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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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061 愚王子の盛大な自爆! 勘違いの進軍と、王家を継ぐ(レベル爆上がり)弟の絶対冷徹

「わんわんわんわん!(鎧を着た沢山の人間が、泥の臭いをさせて村に向かって来ますワン!)」


「わんわんわん(数は大凡500! 荷馬車と、派手な竜車が1台混じっていますワン!)」


 周辺の森で狩りやパトロールをしていたコボルト騎士たちから、次々と念話や斥候報告が飛び込んでくる。そのため、レンは隣の街から武装した兵たちがこちらへ進軍してきていることを、彼らが到着する数時間も前から完璧に把握していた。


「数は500か。完全に武装してるな」


「この開拓村に攻め込んで来るつもりなのかしら?」

 ヘレナが面白そうに、新しく新調された綺麗な防備用の革鎧の紐を締めながら尋ねる。


「これだけの数だからね。ただの観光旅行ってわけじゃないだろう。初めから『敵襲』として対応した方が良さそうだ」


「それにしても急に来たわね。なんでかしら? 私たち、隣の街に賠償金まで払わせて、それ以降は何も関わっていないのに。理由が全く想像できないわ」


「なんでだろうね。俺もさっぱり分からん。……まぁ、噂を聞きつけた誰かが、急発展しているこの村の富を奪い取ろうとでも思っているのだろう」


「ふん、500人程度じゃ、今のうちの防壁の傷一つ付けられないけどね。コボルト騎士たちだけでもお釣りが来るわ」


「全くだ。一応、みんなには配置につくだけついてもらおうか」


 レンとヘレナは、くすくすと笑いながらのんびり会話していた。1年前ならいざ知らず、一騎当千のコボルト騎士が500匹以上、総勢1,500匹の巨大もふもふ要塞となった今の開拓村にとって、攻城兵器すら持たない辺境兵500人など、羽虫が飛んできた程度の認識でしかなかった。


   ◇◇


 やがて、辺境の開拓村をぐるりと囲む壁と、見上げるほど巨大な鉄壁の正門前に、隣街の兵たちがゾロゾロと整列した。


 その中央、豪華な竜車からよろよろと降りてきた第二王子(元)アキツナが、お供の女を車内に残し、ギラついた目で門を見上げて前に歩み出る。


「開門せよおおおおお!!!」

 アキツナが顎で指図すると、傍らにいた大声自慢の兵士が喉をちぎらんばかりに叫んだ。


「国王の名代であああある! アキツナ王子が直々に参られたあああ! 命に従い、サッサと開門せよおおお!」


 しばらくの沈黙の後、重厚な石造りの防壁の上に、すっと数人の人影が現れた。


 開拓村の正当なる領主であるレンと、テイマーズギルド・サブマスターのヘレナ。そして、その背後にはマチェットを不気味に煌めかせ、直立不動で控えるドライやツヴァイたち「ナンバーズ」の姿があった。


「てめぇ……! レン!! サッサと開門して、この俺様を中に入れろ! 国王の名代をいつまで待たせる気だ、無礼者が!」


 壁の上にレンの姿を認めるや否や、アキツナは顔を真っ赤に猛らせ、憎しみと嫉妬の籠もった目で睨みつけながら吠えた。


 「――アキツナ。一体なんの用だ、兵なんか連れて」

 レンは防壁の上から静かに兄を見下ろした。


(……おかしな。久しぶりにアキツナの姿を見たけれど……こいつ、こんなにも小さくて、弱々しい男だったか?)

 レンは実の兄に対して、そんな拍子抜けしたような印象を抱いた。


 それもそのはず、本人は自覚がないものの、300匹以上のコボルトから毎日24時間不労所得として経験値を吸い込み続け、毎日レベルアップしているレンのステータスは、今やSSSランクの化け物一歩手前。ただの凡人であるアキツナとは、生物としての「格(存在強度)」が雲泥の差に達していたのだ。


 逆にアキツナは、上空から自分を冷徹に見下ろしてくる、妙に落ち着き払った圧倒的な威圧感を放つレンの姿に、一瞬だけ背筋が凍るような焦りを覚えた。


 だが、プライドだけは高い無能な脳が、その恐怖を即座に激しい怒りへと変換する。


(ちっ、なんだあの目は……! 宮廷で毎日俺たちに怯えてイジメられていたハズレスキルの癖に、田舎で少し上手くいったからって、妙に調子に乗りやがって……!)


「国王の名代と言ったのが聞こえなかったのか! このマヌケが! 近々始まる戦争のための、王命による『戦時強制供出』だ! お前がこの村に大量に隠し持っている回復薬を、すべて国のために供出させるために来てやったんだ。ありがたく思いながら、サッサと門を開けろ! これ以上拒むなら、王家への明確な反逆と見なして、力ずくでお前を処刑しても良いんだぞ!」


 アキツナがふんぞり返って言い放った脅し文句に対し、レンは眉一つ動かさず、至って冷静に対処する。


「強制供出ねぇ……。分かった、それなら先ず、国王の署名と捺印がある正式な『強制供出の書状(命令書)』をそこから見せて貰おうか。書状を確認し、内容が正当であればこちらも対応を考える。悪いが、500もの武装した兵を、なんの書面確認もなしに門の中に入れるわけにはいかないからね。領主としての当然の義務だ」


「し、書状ぉぉぉ!? そんなの必要ねぇんだよ!!」


 図星を突かれたアキツナが、一瞬で顔を般若のように歪めて絶叫した。もちろん、そんな正式な書状など国王から貰っているはずがない。


 口頭で「行ってこい」と言われただけのスタンドプレーだからだ。


「この俺様が! 直々にここに足を運んでやってるのが何よりの証拠だろうが! てめえ、実の兄であり、この俺様にそんな生意気な口を聞いて、ただで済むと思ってんのか!? あ゛ぁ!?」


「ただで済むも何も……」


 レンはふぅ、と心底呆れたようにため息をつくと、冷ややかな正論を告げた。


「アキツナ、お前は不敬を働いてすでに『廃嫡された元王子』だろう? 対して俺は、今も籍を剥奪されていない、正当な王位継承権を持つ王子であり、国王からこの土地を正式に安堵された『領主』だ。……法律的にも身分的にも、今や俺の方が圧倒的に上の立場だということくらい、分かっていないのか?」


「あ゛ぁあああ!?!? 良くも……良くも俺様に向かって、そんなクソ生意気な口の叩き方をしやがって、なめてんのかお前ぇええ!!」


 一番触れられたくなかった「廃嫡」という現実を突きつけられ、アキツナの脳の血管がブチブチと音を立てて千切れた。我を忘れた彼は、周囲の兵士たちが止める間もなく、己の醜い本音を大声で喚き散らし始めた。


「ただじゃおかねえぞ! もうてめえは王家に反逆確定だ!! 供出なんかじゃ生ぬるい、この村と富はすべて俺の物にする! 門を開けたら、てめえが『殺して下さい』って泣き叫んで許しを請うまで、その生意気な顔をボコボコにぶん殴ってやるからな! それから、そこにいる薄汚いコボルトどもにも全員奴隷の首輪を付けて、死ぬまで畑でこき使ってやる!! だからサッサと門を開けやがれえええええ!!!」


 防壁の上のヘレナが、「あーあ、全部言っちゃったわね」と哀れみの目を向ける。


 レンは静かに目を細め、その冷徹な眼光をアキツナへと向けた。


「――なるほど。回復薬の供出はただの建前で、本当の目的は『俺の殺害』と『村の強奪』か。……完全に理解したよ、アキツナ」


 その瞬間、正門の向こう側から、地響きのような不気味な「唸り声」が響き始めたのだった。

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