼓動を抑え、無理やり落ち着いた威厳ある声を絞り出して場を収めようとした。


 だが、レンの背後から、血の匂いを漂わせた漆黒のフルプレートアーマー姿のコボルト騎士たちが、マチェットをギラつかせながらゾロゾロと隙間なく室内に押し寄せてくるのを見て、ついに声が完全に死んだ。


「おいおい、『無礼』だって? 何を言っているんだ。アキツナをそそのかして、500もの兵を我が領地に差し向けて『宣戦布告』してきたのはお前だろうに。随分と悠長なことだね」


 レンはドラッヘの上から、冷え切った瞳で領主を見下ろす。


「ま、まさか……アキツナ様はどうされた……!?」


「当然、俺の領地に攻め入ってきた不届き者だ。その首はすでに落として、あっちの門の前に転がっているよ」


「は……!? 馬鹿な、500の我が街の精鋭兵が一緒に向かったはずだぞ! あそこがそんな短時間で落ちるわけが――」


「ああ、その兵たちも『全員』殺したよ。可哀想にね。お前が身の程知らずなゴミみたいな野心を持ったせいで、さっきの門番たちも含めて、お前の部下は全員無駄死にすることになったんだ。……全部、お前のせいだよ?」


「は? 全て……? 嘘だ、そんな、たかが数時間の間に我が軍が全滅など……!」


 領主はガタガタと歯を鳴らし、目の前の10歳の少年が放つ、怪物じみたプレッシャーに圧倒されて腰を抜かした。


「さて、今際の際に尋ねたいことは他に何かあるかい? 聞いてあげるよ」


「お、王家からの『戦時強制供出』の命令には応じないというのですか!? あなたは、実の父親である国王陛下と、我が王家に反旗を翻すつもりですか!?」


 領主は最悪の窮地を脱するため、どうにか対等な交渉のカードを探ろうと、必死に声を張り上げて質問する。


「ああ、王家ね。……大体、国王の正式な書状サインすら持っていないアキツナの戯言を真に受けて、大切な領地や財産を差し出す馬鹿がどこにいるんだい? お前、あいつが書状を持っているところを実際に見たのか? あのマヌケ、何も持たずにただ門の前で喚いてたぞ」


「た、確かに書状は確認しておりませんが……しかし、アキツナ様が直々に動かれたのです、王家からの命令であることは事実に違いありません!」


「ははは! だったら、必要とあらば王家とも戦うしかないね」


 レンは無邪気ですらある笑みを浮かべ、とんでもない国家転覆発言をあっさりと口にした。


「大丈夫。うちの成長速度なら、来年になれば王家ともそこそこ対等に戦えるし、再来年には王家相手だろうと完勝できると思うぞ?」


「な、何を根拠にそんな狂ったことを……っ!」


「――もう、良いよね? 随分と優しく答えてやったぞ」

 レンの笑顔が、一瞬で絶対零度の冷徹な表情へと切り替わる。


「ドライ、殺れ」

「ガウガウ(了解だワン)」


 命じられたドライの身体がブレた、と思った瞬間には、手にした黒く禍々しいゴブリンジェネラルの剣が真横に一閃されていた。


 次の瞬間、領主の首がぽーんと宙を舞い、高級な絨毯を赤く染め上げる。ドライは慣れた手付きでジェネラルの剣に「クリーン」の生活魔法をかけ、一瞬で血糊を消し去ると、シャキィンと静かに鞘へと納めた。


 レンは返り血一つ浴びていないドラッヘの上から、恐怖で床にへたり込み、失禁しかけている執事へと視線を移した。


「さて、残されたお前に聞きたい。……お前は、俺に魂から忠誠を誓えるかい? あまり人間を多く殺しすぎると、今後のこの街の領地運営に支障をきたすからね。それとも……前の主人を追って、ここで殉死するかい?」


 レンの瞳の奥にある、底知れない支配者の「格」に当てられ、執事は喉を鳴らした。抵抗など1ミリも意味をなさない。


「ち、忠誠を……、我が身と魂を懸けて、レ、レン様へと捧げることを、ち、誓います……!」


「よろしい」

 レンは満足そうに頷くと、淡々と、しかし容赦のない命令を下した。


「良し、それならすぐにこの屋敷の生き残りの者を全員広場に集めろ。それから――後々の憂いを断つために、この前領主の血縁者は『子供も含めて全て』一人残らず処刑する。今すぐその居場所を教えろ」


「は、はい……っ! 承知いたしました、直ちにご案内いたします……!」


 執事は深々と頭を床に擦り付けた。こうして、隣領の愚かな野心によって始まった騒動は、わずか半日にして「辺境の街の完全陥落」という、最悪にして最高の圧倒的結末を迎えるのだった。

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